今9月期は勝負の年
区分所有法・金商法改正でチャンス広がる
マリオン(3494・S)は「不動産賃貸業」と、保有する不動産の賃料を証券化して投資家に提供する「不動産証券化」が二本柱。地味な不動産事業者と思いきや、先行き注目材料を複数抱えているようだ。そこに相場の福の神、藤本誠之氏が同社の福田敬司代表取締役社長にズバッと斬り込む。
――ここは新宿区富久町の本社ビル。新宿駅からも近く非常にいい所にある。元はホテルだったとか。
「新宿区富久町で3代にわたり不動産賃貸業を行ってきた。ここは江戸時代は本陣。そこに先々代が『ホテル本陣』を開き、旅館業を手掛けていた。この近くに持つマンション兼ビルも元は脇本陣」
――この土地は価格としてはすごい資産になりそうですね。
「先々代が昭和の初めごろから持っていますから相当なんですが、ただ、ホテル本陣をつくる時、先々代は借金が大嫌いな人で、上部のある部分を等価交換のために売った。だけどわれわれもここで長年やっておりまして、このビル(ハイホーム本陣)も40年を過ぎましたので、建て替えなければいけないというところに、区分所有法などの改正案が来年の通常国会に提出される予定。改正案が通れば建て替えがしやすくなりチャンスとなる」
――現在14階建て。建て替えの構想としてはどれぐらいまで。
「図面が新宿区に出されておりますが、高さ制限もありまして41階になる見通し」
「東京は人口の流入の方が多く、居住用は良好。建物の下は当社が使うが、上は地方自治体さんの宿舎とすると47都道府県中、通勤圏の首都圏を除くと、41階建てならば各フロアが1都道府県ずつになる。これは勝手な構想だが」
――現状でも14階建てのこのビルの7割が東京に来られる地方自治体職員の宿舎として使用されている。地方自治体は大家さんから見ればとりっぱぐれのない良い店子さんともいえそうだ。
「ある自治体さんは予算が通るとすぐに1年分払ってくれる。時代に合うビルを建て、各都道府県に出資いただき証券化したものを買ってもらうという構想も」
「二匹目のどじょうを狙ったわけではないが、東北地方の盛岡駅につながる高層ビルが建てられる不動産も持つ。今はゲームセンターにお貸ししている」
――不動産証券化の将来ビジョン。
「『マリオンボンド』『サラリーマンボンド』『i-Bond』と進化してきたが、今秋の臨時国会で改正金商法が通ると、i―Bond(不動産特定共同事業法による集団投資スキーム)が等分化、受益証券化し証券会社が扱える有価証券になる。i-Bond単体で累計80億円販売した。i-Bondはオープンエンドでいつでも解約して資金化でき、追加型でボリュームを増やせるという特徴がある。1口1万円からで資金化まで5日いただいている」
――例えば10口、10万円投資。3口解約したら、5日後に3万円が振り込まれることになる。利回りも気になる。
「金利は1.5%とほかの投資商品と比べると低い」
――1.5%でも普通預金などに比べ高い。
「金利が付く世界に変わりつつあり、物価も賃金も上がってくる。賃金が上がれば支払い能力が高まり、賃貸料も上がっていく。居住用不動産は賃金上昇に比例して賃貸料も上がり、インフレに強い商品といえる」
――中期計画には建て替えは確定していないため織り込んでいない。法改正されればアップサイドは広がりますね。
「アップサイドはまだまだある」
――現在、スタンダード基準のうち流通時価総額が未達です。
「今ある材料を駆使しながら株価を上げる。前2023年9月期決算は11月にリリースする。今期は勝負の年。i―Bondも臨時国会通過後、販売が広がろう。証券会社の皆さまに売っていただけるような商品にしたい。これも株価対策になっていこう」
――今後のマリオンに期待がもてそうです。
「安定した賃貸収入がベースにあり、増加関数は今はi-Bondという商品。将来的には当社の持つ不動産から生み出すサービスによって社会インフラを構築していきたい」