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IPO2024年10月28日

IPO社長会見 リガク・HD X線技術の世界的企業

リガク・HD(268A)が10月25日、プライムに新規上場した。X線技術などを用いた理科学機器の製造・販売を手掛け、X線解析装置の国内シェアは75%に上る。初値は公開価格を4.3%下回る1,205円。上場当日の記者会見で、川上潤代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

海外売上比率が70%……当社はX線技術を用いて、世界の科学技術の進歩に貢献している。1951年設立で、73年の歴史があり、X線関係の特許などは世界有数。国内外の拠点は26拠点で、売上構成は日本以外が70%とグローバルな事業展開をしている。製品、ソリューションは大半がX線の技術を使った分析計測装置。例えば、X線の回折技術を使ってモノの形状を測る装置、ソリューション。蛍光という特性を利用して物質の同定を行う蛍光X線分析装置。皆さんよく接していると思うが、画像にして形状などを理解するX線のイメージング装置。これまで、研究開発用に主に使われてきたが、近年、産業での利用に広がってきている。

はやぶさ2でも活躍……半導体のX線計測装置は弊社の現在の成長エンジン。半導体の製造プロセスで様々なデータを取り、膜の厚さ、サイズ、形状などを測ることで正しく動いているか、フィードバックする。また、R&D(研究開発)用では「はやぶさ2」が(小惑星)リュウグウから持ってきた試料が何なのか科学的に分析するなど最先端の研究開発分野で実績を残している。さらに、最近溶液中の生体高分子の構造を直接観察可能な画期的な技術を上市した。ライフサイエンス、バイオ医薬の研究開発に使われていく。今後、新しい領域になると思う。

要素技術の垂直統合が強み……なぜ競争力があるのかというと、グローバルな市場でX線の要素技術を垂直統合して持っているのはリガクだけだから。X線の発生装置、光学素子、ステージ/ゴニオメーター、X線の検出器といった要素技術を自社で開発、製造している。グローバルで競合相手がいくつかあるが、ここまで垂直統合をしていない。われわれは世界で一番のX線の発生装置、最高の輝度を持つX線の発生装置を持っており、X線に最大限の付加価値を付ける。こういったことを70年間絶え間なくやっていることが競争力の源泉。

半導体領域で成功……戦略の大きな柱として「Lab to Fab」(ラボ トゥー ファブ)がある。研究開発、ラボの領域でX線技術を使って高度な分析、計測をする。これで生まれたイノベーションを産業の製造工程に持って行く。ラボでイノベーションを作り、その技術でファブ=モノづくりに入る。これが一番成功しているのが半導体領域。われわれのX線技術を使って微細なあるいは多層構造の半導体をまず開発。その後、製造プロセスでも同様に、当社のX線技術を使いながら健全性をコントロールする。この展開が半導体で非常に成功しており、その他の市場でもやっていこうと考えている。

バランスの取れたポートフォリオ……過去数年間、「Lab to Fab」を原動力に売上高は年率20%近い成長率。さらに、EBITDAマージン(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益を売上高で割った比率)も25%と高く、成長しながら利益率を上げている。売り上げは3つの領域に分かれ、1つは多目的分析機器。これは企業やアカデミアが研究開発目的で使う機器。この領域(の売上高比率)が45%。それからコアなX線技術を使って製造プロセスに発展していった半導体プロセスコントロールが21%、部品サービスが34%となっている。非常にバランスの取れたポートフォリオだ。エンドマーケット別では、半導体および電子部品で33%、ライフサイエンスで7%、その他は非常に広い産業分野で、金属、電池、石油化学、セラミック、セキュリティなどで22%、さらに研究機関24%、サービス14%といった形。

「Lab to Fab」で成長へ……中長期的には3本柱の戦略で約10%の売上高成長率、20%台後半の調整後EBITDAマージンを目指す。1本目が基盤戦略の強化。強固なX線技術による多目的の分析機器で、多様なニーズを引き続き取り込む。2番目は半導体領域の「Lab to Fab」の推進。半導体が微細化、多層化、多材化するにつれ、これまで光学テクノロジーでやったことをX線でやる流れがきている。半導体プロセスコントロール機器のビジネスは営業利益率が高く、全体の利益率を上げる。3本目は新たな成長機会の開拓。「Lab to Fab」を次世代半導体、バッテリー、ライフサイエンスなどでも行う。(次世代の)SiC半導体の分野では今年行っている。継続的なX線要素技術へのR&D投資、生産キャパシティの拡充、倍増するため、現在山梨工場を増設している。

玄人受けする銘柄……(初値が公開価格割れしたが)株価は市場からの評価なので、それを受け止めてしっかり事業をしていく。われわれはどちらかというと玄人受けする銘柄だと思っているので、長期で見ていくのが正しいと思っている。(HS)

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