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インタビュー2022年12月29日

トップインタビュー オプトラン 範賓代表取締役社長に聞く

ALD装置が中核事業に成長

来年はスマホ→EVへ需要シフト

光学薄膜装置の製造・販売を行うオプトラン(6235・P)。先の今12月期第3四半期(3Q、1~9月)決算発表では、通期の営業利益予想を従来の減益見通しから一転、75億円(同6.8%増)へと上方修正した。これに伴い、配当予想(期末一括)も8円増額し、前期と同額の50円を予定する。業績好調の背景と今後の成長について、今年新たに代表取締役社長執行役員に就任した範賓(ハン・ビン)氏に聞いた。

――3Q受注高は前年同期比倍増の458億円と上場来過去最高を記録した。
北米向けスマートフォンカメラモジュールを中心に、非常に受注が好調。特に上位機種向けニーズが強かった。また、従来から売り上げの多様化に取り組む中で、中心的な分野であるIoT、中でも自動車やLEDなどが順調に伸びている。

――中国生産・販売が柱だが、来年以降の事業環境への不安感は。
それほど悲観していない。足元ではゼロコロナ転換からの感染急拡大と慌ただしい状況が続いているが、一方で中国は来年の後半から一気に盛り返してくると言われており、今年は元気がなかった中華系スマホメーカーも投資を再開する可能性がある。光学部品の大きなトレンドとして、来年後半以降は従来のスマートフォンから電気自動車(EV)にシフトしていくだろう。電気自動車は各種光学部品、センサーの搭載数が増加していることに加え、バッテリー関連の成長も著しい。

――受注残高は492億円と今年の売上高よりも多い状況。消化は間に合うのか。
問題ない。上海では今後ALD装置生産を担当する子会社の光馳半導体技術(上海)有限公司が新工場の建設に着手し、来年後半に稼働開始予定。日本・台湾に加え、ベトナムに進出するなど、中国リスク分散の施策も進めている。

――足元ではALD装置が好調で、御社の中核事業に成長しているという。そもそもALD装置とは何か。
既存の蒸着やスパッタリングに次ぐ新たな成膜技術、ALD(原子層堆積)を用いた成膜装置で、光学用に特化した量産装置を開発したのは世界で当社が初。例えば最近のスマートフォンカメラのトレンドである超広角レンズ向けなど、3D基盤に対応する特殊な成膜方法であり、全方位をいっぺんにかつ薄く均一に成膜できる特徴がある。

――利益面ではALD装置含め新型装置の貢献も大きい。
直近3年の間に開発したものを新型装置としているが、今年はその中でもALD装置の割合が高い傾向にある。会社としては市場のニーズに合わせて常に新製品を開発していくことをポリシーとしており、社内では開発した製品がどのぐらい実績を挙げたか目に見えるようにし、開発者にインセンティブを付ける体制をとっている。貢献度が直接個人の収入に結び付くため、モチベーション向上につながっている。

――2023年12月期以降の重点投資分野は。
これまで主に展開してきた光学薄膜分野から、今後はさらに光電子(半導体光学融合)分野へ広げていく。例えばMEMSやCMOSイメージセンサーなど。半導体後工程でのウエハー上の成膜ニーズが拡大しており、CMOSイメージセンサーは既に実績が上がっている。研究開発機能を強化すべく、現在は鶴ヶ島拠点の新設に着手。来年夏ごろの開所を予定している。

――最後に株主還元策に対する考えをお願いします。
安定した事業成長と株主還元を続けることを目指し、10年、20年後の姿を見据えたチーム作りに力を入れている。成長の実現のため、生まれてくるキャッシュは基本的に新たな分野への研究開発、それを支えるためのインフラ投資を最優先させる考え。一方で株主還元については常に重要視しており、連結配当性向30%程度を目安に安定的な配当を目指す従来の方針に変わりはない。