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トップ記事2024年9月11日

大量保有報告書から読み解く 史上最大の下げ相場で海外勢は何を買ったか

ブラックロック、キャピタルなど

日本市場は8月初頭、史上最大の下げ相場を経験した。その後自律反発に向いたが買い一巡後は不安定な相場となっている。こうした状況下、海外機関投資家はどのような銘柄を買い付けたのか、大量保有報告書から探ってみた。

大量保有報告書で取得が判明した主な銘柄(8/1以降報告義務発生分)
銘柄(コード) 保有割合 増加率
<ブラックロック・グループ>
9/4 ルネサスエレク(6723・P) 6.77 0.08
日本都市ファンド(8953) 7.70 0.02
SUMCO(3436・P) 6.75 0.72
8/20 浜松ホトニクス(6965・P) 6.20 0.01
三菱地所物流リート(3481) 6.93 0.14
ラサールロジポート(3466) 6.64 0.26
<キャピタル・グループ>
9/6 寿スピリッツ(2222・P) 9.42 1.45
A&Dホロン(7745・P) 6.41 1.05
朝日インテック(7747・P) 9.68 1.02
8/30 KOKUSAI(6525・P) 10.32 1.68
8/22 リクルートHD(6098・P) 5.21
日本テレビ(9404・P) 5.01
<フィデリティ・グループ>
9/6 KeePer技研(6036・P) 7.04 1.25
<ベイリー・ギフォード・アンド・カンパニー>
8/22 Appier Group(4180・P) 6.48
<アーカス・インベストメント>
9/9 日本ケミコン(6997・P) 5.08
<3Dインベストメント・パートナーズ・プライベート・リミテッド>
9/3 東邦HD(8129・P) 16.40 1.14
8/26 日鉄ソリューションズ(2327・P) 5.00
8/22 東邦HD(8129・P) 15.26 1.13
8/16 富士ソフト(9749・P) 22.01 0.56
東邦HD(8129・P) 14.13 1.03
8/14 東邦HD(8129・P) 13.10 1.31
8/9 東邦HD(8129・P) 11.79 1.21
<オアシス マネジメント カンパニー リミテッド>
9/6 セーレン(3569・P) 6.28
日本ゼオン(4205・P) 6.29
8/7 デジタルガレージ(4819・P) 15.42 2.92
<アセット・バリュー・インベスターズ>
8/21 シェアリングテクノロジー(3989・G) 5.20
8/8 アツギ(3529・S) 5.76
※日付は財務局受付日

表は、8月7日以降に財務局に提出された大量保有報告書で取得が判明した主な銘柄一覧。そのほとんどが急落第一波の8月2日以降に報告義務発生日が到来している。

世界最大の運用会社、ブラックロックは、車載マイコン世界首位級のルネサスエレクトロニクス(6723・P)、半導体関連のSUMCO(3436・P)浜松ホトニクス(6965・P)、物流施設特化型リートのラサールロジポート(3466)三菱地所物流リート(3481)を買い増しした。

ルネサスは新規取得を報告した2023年11月以降、一貫して買い増しスタンス。今夏は8月5日付(報告義務発生日は7月31日)でも買い増しを報告していた。同社株は7月25日ザラバ発表の今12月期上期業績がさえず、25日から相場崩落→8月初頭に一段安に沈んだが、そうした局面で買い向かった格好だ。物流系リートの取得報告は2社ともに今年に入り、2月、3月に続いて3度目になる。足元の分配金利回りはいずれも5%と高い。

米投資顧問のキャピタル・グループは、インバウンド関連の寿スピリッツ(2222・P)、半導体関連のA&Dホロン(7745・P)KOKUSAI(6525・P)、医療器具の朝日インテック(7747・P)を買い増し。また、グローバル成長株のリクルートHD(6098・P)と、スタジオジブリ連結化でコンテンツ保有企業として注目度が高まり、株主還元期待も強い日本テレビHD(9404・P)を5%超に引き上げと、内需外需バランス良く取得した。

朝日インテックについては、昨年7月に再び5%超に引き上げてから8、9、12月と買い増しを報告。その後は鳴りを潜めていたが、タイミング的に8月初頭の大幅安を見て買い出動したと考えられる。また、同グループによるテレビ株の取得報告は14年7月のフジ・メディア(4676・P)以来、実に10年ぶり。機関投資家による日本テレビ株の取得報告としても、20年4月の英マラソン・アセット以来4年ぶりのことであり、同社株の今後の動向が注目される。

英運用会社のアーカスは、アルミ電解コンデンサー世界シェア首位の日本ケミコン(6997・P)の新規取得を報告した。同社による新規買い付け報告は、17年2月の大末建設(1814・P)以来、7年7カ月ぶり。相場崩落によって買い意欲が刺激され、久方ぶり大量取得に踏み切る機関投資家が現れたことが確認された形だ。

むろん、アクティビストの目にも急落場面は格好の買い場と映ったようで積極果敢に取得。シンガポールの投資顧問、3Dインベストメントは医薬卸の東邦HD(8129・P)買いを加速させた。かねて毎日のように買い付けてきたが(日によって異なるがおおむね1日当たり10万~20万株程度を買い付け)、急落第1弾の8月2日に25万株弱、第2弾の5日は35万株程度、6日に至っては65万株に及び、保有割合は16.4%に上昇した。(Q)