コミュニケーションのDX化サービス「カイクラ」を提供するシンカ(149A)が3月27日、東証グロース市場に上場した。初値は公開価格1,320円を26.6%上回る1,671円と好調なスタートを切った。江尻高宏社長(写真)は当日の会見で、同社の概況や成長戦略について以下のように語った。
各方面の満足度が向上……「カイクラ」は固定電話、携帯電話やメール、SMSなど企業活動で発生する様々なコミュニケーションをDX化し一元管理できるサービス。ユーザーはオフィスや店舗への電話など、顧客との一連のコミュニケーションを自動で記録・整理でき、着信時にはパソコンやタブレットに顧客情報を自動でポップアップ、電話に出る前に顧客名が分かる仕組み。導入後は顧客検索などの手間が減り、電話対応業務の時間、顧客対応にかかっていた時間の削減などの効率化が実現できる。その結果として顧客満足度、業務に当たる従業員の満足度向上につながっている。「カイクラ」は「会話をクラウドでおもしろく!」をコンセプトとしている。
料金体系にも工夫……カイクラのライセンスは拠点単位で、1拠点で何人が使っても料金が変わらないシステム。オフィスや店舗に所属する全員で利用できるため、導入の効果が出やすい。標準プランにはメール連携や音声テキスト化と生成AIによる要約などが標準で装備されている。主要顧客は自動車ディーラー、医療・介護業界、不動産業界で、9割以上がBtoCビジネスだ。
市場規模は5,900億円……カイクラのニーズがあると考えられる最大の市場規模(SAM)は5,900億円(2023年12月時点)あるとみている。現在の販売経路は直販が50%、NTTグループ、地銀、大塚商会などの販売パートナー経由が47%ほど。一部でOEM(相手先ブランドによる製造)供給も行っている。当社のサービスが選ばれる理由は、ビジネスの現場において電話(固定、携帯)がコミュニケーションの中心的なツールであるためだ。これらを自動記録・自動整理して一元管理できるため、顧客とのトラブルにありがちな「言った、言わない」の問題、クレーマーへ対応や準備などにも役立っている。
成長戦略……成長戦略の柱は有料オプションの追加、従量課金の使用料増加、過去のデータを利用したレコメンド機能などで単価を上げること。さらに、販売戦略を強化してサービスを導入する拠点数を増やす。現在は自動車向けに力を入れており、国内ディーラーの約10%を獲得した。また、自動車で得たノウハウを不動産業界向けに生かすため専門部隊を創設、加えて医療業界も開拓を進める。業績は23年12月期に黒字転換、売上高は右肩上がり伸びており、24年12月期は13億円台を見込む。今後10年くらいは売上高で年30~35%程度の成長を目指したい。
記者の目
何かととっつきにくいイメージのある〝DX〟だが、同社のコミュニケーションDXは投資家にもユーザーにも導入の効果や仕組みが理解しやすい。既上場、未上場企業に完全に業態がかぶる競合企業はなく、独自のサービスで市場を開拓する余地は大きそうだ。年30~35%程度の売上成長は可能と思われる。(M)