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インタビュー2024年10月10日

ウェルスナビ・牛山史朗執行役員(中) 長期積立分散投資こそが王道

投資に踏み出せない人や初心者はどのように投資へ向き合えばいいのか。ロボットアドバイザー最大手・ウェルスナビ(7342・G)の牛山史朗執行役員に話を聞く中編。金融庁をはじめ、長期積立分散投資が推奨される理由について、分かりやすく解説する。

――投資をいざ始める人へのアドバイスをいただきたい。

牛山氏 投資にはいろいろな方法があり、最初にどこから入るかは重要だ。日本でこれまで投資に良いイメージは持たれにくかった一因は、FX(外国為替証拠金取引)などリスクの高いものが目立ち、初心者が損をして投資は怖いと敬遠してしまったことが挙げられる。

自分の持っているおカネが運が良ければ2倍になり、悪ければゼロになっても良いというのならばリスクの高い投資も選択肢に入れていい。だが、自分の老後を支える大切なおカネならば、守りを意識しながらしっかり育てていくことが大事。個人が最初に行うのは王道の長期積立分散投資が良い。

――なぜ王道なのか。

牛山氏 資産運用でおカネが増える原動力がある。長期積立分散が王道と呼ばれるゆえんは、リターンを生み出す源泉が、日々世界中で経済活動を繰り返す中で生まれる利益だから。投資は安く買って高く売るイメージがあるが、それは短期売買で、世界の経済が生み出す利益の一部を得るという考え方とは別のもの。値上がりする銘柄を当てようと世界中のプロがいろいろやっているなか、投資初心者が勝ち続けるのは難しい。そうではなく、世界経済が大きくなることに資金を投じれば、関わった人みんなが利益を得ることもできる。

短期では相場の波があり、一つの会社だけに投資すると、そこの調子が悪くなったら大きな損失が出る恐れがある。世界全体に分散して、長期で世界経済が生み出すリターンを取るということが基本だ。

時間を味方につけるともいえるが、時間をかければかけるほど複利の効果を発揮する。また、積立投資を続けることで元本が積み上がる。同じリターンの割合であっても、投資した金額の規模により、利益の規模は大きく変わる。

――積み立てより一括が良いとの意見も聞くが。

Refinitivのデータに基づきWealthNaviにて作成 ・当該シミュレーションは過去データに基づき計算されたものであり、将来の運用成果等について示唆・保証するものではありません。

牛山氏 積み立てにも幾つかのパターンがある。1つは働いている人が自分の毎月の収入の一部を投資に回すもの。もう一つは、手元にまとまった金額がある場合、一括で投資せずにタイミングを何回かに分けて投資する方法だ。前者は給料が入るたびに投資をすれば自然と積み立てとなる。

後者は一度に投資して、直後に急落すると一気に目減りすることもあるため、それで資産運用が続けなくなるなら分けて投資したほうが良いという考え方だ。

――分散はどこまでするのか。株式だけで良いのか。

牛山氏 最近、SNS(交流サイト)を含めて、株式投信を一つ持てば安心という意見がある。それでよい人もいるが、リスクが高いと思う人もいるだろう。株式投信だけでは、7、8月のような大きな相場変動があった時に、一気に資産が目減りする。それに対してウェルスナビの分散投資もそうだが、金、債券、不動産といった別の資産を入れることで、リスクを抑えられた。株は大きくマイナスになったが、他の資産はドルベースではプラスになるものもあった。

若い人はこれから働いて得られる収入のウエイトが多いので、リスクを取ることができる。小額から始めて投資に慣れていくプロセスで株だけの投信を試しにやるというのはありだと思う。一方、投資する金額が大きくなると、株だけに投資することはリスクを取り過ぎている可能性が高い。また、退職が近い人や既に退職した人は、資産が大きく目減りすると老後の生活を脅かし、心理的負担が大きい。そういう人は株以外の資産を混ぜることで、リスクを抑えることが重要。一人一人のリスク許容度に合わせて運用する中で、株以外の資産を組み合わせることは非常に有効だと思う。

◆牛山史朗氏
京都大学大学院で金融工学を専攻。三菱UFJ信託銀行、野村証券を経て2015年12月にウェルスナビ参画。アルゴリズム開発などを手掛けている。

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