組み入れ銘柄を徹底的に深堀り
取材を重ねて会社の変化を見抜く
著名投資家の井村俊哉氏と、SBI岡三アセットマネジメント「中小型成長株オープン 愛称 スモール・モンスターズ・ジャパン(以下、スモモン)」を運用する高梨裕ポートフォリオマネージャーとの対談。後編では組み入れ上位の銘柄を個別に分析しつつ、化ける銘柄を見いだすノウハウを語ってもらった。
――「スモモン」の組み入れ銘柄は入れ替わりが激しいが、タムロン(7740・P)は組み入れ上位に居続け異質に見える。バリュー色も強いタムロン保有のストーリーは?
普通ではない、飛躍的な成長が期待できる会社には2つの局面があって、1つは新しい製品やサービスが世に出ることで、大きく伸びる若い会社のイメージ。もう1つは成熟期を迎えて業績が伸びにくくなっても、構造改革で利益率が再び改善していく会社。カメラレンズのタムロンは再成長に注目した。スマホの台頭で交換レンズの需要がなくなると懸念された時期があったが、ミラーレスカメラの浸透によってレンズ需要が拡大し始めた。
さらに2020年には国内工場のリストラを実施。コロナのまん延やスマホ台頭といった厳しい状況下でも、次の成長に向けた準備をしている姿が見えた。バリュエーションがかなり割安だった上、組織が筋肉質になり、かつ成長ストーリーが確認できたことで、中長期で保有してよいと判断した。
――株価が上昇した局面もあったが、一部売却したりしたか?
買う時にあらかじめターゲットプライスを設定するが、中小型株だと普通に2割、3割超えることがある。そんな時はあらためて会社に取材をお願いして、成長ストーリーに変化がないかを確認する。タムロンだと単純にカメラのレンズだけでなく、車載カメラや監視カメラ、医療向けなどにも成長分野を広げていると。売却する際の判断は株価の水準というよりは、決算でボラティリティが高まったタイミングが多い。
――長らく保有しているジャパンマテリアル(6055・P)は、いろいろなファンドが買っている。
ジャパンマテリアルには明確な成長ストーリーがある。地政学リスクの台頭で半導体工場が国内にも必要になる中、工場の保守・メンテナンスといったプロフェッショナル集団としての強みが発揮できるということ。
機関投資家が保有している理由はそれぞれだと思うが、定期的に取材を重ねていると社内にしっかりした見通しを持っている方が非常に多いことが分かる。厳選投資をしていく上では社長をはじめCFOとかIR(投資家向け広報)の方々が、どれだけ自分の会社のことをよく知っているかという点を重視している。
――直近IPO(新規上場)銘柄にも積極的だ。ロードショー(上場前会社説明会)にも参加される?
可能な限り出ている。年間で80社とか90社近くの企業が新規に上場しているが、受けられるものは全部といった感じ。FPパートナー(7388・G)はロードショーの際に社長の熱意を感じた。それから、ビジネスモデルは保険の代理店という形だが、提携しているパートナーによって安定的に集客できる強みもあるなと思って。
トランザクション・メディア・ネットワークス(5258・G)は会社への取材で上場前と後の姿に変化があるかどうかに注目している。具体的には、知名度の向上による営業力の強化などだ。また、中国などアジアのインバウンドの人たちの決済はデジタル化が進んでいるので、決済ビジネスの今後の可能性に期待が持てる。
――ビジョン(9416・P)の組み入れは、やはりリオープニングへの期待からか?
ビジョンはコロナで厳しかったWi―Fiレンタルの事業の回復に期待している。その上、無人の受取専用ロッカーを展開するなど固定費を削減する施策を打っており、需要がコロナ前に戻った時に利益が一層出る組織になっていると思う。リオープニング関連銘柄はそのあたりをよく見ている。
――最後に読者の方へメッセージをお願いします。
「スモモン」の受益者の皆さまには可能な限りリターンをお返ししたいという思いで運用している。ぜひともパフォーマンスに期待をして買っていただいて、長期で保有していただけるとありがたいです。