日水コン(261A)が16日、スタンダードに新規上場した。水道、下水道を中心とした水に関する事業に特化した建設コンサルティング事業者。初値は公開価格を6.2%下回る1,341円。上場当日の記者会見で、間山一典代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
事業そのものにも関わる……設立は1959年。水道、下水道の普及整備のために設計をする会社として設立された。設計は創業当初からのコア業務だが、現在上流側の調査・計画、下流側の維持管理についても領域を広めており、事業全般に関わっているのが当社の強み。最近は宮城県のコンセッション事業(施設所有権は自治体、運営権を民間)、秋田県の官民出資会社にも参画しており、事業への関わりも始めた。 水道、下水道に加えて河川部門を持っているのも特徴。これまで65年、水道、下水道の普及整備のほか、数々の技術的相談に応じて、様々な技術者を確保している。技術力とこれまで培った官からの信頼が強み。
付帯事業へも挑戦……水道、下水道は普及整備から、今後は事業の維持が求められる。高度成長に整備した施設管路が大量更新の時代を迎える。正月の能登半島地震でも水道・下水道の耐震化や更新の遅れが指摘されている。今後、人、モノ、カネが制約されるなか、従来型の事業手法では限界がある。広域化、施設の再構築、官民連携といった手法自体の工夫が求められる。われわれは今後、事業そのものへの関わりを深めたい。さらに、下水道については汚泥の肥料化など資源への活用も期待され、付帯事業にも挑戦した。そのためには多様な人材の確保、地域、ステークホルダーからの信用が不可欠で、上場に踏み切った。人材獲得競争はますます激化する。これまで官に対する知名度は高いと自負しているが、一般の方はやはり知らない。今後は付帯事業に関わり、水道、下水道だけで持続可能な時代ではない。異業種の人に来てもらうためには、上場が必要条件の一つと考えた。
流域治水へも対応……河川部門を持っている総合力もこれから生きてくる。最近はゲリラ豪雨など雨の降り方が変わり、従来、雨対策は河川と下水を分けていたが、一体で考える流域治水が言われる。当社は河川部門も下水部門もあり、一体で水管理をサポートできるのは強み。流域治水はまだPPP(官民連携)までは早いが、当社は内水(堤防の中)、外水(堤防の外の河川)を一体的にシミュレーションできる技術がある。雨が降った時に下水にどう水が流れて、河川流量がどうなるか、さらに衛星画像のデータを取得し、本格的な現象解析ができる。ゆくゆくPPPをやる際には技術的なアドバンテージ、付加価値につながっていく。
親引け各社とはJVも……(親引けに応じた栗本鐵工所=5602・Pなどは)通常のコンサル業務で関係を持つことはないが、今後、PPPの民間側で、一緒にコンソーシアムを組むことはあると思う。栗本鐵工所とは北海道の半導体工場で大量の水を使うため早く手当てをしなければならないので、JV(ジョイントベンチャー)を組み、設計施工一体型の工事をしている。今回、親引けに応じていただいた企業は、今後官民連携の中でシナジー(相乗効果)を考えていただいていると思っている。
海外でも地域に根差す……海外市場はこれまでODA(政府開発援助)案件を中心にやってきて、これらからもやるが、中期経営計画の柱の一つに「地域に根差す」がある。海外でも地域に根差そうとフィリピン、シンガポール、インドネシアに拠点を置き、地域と話し始めたところ。経済成長に伴い排水処理の規制が高度化されるだろう。かつて日本の高度経済成長期に水質汚濁が問題となった。われわれのノウハウを海外でも活用できないかと思っている。ただ、海外事業の割合はかなり小さく、中長期の将来に向けての取り組み。(HS)