製造業向け人材派遣・業務請負の日総工産(旧6569・P)が持株会社体制へと移行して発足したNISSOホールディングス(9332・P)。的確な企業分析で人気の経済アナリスト・馬渕磨理子氏と清水竜一代表取締役社長との対談の【後編】では、仕事の業種をまたぐキャリア形成のためのノウハウ取得の道筋や、「熊本」、「宇宙」といったキーワードにも斬りこんでいく。
――製造業における労働市場のニーズにはどう応えていく。
最近よくリスキリング(職業能力の再開発、再教育)という言葉を耳にしますね。リスキリングとは企業の内部での話だと思うのですが、外部労働市場を手掛けるわれわれはキャリアチェンジと言った方がよい。キャリアチェンジを的確に行っていくことによって、国内労働力不足の一部を代替できるというのが一つの考え方だ。
われわれが本来もっとやりたいと思っているのは、これから2050年ぐらいに向けてどんどん人が減っていく過程で、人員が不足する領域に余剰になるかもしれない領域の方々をキャリアチェンジしていくこと。これが非常に重要なミッションだ。
――即戦力になる人材を育成するのが大事ということか。
実際に最近の転職状況を見ると意図しているかどうかは別として、キャリアチェンジ転職がものすごく増えてきている。恐らくそういったキャリアを有する方々が市場にいないので、採用する企業も覚悟を持って育成して使っていこうと思い始めているのではないか。
かつては新卒で入社して定年まで勤め上げるのが正しい働き方だと思われていたが、現在は一つの会社の中でもキャリアを何度も積み直す時代だ。ましてや転職ともなるとキャリアを作り直さなければならず、外部労働市場を担っているわれわれにとってはそうした新たなキャリアを作る育成の仕組みが非常に重要になってきている。
――半導体工場の集積地である熊本に教育施設を開設した。
われわれが特に力を入れている装置エンジニアは、実際に装置に触れることで現場に出た時にものすごい強みを発揮する。4月にオープンした国内9拠点目の「日総テクニカルセンター熊本」では基礎となる座学はもちろん、実装した半導体製造装置を分解したり組み立てたり、あるいは消耗品を取り換えたりといった作業をしてから現場に配属するので、お客さまの信頼性はもう全く違うものとなっている。
――堀江貴文氏が設立した宇宙ベンチャーにもエンジニアの出向をスタートしたとか?
「インターステラテクノロジズ」(北海道広尾郡)に研究開発エンジニアを出向させて勉強を始めたところだ。今まで自動車や航空機といった分野で活躍してきた方々が、今後キャリアチェンジしていく先であるというのが私なりの仮説だ。
宇宙産業には夢がある。堀江さんの話を聞く限りでは手を抜くわけにいかない。今は国策というレベルというところ。将来的に非常に可能性のある分野だと思うので、そこを目指す若い方がたくさん出てきたらうれしく思っている。
――新CMでは女優の黒島結菜さんを起用した。
実は黒島さんの最初のシリーズから、モノづくりの世界に革命を起こすといったイメージでスタートした。今回はもう少し踏み込んでモノづくりは日本の未来をつくっているということ、それからいろいろな国の方々が日本の製造業で活躍できたらうれしいとのメッセージを込めた。社員が必死で考えたCMであり褒めてあげたい。(NA)