製造業向け派遣・請負など総合人材サービスを中心とするNISSOホールディングス(9332・P)は、昨年10月に持ち株会社に移行して1年が経過した。企業の人材ニーズに対するこれまでの取り組みと今後の成長戦略について、経済アナリストの馬渕磨理子氏が清水竜一代表取締役社長に聞いた。
――ホールディングス化からの1年を振り返っていかがでしょうか。
「この1年はお客さまのニーズの変化を先取りするために、M&Aや資本業務提携で新たにメンバーに加わっていただいた。今後も打つべき施策はたくさんある」
「従来はお客さまに対して人材派遣や業務請負を中心に行ってきたが、今後はお客さまが自社で雇っている社員の教育や人事マネジメントに着目していく。メーカーも人手不足で外国人を雇用しなければという時に、工場の従来の人事体制だけでは対応できない。採用から教育訓練、マネジメントのお手伝いを関連会社と一緒に展開していく」
――熊本の研修施設の進捗を教えてほしい。
「熊本にはもともと半導体の装置エンジニアを育成する施設があった。そこに台湾積体電路製造(TSMC)の進出や、既存メーカーの工場増設により、半導体製造の人材がさらに必要となったため、従来の施設を増設して2倍のキャパシティーを持つこととなった。これにより年間300人以上の人材を育成できるようになったがまだまだ足りない。即戦力の人材を育成できるためお客さまからは高い評価をいただいている」
――関西にはバッテリーに特化した研修センターを開設した。
「日本にはハイブリッド車で使うバッテリーの工場は多いが、EV(電気自動車)向けの工場は一部にしかない。2026年以降に全国各地で工場が立ち上がるので、そこに特化した人材を育成するための施設だ」
「バッテリーがどんどん進化している中では自動車の電動化のみならず、例えば再生可能エネルギーを貯めるための定置型蓄電池とか、様々な用途で活用することが可能であり、電力会社などの関心が高まっている」
――社員研修を代行する「NISSO HR Development Service」を立ち上げた狙いは?
「製造業の現場で自社の教育に手が回らないという課題に対し、われわれが教育研修をお手伝いするサービスだ。現時点で社名を開示できる企業は10社ほどで、開示の許可をいただいていない会社も含めると20社くらいのメーカーと取り組みを始めた。お客さまのニーズについていくため、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)ゴーグルなど新テクノロジーを使って、研修施設に来なくても受講できる仕組みも開発している」
――中計では27年度に売上高1,500億円(今期計画比1.4倍)、営業利益75億円(同97%増)、営業利益率5%以上の目標を掲げた。ハードルが高いようにも見えるが。
「産業界のニーズの先取りや必要な人材の育成によって、圧倒的に同業他社と差別化できるし、同時にわれわれが攻めていきたい領域のシェア拡大が可能だ。時間を速める必要があるので、M&Aなどによってパートナーを増やしていく」
「人材サービスはスキルに応じた適正な単価設定と、働く方々のスキルを上げていくのと同時に、オペレーターから専門職へとラインアップを変えていくことが重要。付加価値が高まることで受注単価も上昇し、結果的に利益率を引き上げることが可能になる。例えば、自動車のEV化や自動運転の技術で必要な人材はどんどん変化する。製造ラインが人手からロボットに代替する過程ではメンテナンス要員が必要になる。ニーズの高い人材を育成することによって、利益率は5%以上に伸ばせる」
――「働きものを、幸せものに」というスローガンがとても素敵です。最後に投資家へのメッセージをお願いしたい。
「スローガンは働く方々に寄り添って仕事を進めるわれわれのスタンスにぴったり。今までいろいろ投資を進めたものの、リターンが顕在化せずご心配をおかけした。ただし、コロナ禍を終えて産業界が新しいテクノロジーを活用した取り組みを進める中では、われわれの価値を認めていただけるし、何より労働市場においてNISSOで働きたいと思っていただけるブランドにしていきたい」
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