スマサポ(9342)が2022年12月29日、東証グロースに新規上場した。同社は不動産管理会社の業務効率化、収益向上に寄与するサービスを提供。上場2日目の30日、公開価格比2.8倍の2,250円で初値を付けた。上場当日の記者会見で小田慎三代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
不動産管理業界が抱える課題……不動産管理業界は長年、直接的な法規制や監督官庁がなく、免許の必要もなかった。しかし昨年にやっと法制化され、今後、業界の再編・淘汰とともにDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速していくと考えられている。不動産管理会社の業務は多岐にわたるが、その中で最も時間をとられて対応が大変だと言われているのが入居者対応業務。近隣トラブルやクレームの対応は管理会社で働く社員にとっても精神的に大きな負担となっており、なるべく入居者とのコミュニケーションを取りたくないというネガティブなマインドになっている。これは不動産管理会社の収益構造にも問題があり、家賃の3~5%と薄利多売な商売のために、どうしても業務に優先順位を付けざるを得ないという現状がある。私たちは、不動産管理会社と入居者のこれまでアナログでネガティブだったコミュニケーションを様々なソリューションで解決する。
市場は広大……国土交通省調べによると、不動産管理会社は全国に約3万2,000社、そしてその先に賃貸の入居者が約1,900万世帯ある。例えば、空室の募集などについては各社テック企業がひしめき合っているが、その先の入居者の領域は巨大なマーケットで誰しもが参入したい。しかし、それにもかかわらず参入できたテックプレーヤーは非常に少ない。この理由として、入居者データというものは管理会社が保有しているため、管理会社を通さずに直接賃貸の入居者にリーチするのは非常に困難。この管理会社との協業というものが大きな参入障壁になっている。
入居者対応を代行……現在の主要サービスである「スマサポサンキューコール」は、不動産管理会社から入居者の新生活のサポートの業務委託を受けて、管理会社にこれまでなかった収益を生み出す。入居者に不動産管理会社としてのお礼と様々なアンケート調査を行い、今後必要になるであろうデータを管理会社に代わって取得。そして、入居者には新生活を始めるに当たって、必要なインターネットの申し込みや電気ガスといったライフラインの申し込みを取り次ぎ、ここで得た収益を管理会社さんに顧客紹介料として還元する。不動産管理会社が管理をする世帯数の約25%は毎年入れ替わることから、非常にリカーリング性の強いビジネスモデルとなっている。
コミュニケーションを円滑にするアプリ……入居者アプリ「totono」は、不動産管理会社と入居者とのコミュニケーションを円滑にするプラットホーム。不動産管理会社が告知したいことをリアルタイムに、直接入居者にお知らせする「お知らせ掲示板」や、「チャットコミュニケーション」、「FAQ」などの機能がある。不動産管理会社は「totono」をサブスクモデルとして月額利用し、自社の入居者には無料で配布する。また、アップセルとしてチャットセンターを社内外に設けており、不動産管理会社からのチャット対応のアウトソーシングも請け負っている。入居者にはBtoBtoCとして、様々な入居者サービスを展開していく予定。
契約社数、アプリ利用は順調に成長……「スマサポサンキューコール」のKPI(重要業績評価指標)は契約不動産管理会社数と入居者との接点数、また、「totono」のKPIは同じく契約不動産管理会社数とアプリのダウンロード数となっている。前者は前期の導入社数が全国で870社にのぼり、アンケート調査、また新電力やライフラインの取次ぎといった電話は24万世帯を超える規模になっている。「totono」はノンプロモーションで利用者が伸びているが、これは「totono」を導入することで、管理会社にとっては業務の軽減につながることが明確なため、管理会社が新入居者にマストでダウンロードを促していることが大きな要因となっている。既存の入居者には、SMS(ショートメッセージサービス)でQRコードを送ったり、チラシの投函などで積極的なダウンロードを促している。
成長の基本方針……当社は創業以来、「スマサポサンキューコール」で事業を拡大してきた。現在は入居者アプリ「totono」が管理業界におけるプラットホームとなるよう注力している。この「totono」がプラットホームになった暁には、「totono」の上で派生する様々な事業で成長を遂げていきたいと考えている。なお、上場で得た調達資金は「totono」のデジタルの分野に全て投資する予定。不動産管理会社、またその先にいる入居者の方がより使いやすいサービスに昇華させていく。(SS)