積極的M&Aでストック基盤拡大
【事業内容/中小企業のIT領域を代行】
スターティアホールディングス(3393・P)は法人向けIT関連サービスを提供している、社会に“なくてはならない存在”だ。具体的には、コピー機や複合機のレンタル、ネットワーク構築・保守などに対応する「ITインフラ事業部」と、インターネットを使って売り上げを伸ばすための支援を行う「デジタルマーケティング事業」の2本柱を手掛けている。
特徴は「中小企業向け」であること。日本の企業の99%を占める中小企業では経営者の高齢化や従業員のITリテラシー不足などで、本来はデジタルで解決できる業務効率化が果たせずにいる。スターティアではITの力で、人がいなくても業務が回せるようにしたうえで、さらに“攻め”、営業担当者を5人、10人と雇う代わりにホームページで顧客管理や売り上げ促進を行う仕組みを提供することで、中小企業が高額なコストをかけずとも課題を解決して、大企業との情報格差を解消することを目指す。
なお、同社が手掛ける業務支援サービスを「マーケティングオートメーションツール」と言い、この領域では国内トップのシェアを持つ。例えば、名刺など連絡先から見込み客を見つける「BowNow」は1万3,000件超、日本経済新聞の紙面上でスマートフォンをかざすと映像や音楽が楽しめるといったAR(拡張現実)を提供する「COCOAR」は6,600件の導入実績がある。
【成長戦略/クロスセル&近距離で】
2005年12月20日のマザーズ上場から14年の東証1部変更を経て19年までの13年間で売上高が23億円から119億円へと急拡大したが、これは、同社の“勝ちパターン”をよく表している。中小企業に寄り添うべく全国に拠点を置き、今後も政令指定都市での出店を続ける構え。距離が近いクライアントに商品を2つ、3つとどんどん重ね売りをしていくことで単価を上げていくクロスセル戦略を展開する。加えて導入した商品は売り切りではなく保守やメンテナンスなどサポートが不可欠であり、同社の売上高の5割程度がストックによるものが占める。
M&Aにも積極的だ。今年8月には姫路の従業員20人程度のオフィス機器販売店を買収したが、今後も事業継承に悩む同業などをどんどん買収することで、拠点と人員、クライアントを効率的に拡大していくことがイメージされる。
【業績/利益体質への転換、鮮明】
24年3月期の第1四半期(1Q)は売上高が49億3,400万円(前年同期比6.5%増)、営業利益が6億3,400万円(同3.3倍)だった。通期では売上高202億円、営業利益20億円を想定しており、進捗は良好だ。
ちなみに1Qは過去最高額だった。1Qはこれまで赤字のことが多かった同社だが、近年は黒字に転じている。新卒を50~60人、収益貢献しない人材を採用するタイミングでの黒字化は、同社が利益体質に完全に転換したことを意味している。
前期までの3年間を投資フェーズと位置付けていた。BtoBではあるが、サービスの知名度を向上させるためのTVCMと、「デジタルマーケティング事業」の各種ツールの開発などに数十億円を投じていた。そして前期は期初計画で7億円としていた営業利益が17億円で着地している。
配当については今期より配当性向35%を掲げており、今期は47円、来期は59円を計画する。同社については売り上げが2倍、3倍に急増する可能性は高くないものの、いったん導入されたオフィス機器やサービスの解約は発生しづらく、かつ、契約商品は1つから2つ、3つと、徐々に拡大する傾向にあり、顧客もM&Aに伴って増加が続く。つまり、ストックが積み上がる当社の業績については急激な悪化は見込みづらく、長期目線での投資に向くと言えそうだ。
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本稿は9月6日に大阪で開催された個人投資家向け会社説明会における本郷秀之代表取締役社長の講演内容からポイントを抜粋したものです・数値など全てのデータは講演時点のものになります。