note(5243)が2022年12月21日、東証グロースに新規上場した。クリエイターが文章、動画などのコンテンツをウェブ上で自由に投稿、販売できるメディアプラットフォーム「note」を展開している。初値は公開価格を53%上回る521円。上場当日の記者会見で、加藤貞顕代表取締役CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
創作の街を作る……私はもともと出版社で編集者をしていた。コンテンツを作ってそれを届けていくということを仕事にしてきたが、様々な課題を感じて創業した。会社のミッションは誰もが創作を始めて続けられるようにすること。みんなが使っているインフラのようなサービスを作る。インターネット上に個人も法人も公共機関も使う創作の街を作ろうとしている。メディア産業はネットになって曲がり角を迎える時期であり、そこの課題を解決したい。
課金を中心に……メディア産業はクリエーション、ディストリビューション(流通)、ファイナンスの3つがうまく回ると事業が進んできた。インターネットはクリエーションしやすくなったが、ディストリビューションとファイナンスに課題がある。検索、SNS(交流サイト)がインターネットのディストリビューションだが、炎上やSEO対策で検索がゆがめられるなどの課題。ファイナンスは今まで広告が主軸でやってきたが、最近は課金も多少盛り上がりつつあるがまだまだ全然ない。広告だけだと収益性低く、今後みんながクリエーションを続けるのは難しい。ファイナンスの仕組みがもうちょっと整備される必要があり、課金を中心にやると始まった。
登録会員550万人……具体的な事業は主に「note」「note PRO」の2つをメインにしており、「note」は、著名人も一般の方も多く使っているし、法人も既に1万6,000社ほどが使っている。公共機関の利用も増えている。売上高は5年間平均で72%成長しており、2022年11月期も順調に成長している。「note」は14年に開始。あらゆるクリエイターをエンパワーメントするメディアプラットフォームで、様々なコンテンツが投稿できるサイト。誰でも文章を投稿できるし、音楽、音声、画像、イラスト、動画などさまざまなコンテンツを投稿して、必要ならば販売することもできる。現在、MAU(月間アクティブユーザー数)は4,000万人。IDを登録した会員、かなりプロアクティブに見たりとか、書いたりとか、販売したり課金したりしている人が550万人。コンテンツ数が2,700万。年間の流通金額が21年度で84億円。
炎上も少なく……他のメディアサイトと違い、ランキングと広告がない。クリエーターが過度にページビューを煽って何かを書くみたいなことをしなくてもよく、自分自身がやりたいことに集中して創作をすることができて、それによって前向きで安定した空気がある場所ができているということで、炎上も少ない。良い作品がちゃんと読者に届く環境ができているので、それによってクリエイターが集まり、それを見た読者が集まるという非常に良い循環が生まれている。これまで広告宣言費はほぼ使わなかったが、会員登録者数もコンテンツ数もユニーククリエイター数も順調に伸びてきている。クリエイター数は100万人でIDを持った人の5分の1くらい。流通総額も順調に拡大している。CtoCと課金を組み合わせた非常に独自のビジネスモデルになっている。
法人向けも人気……「note PRO」は法人向け事業。なぜ使われるかというと盛り上がる街のようになっているから。そこにお店を出すという形で使う企業が多い。これに対して高機能な「note」を有料で提供するサービスをしている。カスタマイズができたり、データが見れたり、サポートを受けられたりするサービスで月額5万円払っていただくSaaSサービス。大手企業がブランディングに使ったり、ベンチャー企業が人材採用に使うケースが増えている。メディア企業がサブスクリプションで使うケースも多い。汎用的にウェブサイトが作ることができて、かつ、街の中で集客ができることがユニークなポイント。「note」はユーザーがたくさん使い、一部の記事が売れて手数料をもらう。「note PRO」は企業から利用料をもらう。
メンバーシップが目玉……成長戦略の基本はCtoCを伸ばすこと。サービスに人がいるほど法人企業も魅力を増す。新しく(22年7月に)出した「メンバーシップ」が一つの目玉になる。クリエイターの活動をファンがお金を払ってサブスクリプションでコミュニティを作ることができる。幅広いクリエーターに使ってもらっている。
早期黒字化目指す……赤字上場だが、方針としてはトップライン(売り上げ)を伸ばしていく。そのなかで赤字幅を縮小していく予定で、黒字化もそのような流れで早期に実現したい。これまでは非公開企業だったので、少数の株主に理解していただいてきた。今後は公開企業になるので、株主や市場と対話しつつ進めたい。(公開価格の340円は4月の調達の2,602円から大幅なダウンラウンドになったが)「note」は長期的な視点で取り組んでおり、直近の市場は良いタイミングでないとの意見もあったが、やるべき時にやろうと上場を決断した。
炎上対策にも注力……そもそも炎上しにくい仕組みをつくるってことを大事にしている。いろいろなガイドラインの整備などの仕組み作りを第1にやっている。その上でAIによるコンテンツのチェック、人手による確認、通報対応など、みんなに気持ちを使っていただけるよう様々な取り組みをしている。
当然世界でもやっていく……グローバル展開は将来的に考えている。メディアやクリエイターを巡るエコシステムがネット上にないという課題は、日本だけではない。世界中で全く一緒の課題が存在していると思っている。ここに対してわれわれはまだやるべきことをやっている途中ではあるが、形を出している会社はまだあまりないと思っている。もう少し力を付けたら、当然世界でもやっていくべきことだと認識している。(HS)