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IPO2023年9月22日

IPO社長会見 揚羽 一気通貫でインナーブランディング

揚羽(9330)が9月21日、グロースに新規上場した。人的資本経営に特化したブランディング支援を展開している。初値は公開価格を6・4%上回る1490円で、寄り後はストップ高(300円高の1790円)となった。上場当日の記者会見で湊剛宏代表取締役社長が語った内容のポイントは次の通り。

4種類のブランディングを展開……採用時のブランディング、人材を定着させたりエンゲージメントを上げたりするインナーブランディング。自社の魅力を外部に発信するときのコーポレートブランディング、自社のSDGs活動を社内外に知らしめるサステナビリティブランディングの4つを中心に行っている。今は特にインナーブランディングのニーズが高い。

コンサルとクリエイターのハイブリッド……ブランディングの業界はコンサル会社、クリエイティブは映像、ウェブ、デザイン事務所などに機能分割されていることが多いが、当社はコンサルティングから、映像、ウェブ、グラフィック、ウェブマーケティングまで一気通貫でやる非常に珍しい形態。複数の会社でやると利益が分散され、コミュニケーションが複雑になる。我々は1社で完結しているので、利益が分散されず、コミュニケーションも円滑なので顧客から支持をいただいている。他社はコンサルティングの給料が高く、クリエイターはそこまでではないが、当社はハイブリッドを大事にしており、コンサルティングもクリエイティブも両方大事ということを徹底している。クリエイティブは大企業を中心にした実績があり、各領域で広告賞を受けている。

エンゲージメント向上に強み……海外と比較して日本の従業員エンゲージメント(働いている企業への思い)は非常に低く、若手社員の流出が起きている。大手企業のトップは非常にまずいと考えており、エンゲージメントを上げるために我々に数多くの相談が来ている。従業員エンゲージメント市場は年率17・8%成長で、実感値としてはもっと伸びている。一般的にコンサル会社がインナーブランドを手掛けることが多いが、大事なのはどうやって浸透させるかで、これはクリエイティブの力。映像やグラフィックで自社を誇りに思えるものを作って社内に展開することはコンサル会社にはできない。

新卒採用支援も堅調……リクルーティング領域は少子化で大学生が少なくなる一方、企業の新卒採用意欲は旺盛。その結果、新卒採用支援市場は伸びている。かつての大学生は就職情報サイトを情報源にしていたが、最近は個別企業のホームページが多い。我々はそうしたホームページを作っているため、依頼も増えている。

コロナの悪影響から回復……売上高は2019年9月期まで伸びてきたが、コロナで20、21年は落ち込んだ。その後は成長軌道に戻っており、今後も続けていきたい。経常利益も売上減少の影響で20年に赤字になったが、21年には外注をなるべくやめて内製化して黒字回復。今期は売り上げが好調だが、利益率が(まだコロナ前より)低い。売れたのがイベントやグッズで外注しなければならず利益率が落ちた。今後商品構成を変えれば元に戻ると考えている。

クロスセルで顧客単価アップ……部門の横展開によるクロスセル推進を進めている。少し前までは単発の取り引き、例えば人事から採用サイトだけ受注するなどのことが多かった。ここ2年間クロスセルを推進している。例えば採用サイトを受注したうえ、従業員のエンゲージメント対策も提案するなどして、1社あたりの顧客単価を上げている。プラス取引社数を拡大する。今まで累計800社、年間350社ほどと取り引きしているが、対象とする大手企業は2万社弱あるので、ホワイトスペース(市場の余地)は非常に大きい。1社当たりの顧客単価を上げつつ取引社数を拡大するシンプルな成長戦略を描いている。リクルーティング支援をベースとして維持し、インナーブランディングを思い切り拡大していきたい。

競合は電通、博報堂……早く上場したほうがチャンスが大きい。大手企業の顧客が多いが、未上場ということで悔しい思いをしたこともある。電通、博報堂といった大手が競合になるので、意義ある仕事を進めるために、1日も早く上場したかった。

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