ストック売り上げ8割、「面」拡大でさらに成長
後退局面でも「実はニーズあり」
2021年12月にIPO(新規上場)したTrue Data(4416)は初の決算を2月14日に発表。第3四半期では赤字が続くものの、売上高に占めるストック売り上げが前期末の74・3%から80・8%にまで上昇するなど通期黒字転換に向けての良好な進捗が確認された。そんな同社をおさらいするべく、22年1月16日に実施した米倉裕之代表取締役社長と経済アナリスト馬渕磨理子氏との対談を抜粋して紹介する。
馬渕:御社の技術で小売業界はどのように変わりますか?
米倉:例えば小売業者が使うPOSデータは、実は、データのフォーマットが統一しきれていません。この状況を改善して日本全体を可視化する、そんなツールを当社ではいくつかご用意しています。
馬渕:「炭酸」「炭酸飲料」と同一商品であっても表記がバラバラ、それぞれにデータが存在してしまっているという話は聞いたことがあります。せっかくレシートを集めても正確なデータとは言えないのだ、と。
米倉:当社が提供している「ショッピングスキャン」は、小売業向けの「ID-POSデータ※」の分析ツールになります。小売業が自社の購買データを把握することで、精緻(せいち)なマーケティング戦略を練ることができます。一方、自社だけでなく市場全体の売れ筋商品といったデータを把握することができるのが「イーグルアイ」です。
馬渕:どちらもストック型の売り上げが伸びていますね。今後は安定的に成長していく、そして今期は黒字転換を掲げています。
米倉:ストック型売り上げが売り上げの8割、どんどん積み上がってきています。
馬渕:DX(デジタルトランスフォーメーション)は最近までシステムインテグレータやコンサルがメーンプレーヤで株式市場では高く評価されていましたが、これからは「活用」が主軸になると考えています。だからこそTrue DataがIPOすると知ったときに「出てきた!!」とうれしくなりました。
米倉:ありがとうございます。IPOしたことで次への準備もかなり整ってきました。チャレンジを続けていきます。
馬渕:チャレンジとは具体的に?
米倉:今はドラックストアを中心にデータを増やしていますが、スーパー、ホームセンターと広げていくことが一つ。もう一つはID-POSデータのまわりに発生している新たな消費者ビッグデータに対応していくこと。位置情報とか交通系ICカードとの連携をイメージしています。そして三つ目が、これらのデータを広告やアナリティクスなど新たな市場と掛け合わせていくことです。
馬渕:広告市場は6兆円と非常に大きなものですが、ただ、世界はアメリカをはじめ利上げの方向に動いている、つまり、企業が利益を得づらくなるフェーズでは広告など御社が新市場と目されている領域には資金が投下されづらいように思います。
米倉:その逆の「削減」でも当社ツールのニーズが発生します。廃棄物などムダを減らす、サスティナビリティという観点からもデータ分析は必須です。投資意欲が旺盛な企業にはマーケティングや広告で、逆の企業にはコスト削減による利益率向上で当社のツールは活用していただけるのです。
馬渕:削減もDX企業の担い手がやるべきことなのですね。
米倉:日本ではスーパーやドラッグストアだけでも新製品が1日に1000ぐらい、多いときには出てきます。ただし店舗面積は限られていますので、大部分が生活者の目にとまらず消えていく。
馬渕:圧倒的なデータを持っているからこそ実現できるサスティナブルですね。最後に、これから目指す「世界観」をお聞かせください。
米倉:われわれは大企業のみならず、規模や地域に関わらずにデータの恩恵が受けられる世界を作りたい。当社の成長というカタチで示したいと思っています。
馬渕:地域ですか?
米倉:成長の機会は日本の外にもあります。時間はかかると思いますけど確実にやっていきます。
馬渕:いまはマザーズが全体的に下がっていますが、グロース(成長株)売りが一巡すれば御社も再度注目されるのかなというふうに思います。引き続き注目しますので積極的なニュース発信やIR(投資家向け広報)をぜひともお願いいたします。
※ID-POSデータ……POS (販売時点情報管理)データにID(ポイントカード番号などの顧客ID)をひも付けたデータのこと。モノの動きだけでなく人の購買傾向や嗜好(しこう)を可視化。
対談の様子は動画でもご覧いただけます。日本証券新聞Digital版もしくはYouTube日本証券新聞公式チャンネルから。
https://www.youtube.com/watch?v=I4cIL9DLXDU/