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インタビュー2023年7月6日

億り人Zeppy井村俊哉が聞く!!〈第10回・前編〉スパークスAM「華咲く中小型」奥村剛成ファンドマネージャー

中小型株こそ「高リターン」!!

α発掘の秘訣は「情報の選別」

著名投資家の井村俊哉氏が、日本株の凄腕ファンドマネージャーにα(アルファ、市場平均を上回る利益)発掘の秘訣を聞くシリーズ。今回は井村氏が「短期間でこれほど純資産が増えているファンドはない!!」と驚愕(きょうがく)するスパークス・アセット・マネジメント「スパークス・M&S・ジャパン・ファンド(愛称・華咲く中小型)」を運用する奥村剛成ファンドマネージャーと語り合った。

――主だった日本株のアクティブ投信を毎月ウオッチしているが、中でも「華咲く中小型」には注目している。月次レポートに書かれた運用状況や今後の方針などコメントが厚く読み応えがある。

コメントの読み手には個人投資家だけではなく海外機関投資家なども含まれており、想いを存分に込めている。なぜなら日本株、特に中小型株については言葉の壁があり、海外からはなかなか投資ができない領域。「華咲く中小型」には海外投資家からも資金を長期で預けていただいている。

――海外機関投資家から支持されている理由は?

中小型株はどちらかというとハイリスク・ハイリターンな投資商品と認識され、良い時に買ってパッと売るイメージがあるが、われわれの認識は逆。ボトムアップアプローチが効くぶん、むしろ大型株より長く持つほどリターンが出る。1年、2年うまくいかなくても、良い会社を安い時に買っておけば、大きく下がる局面でさらに下がることは少ない。下値が限定され上値余地が大きい効率的な投資商品といえる。

――「良い会社」発掘のために運用者として腕を磨く作業を何かしていれば教えていただきたい。

一つあるとすれば過度にニュースを入れ過ぎないこと。上っ面の情報、例えばコンセンサスといわれるものだったりで理解した気にならないよう、情報収集の際には目的を持つことを意識している。

――ヘッドラインの奥に潜む情報を意識的に取りに行くよう努めているということか。

例えば新聞に「設備投資が増える」という記事があると、これが実際に企業活動にどう反映するかはもちろん、人手不足で非正規雇用の需要が伸びそうだなど、本文にはない部分を先読みしている。

――足元は半導体やAIなどの物色が盛り上がり、テーマに乗らないと相場に付いていくのが難しいと思う。このような事象をどう捉えるか?

上司から言われたのは「上昇相場で無理に勝とうと思ってはいけない。うまく波に乗り続けられる自信があるならやればいいし、そうでなければやらなくていい」。バリエーションでは正当化できない水準で無理に合わせに行く必要はないと、自分の中で整理をつけている。

――むしろ、こういう相場だからこそ本来の投資哲学に立ち戻る、より強固にするという考えは、すごく共感できる。続いて「良い会社を安く買う」という戦略自体は、シンプルで理解しやすい。良い会社の定義を「独自の要因に基づいて継続的に成長できる企業」としているが、独自性、成長性、継続性を定量化しているのか?

定量化で一つ分かりやすいのは同業他社の売り上げや利益成長率との差異が出ているか。同じ業界に属しているのであれば一定の比較をする意味がある。独自性については定量化はなかなか難しいのだが、例えば通信工事会社のNECネッツエスアイ(1973・P)は近年、競合に先駆けてソフトウエアビジネスへの展開を進めている。既存事業である建設工事に加えてシステムも一体で提供しようと考えている。

――なるほど。独自の事業展開で競合と比べ利益率が向上しそうだ。

会社側はさほど固定費をかけることなく、クライアントに付加価値を提供する仕組みが構築できる。これは、過去から培った幅広い顧客基盤があってこそ。このような事業の拡張性こそが独自性と考えている。

――表面の数字のみならず、定性的に独自性と継続性を評価する、と。

営業利益率という観点では、単に高いか低いかではなく、なぜ高いのかを考えることが重要だ。あまりにも利益率や成長率が高過ぎると、それは持続的ではないものだったりする。

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運用方針や投資手法に続き、いよいよ銘柄選別について盛り上がったその内容は「後編」で。7月14付(金)に掲載予定です。

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