数多く寄せられた株主提案のなかでも、「可決成立となる可能性十分」として関心を集めているのがITbookHD(1447・G)。昨年に続いての議案提出となるが、昨年の場合、6人の取締役選任議案賛成率が37.47~37.69%に達していた。そして、「ITbookの企業価値向上を目指す株主の会」代表として株主提案を行ったのが、2009~21年に同社で代表取締役を務めた恩田饒氏(写真)だ。
今でこそ、今年度中だけで①子会社従業員による横領事件②有価証券報告書の提出遅れ③監査法人退任④東証による改善報告書提出請求と公表措置実施、さらには⑤金融庁による課徴金1億929万円納付命令――など“不祥事のデパート”と化してしまったITbookだが、かつて売上高80倍、時価総額100倍を実現したピカピカの高成長企業だった頃に同社を率いたのが恩田氏だ。高い賛成票を集めながらも可決には至らなかった昨年の“敗因”について、株主宛ての手紙を出すタイミングが遅れたことを挙げる。実際、電話やメールの問い合わせ窓口に寄せられた声には「既に会社側への委任状を送ってまった」「もう少し早ければ…」といったものも少なくなかったとか。
今年の提案は、自身を含む7名の取締役選任。昨年より1人増えるのは、元日本IBM副社長であり、孫正義氏に請われてナスダック・ジャパン・プランニング会長にも就いたことのある佐伯達之氏だ。2年前にもITbookの社外取締役に就任したが、「ガバナンス、コンプライアンスに疑問」を持ち1年で退社したとされる。“大物”参戦で、より注目を集めることになりそう。
恩田氏といえば、大和証券常務や証券団体協議会常任委員長を歴任するなど証券界との関わりが深い。「おかしな経営の企業が上場しているのは良くない。私利私欲ではなく、株式市場の健全な発展のためにも正していくことが“最後のお勤め”」などと話していた。(K)