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IPO2023年11月2日

IPO社長会見 ドリーム・アーツ 非IT人材も使えるノーコード開発ツール

ドリーム・アーツ(4811・G)が10月27日、東証グロースに新規上場した。同社は大企業向けクラウド製品の企画・開発・販売を展開。初値は公開価格を12.9%上回る3,005円だった。上場当日の記者会見で山本孝昭代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

大企業に特化したSaaSクラウドベンダー……私たちは会計システムなど基幹システムと言われる部分ではなく、その周りの価値創造をしている領域(現場部門向けのシステム領域)を手掛けている。これはDX(デジタルトランスフォーメーション)の核心、戦略投資が急拡大中のエリアであり、まだ10年以上続くだろう。当社の特徴は、大企業の顧客とすごくいい関係を築いている点。顧客との関係性こそ資産であり、これがドリーム・アーツの強みと言える。

専門知識いらずで業務アプリを開発……当社の基幹製品であり、中期的に事業を引っ張っていく成長ドライバーとなるのが、大企業向けノーコード開発ツール「スマートDB」。“デジタルの民主化”をコンセプトに設計したもので、エクセルのマクロを組めるレベルであれば誰でもプログラミング無しでかなり複雑な業務までできる。活用範囲はMCSA(ミッションクリティカル周辺領域)から一般的な業務までと幅広い。MCSAでは、基幹システム周りには膨大な前さばきシステムがあり、通常はSIerが担う部分だが、ここをノーコードでいくことが可能。一般的な業務は文書管理から契約書管理、人事系の申請業務をはじめ、様々な分野に使われている。

ストック型の体質に転換……売上高は2018~21年にかけて停滞していたが、22年に大きく伸びた。これは純粋なサブスクリプション(継続購入)によるレベニュー(収益)が上がってきたため。全体のストックの割合が8割に対して、その中でもサブスクリプション型のレベニューが6割を超えてきている。これに伴い右肩下がりで落ちていた利益推移も大きく伸び、今日現在に至っては完全に体質を転換することに成功した。KPI(重要業績評価指標)は6つあり、これらが非常に好成績を収められたのでIPOをすることができた。特にスマートDBによるSaaSのARPA(1アカウント当たりの平均売り上げ)が150万円を超えている。さらにSaaSの売り上げ継続率も125%と高い。

市場規模は広大……受託開発市場は8兆円を超える。ここは伝統的にSIerがやっていた市場だが、彼らもかなりリソースが足りない状況。しかも既存システムのメンテナンスに膨大なエネルギー、時間、リソースが割かれている。一方で、昨今はコロナ禍を契機としたグローバルレベルでのサプライチェーンのリセット、製造業の国内回帰の動き、あるいは事業の再編など、大企業はやることがたくさんあり、そこには必ずデジタルが付帯する。ここを“デジタルの民主化”で埋めていこうということで、数千億円を超えるTAM(獲得できる可能性のある最大の市場規模)があると考えている。

アップセル・クロスセルで成長……成長戦略は「成長ドライバー スマートDBの拡販」、「クロスセルの強化」、「戦略パートナーの拡大」、「新サービスの投入」――の4つ。このうち「成長ドライバー スマートDBの拡販」、「クロスセルの強化」については足元で非常に力強く進んでおり、オーガニックな成長が見込める。中期的に見てポイントとなるのが「戦略パートナーの拡大」。これは旧来のツールベンダーがよくやる“販売チャネルの拡充”とは異なる。

資格制度を通じて市場開拓へ……われわれは大企業に対して役務提供型のオンボーディング(導入支援)サービスやコンサルティングサービスを提供している。これによって業務の適用範囲を広げ、業務深度の深いところで使ってもらうということを自社だけで実現している。しかし、このやり方を続けるとトップラインが上がるにしたがってリソースも増やしていかなければならず、高コスト体質から抜け出せなくなってしまう。そこで、こうした付帯的な役務をTier2、3(二次請け、三次請け)のSIerや、あるいはクラウドソーシングの会社にスマートDBの有資格者をオンラインで派遣するという事業を一部試行的に始めている。パートナー認定資格を制度化して広げていくことが中期的な戦略での核となる。(SS)

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