「足場」だけじゃない!! 進化するアルインコ
建設現場に欠かせない「足場」など建設機材の製造・販売・レンタルをコア事業とするアルインコ(5933)。創業82年目にして初めて中期経営計画を披露するなど、最近は“攻め”の姿勢が光る。中計に盛り込まれた「今後の戦略」などを、たけぞう氏が個人投資家の代表として深掘りする。
――まずは事業内容から。「足場」だけじゃないことに驚いた。
株式市場では足場の会社としての認知度が高い。例えば機関投資家からは次世代足場アルバトロスの売れ行きやシェアに関する質問が大部分を占める。しかし多くの一般個人にとっては通販でフィットネス機器やマッサージ機器を販売する会社であり、アマチュア無線機のメーカーとして身近に感じていただいている方もいる。ちなみに現在は仮設機材の販売部門である「建設機材関連」と、これら機材を建設会社やレンタル会社などに貸し出す「レンタル関連」、そして、はしご、脚立、フィットネスなど「住宅機器関連」、無線機など「電子機器関連」を加えた4事業を展開している。
――私個人的には「物流」に興味が沸いた。
物流施設に設置するラック(棚)、これを製造する双福鋼器へ2017年に出資し、昨年6月に完全子会社化した。言うまでもなく物流はEC(電子商取引)の拡大とともに、まだまだ伸びる。この領域で事業を持っていなかった当社が、ようやく見つけたパートナー、双福鋼器の業績はこの3年間、想定を上回って伸長しており、前期は売り上げ、利益ともに過去最高を計上した。
――M&Aの上手さもアルインコの特徴ということか。
10年3月期には286億円しかなかった売上高が、10年後には556億円とほぼ倍増した。今後も100億円単位で積み上げていくためにはM&Aが欠かせない。
先述した物流施設のラックしかり、コア事業で培った鉄とアルミのノウハウが展開できて、かつ、当社の販路に乗せることにより売上増が期待できる「製品」をグループに加えるパターンが、過去には多かった。しかし近年は、建設現場の内装工事などで使われる測量機器のメーカーを買収するなど「周辺領域」を意識し始めている。
いずれにしても「新たな柱を作る」ではなく「今ある柱を太くする」。そのためのパートナーを常に探し続けている。
――コア事業が苦戦する中、フィットネス領域がコロナ危機を救った。
前期は建設案件が止まり「建設機材関連」「レンタル関連」と売上高の約6割を占めるコア事業が苦戦したものの、いわゆる巣ごもり需要が旺盛でフィットネスなど住宅機器関連がこれを支えた。今期については住宅機器関連の売り上げを反動による微減と見込むが、この先はIoTなど新展開を期待している電子機器関連がけん引役に育ってくれることをイメージしている。
――コア事業も先行き明るそうだ。
東京駅近辺など大都市では再開発が続いていたり、あるいは全国各地で起こるインフラ設備の老朽化対応など、当社はこれらの恩恵を大きく受ける。
機材そのものの更新需要も大きな商機だ。戦後から使われ続けている従来型の枠組足場では転落防止など国が設けた安全基準をクリアするために、ユーザーはオプション機材を買い増さなければならない。ならば、高機能かつシステム化され、作業効率の高い新型足場へと一気に切り替えてしまおうといった動きが生じている。
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後編(6月11日付)では23年度に最高益更新を目指す中期経営計画や東証プライム市場移行への取り組みについて伺います。