“いちばん企業取材をこなす”FMが登場 プロの思考・α発掘手法を共有せよ!!
リターン追求のために欠かせない企業取材をプロの投資家はどうやっているのか。著名投資家の井村俊哉氏(写真右)が三井住友DSアセットマネジメントで「いちばん多く企業取材をしている」と豪語する金子将大ファンドマネージャー(写真左)に聞いた。金子氏は日本株に厳選投資する「アクティブ元年・日本株ファンド」を4人チームで担当、全体で年間3,000件の取材をしているという。
――信じ難いことに、金子さんは多い時は1日に10件ほど取材をすると聞く。
1時間の取材と30分のアップデート取材を組み合わせて、場合によって午前8時から午後5時までノンストップでやる。近年はzoomで効率的な取材ができるようになった。
――下準備はどのように?
1,000社以上エクセルで管理していて、四半期決算を全部自分で入力し、気になるところをメモに書き出している。売上動向がどう変化したのかなどアップデート取材の候補先はここで抽出できる。
――金子さんの取材はダイレクトにアルファの獲得(市場平均を上回る利益)につながっているのか? 自分の感覚では全上場企業のうちアルファが多い銘柄は500~600社、その中でも濃度が濃い100社程度を深掘りする方が大きなアルファの獲得につながる。“手当たり次第”取材をすると時間効率が悪くなるのではないか?
そこは投資哲学の違いだ。とにかく取材をしていけば、企業単体の変化のみならず、業界で共通した課題や注目すべきテーマといった横のつながりが手に入る。こうして生の情報から自分が興味を持ったことを掘り下げていくなどしてネタをどんどん増やしていき、これが次の取材にもつながる。
――具体的にどんな話をしているのか。
私が多く手掛けているIPOの場合は、ある程度フォーマット化されている。まずは経営者のキャラクターや創業経緯などを聞き、次にビジネスモデルの詳細、営業手法などを聞く。あとは直近の業績動向の変化を聞き、最後は成長戦略。説明していただいた通りにうまくいくかを議論させていただくというのが一般的だ。初めての取材の時には経営者をよく見るようにしている。上場という経験したことのないプレッシャーの中で業務を無事にやり遂げられるかを見るために「過去につらい経験があったか、どう乗り越えたのか?」といったことも。
――アップデート取材ではどんなことを聞くのか。
基本的には業績がベース。直近の動向と次の四半期、通期予想に対してどんなことが想定されるかということと、最終的には成長戦略のアップデートをお願いする。取材中に「初めて聞いた」など面白いネタがあれば深掘りしていく。
――株価に与える影響は、今までと違う何らかの「変化があった時」だと思う。その変化を探るために必要なことは?
定量面は分かりやすく、四半期業績の自分の予想との差分。KPIに変化があれば突っ込むと「実は大口との取引が」といったことがあり、その時には「継続性はありますか?」といった点も確認する。
定性面は経営者レベルだと「会社で気になっていることや違和感はあるか?」とあえて聞くと答えてくれることがある。例えば「人は辞めてないか?採用はどうか?」と聞くと、「足りていないです」とか。人材面でいうと構成、年代別や、最近では女性管理職比率は聞くようにしている。また、顧客の動向を詳細な数字でなくて「定性的にどうですか」と聞くと、あれっ?と思うことを答えてくれることがある。