IPO会見/全文書き起こし
【会社名】ispace(9348・東証グロース)
【上場日】2023年4月12日
【スピーカー】
代表取締役CEO 袴田 武史 氏
取締役CFO 野﨑 順平 氏
【資料】
①事業計画及び成長可能性に関する事項
②業績予想
地球と月をひとつの「エコシステム」に、月の水資源を活用
我々は宇宙、そして月で事業をしていく会社として今回上場させていただいておりますけれども、我々のビジョンとしてはEXPAND OUR PLANET, EXPAND OUR FUTUREということで、宇宙に人間の生活圏を築いていきたいというのが大きなビジョンの方向性になっております。
それを実現するために、まずは地球と月の間でひとつのエコシステムを作っていくということをやっていこうとしております。そのビジョンをより具現化したコンセプトで“Moon Valley 2040”というものを発表させていただいておりますけれども、2040年以降は月に1000人の人が住んで、そして働いて経済を作っている、そして1万人以上の人が地球と月を行き来している、そんな時代を作っていけるのではないかというふうに考えております。
何でこのようなビジョンが実現していくかというところなんですけれども、月に水があるということがわかっております。この水をですね、水素、酸素に分けることでロケット燃料になっていきます。宇宙にガスステーションができますと、宇宙の輸送コストを大きく下げることができます。NASAなどが、これから火星に行く際にも、月の周りで燃料補給をして火星に行く方が大きなコスト削減につながるというふうに計画をしております。
より我々が重要視しているのが、この宇宙での資源の利用というのが、地球の持続可能性にも大きく寄与するというところです。我々の今は豊かな生活というのが衛星インフラによって相当支えられています。これからさらに社会が高度化するに従って、我々の宇宙に対する依存度というのは高くなっていきます。
次に重要なのがこの依存度が高くなり、高度化していく宇宙インフラをどうやって経済合理性のある形で維持メンテナンスしていくかという課題です。そのためにはロケットのコストを下げていくのは重要ですけれども、地球から打ち上げる物量を減らしていって輸送量輸送コストを大きく下げていくということが重要だと思います。
そのために宇宙の資源を活用していくというものが、これから大きな経済活動になっていくだろうというふうに考えております。
▶4月26日に「営利企業で初の月面着陸」を予定
そういったビジョンを実現していくために、まず我々、月のミッションを実際に実行しております。昨年12月にSpaceX社のFalcon 9で打ち上げまして、今、月まで到達をしていて、本日発表させていただきましたが、今月の26日の未明に早ければ着陸するという計画になっております。この着陸は営利企業としましては世界で初の月面の着陸になる予定です。我々の競合に当たるような企業もアメリカを中心に何社かおりますけども、彼らよりも早く月面に着陸できる。世界で初めて、そして最短でトラックレコードを確保できるということで、今後大きな競争優位につながっていくというふうに考えております。
我々このミッション、着陸が最終的なマイルストーンではございますけれども、10の重要なマイルストーンを設定して一つ一つをしっかりとクリアしていくということに取り組んでおります。今までSuccess7まで成功しておりまして、それぞれの過程でさまざまな学びがあります。これを次のミッション2、3にしっかりとすぐにフィードバックをして技術の成熟性を上げていくということが何よりも重要だというふうに考えております。
ではこの月のマーケット今後どうなるのかというところなんですけれども、いま宇宙機関を中心に宇宙予算というのが大きく伸びております。
その中でも月の予算というのがアメリカのNASA、そして日本のJAXAヨーロッパのESAなどで、そういった月の予算が大きく伸び始めております。今こういった国は技術開発に支援をするのではなくてサービスとして調達するということになっておりますので割合として大きな事業として見込めるところになってきております。
▶「月」輸送、2040年には1700億米ドル市場に
これから月の市場というのは大きく拡大をしていきます。PwCコンサルティングが発表した資料によりますと、2040年ぐらいには月全体の輸送の市場が1700億米ドルにまで成長するというふうに想定されております。その中の、我々がビジネスをしていく小型な輸送のセグメントにおきましても500億米ドル以上の成長になるというふうに予測されておりますので、我々この市場を獲得していくために、しっかりとビジネスを築いております。
我々のミッションの概要になります。我々はまず輸送サービスとして月にミッションを行っていきます。我々は着陸船(ランダー)を開発しておりまして、その着陸船をSpaceXなどのロケットで打ち上げていきます。着陸船自体が推進系を持っておりますので、地球周りでSpaceXなどのロケットから切り離されるんですが、それからエンジンを使って月まで行って月面に着陸をしていきます。月面着陸した後は、我々のお客さまの荷物を降ろしたり、月面でローバーを展開して月面のデータを獲得をして、地球に送信をして、そのデータを顧客に提供していくという形になります。
▶3事業すべてで契約締結、合計1億米ドル超を獲得済み
我々には大きく3つの今ビジネスがございます。まず主力が「ペイロードビジネス」ということで1キロ当たり幾らという形で月面にお客様の荷物を輸送していくというビジネスになります。
2つ目が「データビジネス」でこれから大きく成長するというふうに見込んでおりますけれども、これからですね、このデータがこの月の開発では非常に重要になっていきます。そのデータプラットフォームを構築してデータを販売をしていくというところです。
最後に「パートナーシップ」というプログラムを我々やっておりまして、日本企業を中心に多くの企業様に協賛をいただきまして、マーケティングフライトをご提供しながら、しかしただマーケティングをするだけではなくて輸出ですとかビジネスで協業することでよりパートナーシップの意義を高めていくということをしております。
具体的にはこのような顧客が既に契約をさせていただいております。我々3つのサービス合わせて累計で1億ドルの契約を既に獲得をしております。特にMission3ペイロードサービスこれが主軸になっていきますが、今Mission1をやっておりますが、それに加えてMission2、Mission3というものが今後あります。
それぞれ既に顧客が確保されております。Mission3は特にDRAPER(ドレーパー)と書いてありますが、これは大元はNASAのコマーシャルルナー(Lunar)ペイロードサービスという商業月面輸送サービスの契約になっております。
我々このコマーシャルルナーペイロードサービスというものの一環でNASAの荷物を月面に運んでいきます。これはNASAがサービス調達として行っているものでして、2028年までの10年間で26億米ドルの予算で民間企業から年2-3回サービスを購入するというものになっております。それを我々アメリカのパートナーであるDRAPERと共同で獲得をしております。
(NASAから)7,300万米ドルの発注をDRAPERが受けておりまして、その中で我々5,500万ドルの契約をDRAPERから受けております。こちらは我々の売り上げということになります。このミッションは月面に着陸するんですけれども、月の南極、さらに月の裏側になりますので通信衛星が必要になります。我々同時に2機の通信衛星を打ち上げますので、これからですね、この通信を介してさまざまなサービスを提供するということも可能になっていきます。
こういった政府の需要というのは非常に重要なんですが、我々は政府だけではなくて、民間の需要もしっかりと獲得をしております。MOUなどの形で今グローバルで民間企業から累計380万米ドルの契約を獲得をしております。こちらの図表にあるとおり日本のみならずアメリカ、ヨーロッパ、中東などさまざまなお客様と契約をして、今後もミッションを実行して売上を上げていきます。
▶リスクヘッジも万全に、超優良パートナーとタッグ
こういったビジネス、やはり失敗のリスクというのが皆さまの中でご懸念を持つところもあるかとは思いますが、我々そういったリスクを最大限削減できるようなビジネスモデルを開発してきております。旧来の宇宙の事業ですと1回ミッションをやった後に次の資金調達または予算を確保してミッションを実行してきましたが、我々は既に3つのミッションを同時並行で開発をするだけの資金を獲得、Mission1の学びをすぐにMission2、Mission3にフィードバックをして技術の信頼性を高めていくということができております。これによって大きな失敗のリスクというのを避けることができまして、継続的な事業を実現できるということになっております。
技術もやはり重要ですので、グローバルで技術の信頼性のある非常に高いプレーヤーとしっかりと組んでおります。特に打ち上げはSpaceX社のFalcon9を活用しておりますし、特に推進系ですとか月面に着陸するときの誘導制御というのが重要になりますが、推進系はヨーロッパのアリアングループという宇宙企業では老舗の企業から推進系のコンポーネントを調達しておりますし、着陸の際の誘導制御の技術に関しましては、アポロの時に唯一実績を持っているDRAPER社と独占契約をしておりまして、その技術を活用させていただいております。
▶2026年3月期以降に商用大型ランダー稼働による収益化を想定
そういったミッションを通して我々しっかりと売上を計上していきます。Mission1、Mission2では最大30kgを乗せられるシリーズ1というランダーを活用してR&Dミッションとしてやっていきますが、Mission3以降は最大500kg乗せられるランダーをアメリカを中心に開発をしておりまして、こちらで売上を大きく加速をしていきます。
右側の表にあるとおり我々の売上の計上のしかたというのは特徴がありまして、大体お客さまから打ち上げる2年前に契約をいただきまして、事前にキャッシュインをさせていただきますのと、あと、売上の一部も打ち上げ前に計上させていただきますが、なのでひとつの契約が複数年に渡って売上を計上していて、それが幾つかのミッションで重なりますので、非常に売上の立ちやすい事業になっております。
まずは輸送事業によってしっかりと売上をつくっていきますけれども、その後、途中でも申し上げたようにデータが非常に重要なマーケットになっていきます。我々としては着陸のみならず月面のデータをですね、ローバーなどで確実にローカルなデータを獲得していくことと、また、衛星を月の周りに配備をしましてグローバルなデータも獲得をしていきます。ローカルのデータをしっかりとデータベースにすることで我々データビジネスを今後確立していくということを考えております。
Mission3でも通信衛星を2基飛ばしますけれども、通信も非常に重要なインフラビジネスになっていきますので、こちらもあわせて実行することができるというふうに考えております。
質疑応答
Q1:シスルナ(地球と月の間の空間)経済圏の構築において短期的に課題になりそうなことと中長期的に課題になりそうなことは何ですか。
中長期的には宇宙の資源の所有権というのが一つ大きなテーマになると思います。今アメリカまたは日本には宇宙資源法というものがありまして、国単位では既に民間企業が宇宙資源を所有して売買できるという形になっておりますが、これが国際的な商取引になっていきますので、国際的な枠組みを作っていくということが一つ大きなキーポイントになってくるというふうに思います。
短期的には、やはりしっかりと着陸をして輸送の事業を組み立てていくということだと思います。そういった経済が回り始めてくると多くのプレーヤーも参加をして、このシスルナ経済圏の構築が進んでいくのではないかというふうに考えております。
Q2:黒字化の見通しと株主還元の方向性を聞かせてほしい。
(CFO野﨑氏)既に昨年の12月の段階での我々の決算も公表させていただいていますけれども、現時点においてはまだ我々赤字を出しているという状況でございます。引き続き開発負担、やはり続きますので、当面この赤字の状態というのはもう少し続くのかなとは思っております。
ただし袴田が申し上げたように、我々Mission3から少し大型の着陸船を使います。これは最大500kgまで荷物を持っていけるということで、だいぶこれまでもよりも本格的な事業収益化を目指すようなモデルになりますので、徐々に収益をしっかり出していって、むこう、そうですね、数年後を目指して頑張って黒字化をしていきたいというふうに考えております。
株主還元につきましては現時点で我々、例えば新たに株主になっていただく方にも配当をお出しするとか、そのようなことができるようなキャッシュ状況では残念ながらないんですけれども、こちらも我々として今一番大事なキャッシュの使い方というのは成長投資にしっかり使っていくことだと思っております。これによってしっかり自分たちの企業価値を上げていくことが最大の株主の方々への還元になるというふうに考えております。もちろん中長期的にそのような資金の余剰ができた場合には、しっかり還元していく、配当等でしていくということは中長期的に考えていきたいということも考えております。
Q3:月着陸に向けた課題と意気込みを。どんな世界を作りたいのか。
本日発表させていただいたように4月26日未明を最短の着陸日として目指しております。今までSuccess7までしっかりと実現できておりますので、特に大きな問題なく着陸フェーズまで行けるのではないかというふうに考えておりますけれども、着陸できるかどうかはその時、結果を見ないと最終的にはわかりませんけれども、我々としては今まで最大限ベストを尽くしてきておりますし、今までのSuccess7までも、先日も記者発表させていただきましたが、さまざまな水面下でのトラブルもですね、しっかりと克服しながら実現してきておりますので、しっかりとエンジニアが運用してくれるものというふうに考えております。
この着陸は実現すれば、より多くの方々が月面にこれから事業が展開されるということに対して、より一層リアリティを感じていただけるというふうに考えておりますので、我々今後事業を加速していく上でも非常にポジティブな方向性になるのではないかなというふうに思っております。
Q4:今日は買い気配で終わりました。株価の動向についての感想を。
株価については市場が決めていくことでございますので、我々としては今回、多くの方々に、株主または投資家の方々に注目をいただいておりまして、しっかりと今後事業を拡大していくということを着実にやっていきたいという思いを新たにしております。
Q5:世界的にはスタートアップを含めてダウンラウンドが目立っている状況ではありますけれども、なぜこの逆風が吹いている中でもIPOを開いて決断されたのでしょうか。
(CFO野﨑氏)現在エクイティーのマーケットというのが確かにベストな状態ではないということは我々も十分認識しておりますし、そういう中でダウンラウンドが多いと。我々も実は直近2021年の最後のプライベートラウンドからダウンラウンドで今回出ていくということだと理解しております。
まず我々のようなスタートアップ企業にとっては共通だと思うんですが、やはり資金調達というのは非常に重要なイベントだと思っておりまして、ではこの先、やはり市場環境がベストな時にやる方がいろいろな意味でいいというのはもちろんあるんですが、特に現在、見通しが難しい中においては資金調達可能なときにやるというのは、我々にとって非常に重要な戦略だと思っております。なるべく早期の資金調達をしっかりしていくということに基づいて今回このタイミングでやらせていただきました。
Q6:今回のIPOで2度目の訂正報告書ですと諸経費を差し引いて58億円を調達されてまして、22年12月の手元資金43億円とあわせると101億円になるかと思うんですけれども、年間で大体50-60億円ぐらいのフリーキャッシュフローのマイナスが続いたとするとランウェイが2年弱で尽きてしまうという計算になりますが、どのように今後、資金繰りのめどをつけていかれるんでしょうか。
(CFO野﨑氏)おっしゃるとおり我々、宇宙開発をしておりますので使う資金というのは非常に大きいんですね。ただし先ほどのご説明でも一部、袴田からもありましたが、非常に今このビジネスは大きく動いておりまして、売り上げ、それからキャッシュインというのが非常に大きなものも期待できるというふうに考えています。ですので、引き続き開発はたくさん使うんですけれども、同時に我々としては非常に多くのお客様ですね、それは宇宙機関、政府のお客さまもそうですし、我々の場合は民間企業のお客さまもたくさんいらっしゃいますので、そういう方々からの事業キャッシュというものもしっかり生み出していくことができる。そのようにして、しっかりと自分たちの事業を継続させていくことができるというふうに考えております。
Q7: 月保険について。失敗した時にカバーされる金額は? Mission2以降の締結のめども。
金額については非開示ということで。今回は三井住友海上さんに月保険というものを設計していただきまして、Mission1で契約をさせていただいております。これは非常に画期的な保険だというふうに思っております。月面の着陸までカバーするような保険になっておりまして、これから月の事業が発展する上では非常に重要な、不可欠な要素だというふうに思っております。
現状我々はMission1が今動いておりますのでMission1で契約をさせていただいていますけれども、今後こういった保険は重要になってきますので、もちろんMission2、Mission3以降もMissionが近づくとともに検討させていただきたいというふうには思います。
Q8:今日の上場と月面着陸の日の発表が重なった理由は。
これはある程度偶然というところではありますけれども、ちょうどMissionの進捗を踏まえて発表できる準備が整い整いましたので、同日に発表となったというところでございます。
Q9:これから月面着陸ということで技術的なところで難しいところとチャレンジングなところを。
先ほど10個のマイルストーンのところでも少し触れたとは思うんですけども、各マイルストーンが非常に重要なステップだというふうに考えております。着陸も、その一つのマイルストーンですので、重要なステップです。
一般的には着陸のところが難しいのではないかという風に思われると思います。確かに簡単ではありませんし、誰でもできるというわけではありませんけれども、我々は先ほどご説明したように、しっかりと信頼性のあるスラスターなど技術を使って実績のあるDRAPER社のナビゲーションのソフトウェアを使っていますので、非常に高い確率で信頼性高く着陸をすることができる設計をしてきております。
さらにもう1点つけ加えさせていただけますと我々ミッション、前半で打ち上がった後ですべての機器のチェックをしてきております。スラスター系も今までしっかりと動いているということがわかっておりますので、万一ハードウェアが故障していると着陸が難しくなるんですけども、そういったことがないので、我々としては十分に着陸できる可能性があるというふうに考えております。
Q10:宇宙ベンチャーとして初の上場、これを受けて商業宇宙というのが業界全体としてよりやりやすくなるのか? 関連企業が多い米国と比べてどういった段階にあるのか?
宇宙で事業をやっていくというのは簡単なことではないと思います。ただ、不可能ではなくて、我々のようにしっかりと事業を築くことができ始めてきているというのは、ほかの宇宙のスタートアップに対しても非常に良いメッセージになっていくのではないかなというふうに考えております。
米国と比べますと、市場規模が日本と大きく違いますので、なかなか一概に比較はできませんが、日本発のスタートアップとしては、やはり日本のみならず、グローバルにしっかりと事業を築いていくということが重要だと思っています。米国にも競合が何社かおりますけれども、そういったところともしっかりと協力しながら一緒にマーケットをつくっていくということも重要だと思っております。
Q11:このタイミングでの上場、背景は?
特に着陸と上場日を近付けることを計画したわけではないんですが、結果的にそうなっております。我々としましてはより早くですね、上場の方は目指していきたいということで準備はしてきたんですけれども、結果的にこういったタイミングになっております。上場も着陸もしっかり準備をして、実行していって、何が起こったとしてもMission2、Mission3をしっかりと実行できるようにやっていく。もちろん成功したらしたで、これから事業がさらに大きく加速できると思いますので、しっかりとその流れをつかんで事業を拡大していきたいというふうに考えております。
Q12:今回は売出がなかった。
(CFO野﨑氏)個々の株主様については申し上げることはできないんですけれども、我々が今回のIPOにおいて一番重視したのは、成長のための自己資金をしっかり取りに行くということ。特にマーケット環境が必ずしも理想的ではない状況の中で、数年前のマーケット環境が良い時に比べて資金獲得力が減ってしまうことはあると思いますので、そういう中においてはまず優先的に我々の成長のための資金を取ることを優先させていただいた、というのが背景となります。
Q13:次の調達はいつぐらいになる?
(CFO野﨑氏)私ども今回の上場の大きな目的というのは資本市場というところに確実にアクセスできることを獲得したい、が大きなところですので、将来的にやはり大きな資金が必要になった場合、特に攻めの投資ですね、ますます今この活況な業界の中で攻めの投資をすることで、新たな研究開発をしていくですとか、そういうニーズが出てくることはあろうかと思いますので、それが数年内なのか、どれくらいなのかということは今申し上げることできないんですけども、そういう条件があった時はまた株式市場の投資家の方々にお伺いを立てるということは是非させていただきたいと考えております。
Q14:先ほどご説明のときに「いろいろ水面下のトラブルも解決してきた」とのことだが、計画などには特に大きな変更はないという理解でよいか。
はい。特にマイルストーンについて何か達成できなかったですとか、計画が変わったというところはなく、そのマイルストーンを達成する過程においてさまざまな日常の運用上のトラブルというのはあるんですけれども、それをしっかりと解決をしながらマイルストーンを達成できているということです。
Q15:4月26日の月面着陸、仮に失敗した場合に今後控えているMission2、Mission3は予定通りに実施できるのか?
Mission1が仮に失敗した場合、我々としては現状、Mission2、Mission3の計画を変更するというところは想定をしておりません。もちろん、その失敗の内容によって変わるところはあるかもしれませんが、既にSuccess7が成功していてハードウェア的には特に大きな問題はないというふうには考えられますので、ハードウェアが何か問題があると設計変更などが必要になって長期間かかる可能性もありますけれども、そういったところはあまりないのではないかなというふうには想定をしております。
Q16:Mission3では大型のランダーを飛ばすということだが、この収益規模を教えてほしい。
(CFO野﨑氏)Mission3におきましては先ほどの袴田のご説明にもありましたとおり我々としては大きなお客さまが1社決まっております。こちらはNASAのCripsクリプスというプログラムで、NASAが選定しているペイロード、荷物を持って行くということで、こちらで5500万米ドルになりますので、まずそれが一つ大きなかたまりになります。ただ、これだけで我々は終わらせる予定はなくて、引き続きペイロードのスペースがまだございますので、資料にも書いてございますがInterim PSAということで、PSAは最終契約、その一つ手前のInterim PSAということで世界各国の民間企業の方と契約をしております。
その方々を運んでいって、最終的には我々としては1億米ドル以上の売り上げをしっかり作っていきたいというふうに考えています。それぐらいの規模の大きさのということでご理解いただければと思います。
Q17:数年で黒字化に?
先ほどのご質問とも少し回答が重なるんですけれども、おっしゃるとおり、我々はこのMission3で使います「シリーズⅡランダー」という少し大きめのランダーですね、こちらは本格的な商業フェーズのランダーだというふうに考えております。ですので、こちらのMission3以降、我々いま計画上はMission4、Mission5というものをどんどんやっていき、いずれは2027年ごろをめどに年間2回のMissionを打っていくということも計画しておりますけれども、この「シリーズⅡランダー」を、まさに黒字化のドライバーにしていきたいというふうに考えております。
Q18:なぜ東証なのか。NASDAQは候補になかったのか。(グロース市場であれば債務超過でもOKという例外を東証は設けたが、NASDAQはそもそも債務超過でもOK)
(CFO野﨑氏)NASDAQについてはそういう検討も過去にはしていますが、ただ、債務超過というところの理由で判断をしたわけではございません。繰り返しになりますが、我々やはり開発資金が大きいので債務超過に昨年12月なりましたし、今後も引き続き収益ロスが大きく赤字が続く中で、そこをしっかりと回復させていく道のりというものも、決して、何かすぐに簡単に達成できるとかいうことではなくて、しっかり日々の売り上げ、それから開発のコントロール、こういうものが必要になってくることは事実だと思っております。ただし、しっかりここは東証にも我々の事業計画をご説明して、債務超過にならないような道筋というものをちゃんとご理解いただいているというのが現状でございます。
東証を選択した理由は、現時点で私ども株主様が国内海外いろいろな方がいらっしゃいますけれども、シリーズAという2017年に行った投資以降、もう6年ぐらいになりますが、比較的に日本のさまざまな企業様にご投資をいただいている中で、やはり一定程度この上場というものをしっかりと我々も約束をしてきましたので、その中で一番有力な選択肢といいますか、現時点では最適な選択肢が東京証券取引所様だったということでございます。将来的にNASDAQ上場とかそういうものがやはり我々の成長にとってプラスであれば、そういうものは決して検討から排除するものでございませんし、今後も、ぜひ鋭意検討していきたいと考えております。
Q19: 4月12日は1961年に人類初の宇宙飛行が行われた日だが。
特に我々が計画したわけではなく、たまたま。宇宙にとっても非常に重要な日にこのような次の、宇宙での商用化の道筋を開けるような上場を迎えることができたということは、我々にとっては非常にめぐり合わせのような、幸運だと思っております。こういった日に上場させていただいて、これから事業をやっていくわけですけれども、しっかりとこの日が宇宙業界にとって今後も重要な日になり続けるように、我々としては最善の努力をして事業拡大して、そして最終的には人間社会の次の未来をつくっていくことに貢献をしていきたいというふうに考えております。
――最後に閉会のあいさつを。
ispaceは人間が宇宙で生活圏を築けるような時代を作るという壮大なビジョンの下に事業を構築しようとしております。これからこの宇宙が大きく成長するということは多くの方々に理解をいただいていると思いますけれども、その成長の過程においてはさまざまな不確実性ですとか失敗などもやはり当然のことながら起きると思います。我々はそういった不確実性ですとか失敗を恐れずに、それらを次にしっかりと活用して事業を成長させていくというところを果敢に取り組んでいきたいと考えております。
先ほどもご説明しましたけれども10個のマイルストーンをしっかりと実現していく。そしてMission2とMission3を同時並行することでリスクを大きく下げていく。そして日本のみならずグローバルで事業拡大をしていくというような、しっかりと継続性のある基盤を実現してきているというふうに考えております。
上場して、これからは多くの株主の方々と綿密にコミュニケーションをしながら事業に取り組んでいきたいと思いますし、株主の皆様には一緒にシスルナの経済圏をつくっていくということにチャレンジしていただきたいと考えておりますので、これから末永くよろしくお願いいたします。