エコノミスト櫻井英明が注目する企業のトップにインタビューする本企画。今回はグラッドキューブ(9561・G)の金島弘樹代表取締役CEO。社名に込められた想いは「喜び(Glad)をカタチにする(Cube)」。蓄積されたノウハウと開発力を強みに大手・中小を問わず多くの企業のプロモーションサポートを行っている。最近も新たなビジネスが派生するなど進化を続ける同社に“未来像”を聞いた。
――目指しているのは「圧倒的No.1のデータ解析プラットフォーム会社」とのこと。
設立した2007年は、まだまだ「インターネットは怪しい」と思われている時代でした。何度も死線をくぐり抜けるような思いをしながら、むずかしいとされていた「インターネット広告事業」で市場を大きく上回る成長を続けてきました。現在は、インターネット広告事業を含めた「マーケティングソリューション事業」に加えて、広告だけでは解決できない課題に対応するため自社開発したウェブサイト解析・改善ツール「SiTest(サイテスト)」をはじめとする「SaaS事業」、AIによるスポーツ解析メディア「SPAIA(スパイア)」の3事業を展開しています。これからも長年培ってきたデジタルマーケティングによる解析と自社開発という強みを活かして成長していきます。
――「強み」を、もう少し具体的に。
積み上げ型の収益モデル(SaaS事業)ですし自社開発プロダクトですので、顧客目線での開発ができます。収益面においては、営業コストがかかりにくいインバウンド営業を実現しているため、類似業界の中でもトップクラスの営業利益率(※)を出していますし、市場分析による新サービスを展開して収益化させる経営力もあります。さらに、マーケティングソリューション事業のクライアントに、課題解決の具体策としてSaaS事業のプロダクト「SiTest」を提供するなど、事業間シナジーによる売り上げの相乗効果もあります。
――22年9月のIPO(新規上場)以降もドラスティックな変化を遂げているグラッドキューブさんですが、最近の目玉でもある「スポーツ」という新たな分野についてお聞かせ下さい。
「SPAIA」は全世界、全スポーツ、全リーグのビッグデータをAIで解析して、スポーツの新たな魅力を届けるメディアです。月に300~500程度のスポーツに関する記事を公開しています。プロ野球の勝敗をAIで予想するなど編集部が取材・編集したオリジナル記事は、中でも人気のあるコンテンツです。今までにない新しいスポーツの見方や楽しみ方を体験していただくために、“あったらうれしい”便利な分析機能などを続々開発中です。
――一歩進んでいるのが競馬AI予想解析メディア「SPAIA競馬」だ。
東京大学や京都大学の競馬サークルメンバーと連携して独自に開発した馬予想AIエンジン「KAIBA」を搭載しています。スポーツとAIは親和性が高く、連携することで多くの“未体験ゾーン”を実現することが可能です。既に欧米では選手ばかりではなく指導者がデータを分析して指導に活用しています。スポーツをAI経由で分析する姿勢は日本でも普及することでしょう。まずは当社の「SPAIA」がスポーツとAIを結び付け、競馬でも野球でも多くのスポーツで“分析を楽しむ”という新しい文化や価値を日本に根付かせたい。近い将来、世界のあらゆるスポーツデータを取り入れたデータセンターの構築を行い、海外展開やスポーツベッティング事業参入も視野に入れています。多くの人が新たな楽しみ方を知ったスポーツは、いずれ日本の経済の原動力となるでしょう。そんな最先端分野や未体験ゾーンをグラッドキューブは切り開いています。その先には健康などの分野にもこのビッグデータ分析システムが結合してフィールドはさらに大きく拡大すると確信しています。
※23年12月期第1四半期(1~3)時点の営業利益率は「SaaS事業」が66.6%、「マーケティングソリューション事業」が55.5%。会社側は両領域とも「(類似業界の中でも)当社の利益率が圧倒的に高い」と資料に記載している。
<会社概要>
企業名:グラッドキューブ
上場日:2022年9月28日
直近業績:23年12月期は売上高14億8,600万円(前期比0.4%増)、営業利益3億4,500万円(同25.2%減)を計画。前期実績の21.8%増収、58%増益からの足踏みは「成長投資」が理由。新規・既存サービスの拡充あるいは認知度向上のための宣伝費などで費用がかさむものの「準備は整った」(金島代表)。同社は「2030年までに売上高100億円」を掲げている。