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インタビュー2023年2月16日

ハークスレイ青木会長インタビュー「お弁当」だけにあらず!!「食」のインテグレーター、大阪万博でさらに飛躍

先ごろ3Q決算を発表したハークスレイ(7561・東証プライム)。「ほっかほっか亭」で知られるものの、売上高の約半分は「それ以外の事業」が占める。現状解説と「今後」を代表取締役会長兼社長の青木達也氏に聞いた。

――2022年の株価上昇率88%はプレミア上場企業の中でも突出している。要因の一つに11月に発表した稲葉ピーナツの買収がある。
稲葉ピーナッツは1918年創業の老舗で実績も十分。近年は売上高80億円程度の規模だったが、買収直後の12月は単月で10億円を超えきた(※)。特段の施策は打っていないものの“追い風”が吹いているようだ。ナッツは天然のサプリメント。コロナ禍で発生した巣ごもり需要で食や健康への意識が向上、ナッツへの関心も高まっている。
※グループ全体の売上高は23年3月期で370億円を予想

――なぜピーナツだったのか。
越境Eコマース(電子商取引)の可能性を模索していた。ナッツはかさばらず、単価が割と高く、常温で扱うことができ、なにより世界中で愛されている。われわれが目指す「食のインテグレーション(統合)」の中で十分にシナジーを生み出せると考えた。

――食のインテグレーションとは?
1980年に「ほっかほっか亭」というお弁当屋さん、中食事業の近畿地区本部としてスタートした当社。これまで愚直に「食」を軸にして領域を広げてきた。

アサヒL&Cは創業から間もなく立ち上げたグループ内の物流機能だったが、2000年台前半に起きたBSE(牛海綿状脳症)問題をきっかけに事業多角化の必要性を感じて「独立自走型」に方針転換。L&Cはロジスティクス・アンド・カミッサリー、「物流と加工」の略で、名前の通り現在は大手コンビニエンスストアやスーパーなどグループ外企業向けのセントラルキッチンとしても機能している。

――店舗利活用も好調だ。
外食チェーン撤退後など空店舗の利活用を手掛けている。リノベーションなどバリューアップして投資家に売却する「店舗不動産事業」、あるいは、店舗のみならず人材も丸ごと引き受けた上で希望者に運営を任せる「店舗リース&ソリューション事業」があり、後者では、当社が支援することで初期投資額を20分の1程度におさえた独立を可能にした。フランチャイズ時代よりも自由度が高い環境下でノウハウ豊富な人材が活躍できる場を提供している。

前者については、これまで主力だった駅前から郊外型までと物件のバリュエーションが広がりつつあるものの、投資家は現在も300人程度が待機している状態。引き続き好調が続くとみている。

――話は戻ってEコマース。ピーナツのほか「冷凍」も強く意識しているとのこと。
ほっかほっか亭の人気商品、白身魚フライとちくわ磯部揚げがのった「のり弁当」を先ごろ冷凍食品として一部地域で販売したところ、想定の6倍ほどの注文があった。スーパーを通じて一般家庭向けのみならず、今後は介護や病院、あるいは災害など緊急用での利用も視野に入れている。

――冷凍弁当は既に競合が多い。勝算はあるのか。
なじみのある味、安心感。つまりは信頼性、ブランド力、これこそが当社の強み。想定以上だったのり弁当の売上が証明している。

ハークスレイは皆さんから支持されるほっかほっか亭の味、圧倒的なブランド力をもって、早急に面を取りに行く。のり弁を、いつでも、どこでも。たとえば富士山の頂上でも、手軽に。テレビコマーシャルを作るならば“月でほおばる”なんていう画がピッタリだ。

――当面の注目点、ハークスレイを見る上で重要なポイントは?
25年4月から始まる大阪万博は一つの転換点になるだろう。当社は東京五輪やサッカー日本代表戦など大規模スポーツイベントで関係者やVIP向けの食事を提供。加えてパーティ・イベント向け備品、例えばテント設営から調理までといった、いわゆるケータリングを手掛けている。この領域もコロナ禍で中小企業がことごとく廃業に追い込まれたが、一方では高級ホテルがグランピングなど非日常的な屋外活動を積極的に取り入れるなど大きな構造変化が起きていて、新たに生まれるニーズを当社もまだまだ拾いきれていない。

ひとくちに「食」と言っても範囲は膨大。非日常から日常、通常へと世の中の意識が変わるだけで需要はいくらでも生み出せる。なにしろ人は5時間でおなかが空っぽになるのだから。