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銘柄・相場情報2024年2月8日

企業研究 アステナホールディングス 能登半島地震の復興に注力

物資供給、人材支援、投資…

正月に発生した能登半島地震は200人以上の死者を出し、1万人以上が避難したままなど、石川県、富山県などの被災地は大きな打撃を受けている。被害の大きかった石川県珠洲市に拠点を持ち、地域復興のため力を尽くしているアステナHD(8095・P)。医薬品卸が本業だが、地元でサステナブルな地域社会を共創するソーシャルインパクト事業に取り組み、人材支援や投資などで中長期的な支援活動を行っていく。

1914年に薬種問屋として東京・日本橋で創業。戦後、化学品や食品原料も取り扱う「イワキ」と改称し、63年に東証2部へ上場。近年ではM&Aを積極的に展開し、2021年にアステナHDに名称変更し、持ち株会社体制をスタートした。

今11月期は売上高560億円(前期比7.7%増)、営業利益11億5,000万円(同2%増)と2年連続の増収増益を計画。ファインケミカル事業のうち、CDMO(開発・製造受託)部門は着実に回復。複数プロジェクトのグループ内協働が順調に進んでいる。医薬品原料部門も年間を通じて好調。開発新薬の中間体のプロモーションや競争力の高い輸入原薬の販売に取り組む。

HBC(Health & Beauty Care)・食品事業は健康意識の高まりで機能性食品原料の取引需要が高まった。化粧品も新型コロナ禍後の正常化に伴い、国内市場が回復。通販も堅調に推移している。医薬事業は21年12月に発売したルリコナゾール軟膏クリームが好調。皮膚外用剤ジェネリックナンバーワンメーカーとして活躍している。

化学品事業は22年中盤からエレクトロニクス業界の低迷の影響で、表面処理薬品などが厳しかったが、半導体の大幅な回復や自動運転技術の電子制御化に車載基盤の拡大が想定される。前期に大きな値上げをしたことや製品の統廃合で効率を上げた効果が浸透することが期待される。

こうした伝統的な事業に加えて、新規事業として珠洲市に本社機能の一部を起こしてSDGs(持続可能な開発目標)に取り組みだしたのが21年の持ち株会社移行の時のこと。子会社のアステナミネルヴァを設立。ヘルスケア、循環型農業、地域に必要な人材事業やふるさと納税事業を進めていく。この先数年、コアとして位置付けているのは奥能登の自然資源、伝統技術を活かしたナチュラルヘルスケアブランドだ。効能に検証を重ね、品質と効果に自信があるという。このほか循環型農業として、地元事業者、自治体と連携して有機米の栽培や無農薬の酒米を使った日本酒などグリーン農業にも取り組んでいる。販路は海外も視野に入れ、農業の振興を図っていく。

社名のアステナも「明日」と「サステナブル」の造語。創業間もない1923年の関東大震災の際、東京の医薬品相場が高騰したにもかかわらず。創業者の岩城市太郎が定価販売を継続し、顧客から高い評価を受けたことから、社の基本心情として「誠実」「信用」「貢献」を掲げてきた。その延長上にある。

今回の能登半島地震では、珠洲市の倉庫からEC(電子商取引)商品の発送ができなくなったほか、1月中旬から2月頭にリリース予定していたナチュラルヘルスケアブランドのリリースが後ずれするなど被害を受けたにもかかわらず、保管していた災害備蓄品を被災者向けに活用。水や燃料不足の地域に緊急物資を提供し、支援に必要な作業場所やパソコン、スマートフォンなどの通信機器も支援した。また、人材事業として地元の求人メディア「イシカワズカン」を手掛けており、この企業ネットワークが地震対応で貢献した。

さらに、グループ会社の「奥能登SDGs投資事業有限責任組合」(能登SDGsファンド)が義援金口座を開設。さらにファンドを通じた地元企業への投資で、復興を超えた中長期的な価値を出す事業者に支援をしていく。また、珠洲オフィスを新しい地域づくりに向け、同じ思いを持つ他社も含めた拠点にする方針。

今月末には瀬戸口智副社長が創業家以外では初の社長に就任する予定。