ミラタップ(3187・G)はインターネットを通じて住設機器、建材などを販売する。10月1日から社名を「miratap(ミラタップ)」(旧社名はサンワカンパニー)に変更した。社名変更に込めた思い、経営理念、中期的な展望について山根太郎社長(写真)に聞いた。
――まずビジネスモデルについて。
デザイン性の高いオリジナルの住宅設備、建材をインターネットで販売しています。特徴はディスラプションという流通のイノベーションモデルにあります。仕入先は大手と同じ工場ですが、彼らは仕入れにも販売にもいくつもの商社、代理店などが入る多重流通構造になっています。一方、我々は彼らと同じ工場から直接仕入れて、それをインターネット上で工務店さんにも施主さんにも同じ価格で販売するワンプライス制を導入してビジネスを行っています。中間コストを大きくカットでき、安くできます。
――ショールームの展開に力を入れています。位置づけ、戦略について。
インターネット通信販売業界では20万円の壁ということが言われます。単価がこの水準を超えると実物を確認したいという需要が急増します。キッチン、風呂などは20万円を超えますので、現物を確認する場所として、物理的等間隔にショールームを設置しています。ショールームの来客単価はネット完結のお客さまの4倍になるという社内データがあるほか、来場をきっかけに、こんな素敵な洗面ボウル、ドアがあるのかというようなクロスセル、アップセルが生まれる場所という役割もあります。東京エリアでは、先般、横浜に完全無人で運営するスマートショールームをオープンしましたが、経済規模でいうと千葉、埼玉、物理的等間隔でいうと、北陸、中国、四国、南九州、沖縄も空白地帯となっており、これらが今後のショールーム開設の候補地になります。
――建材、住設機器の知識を持った人材、EC(電子商取引)やWEBマーケティングなどの知識を持ったデジタル人材の両方が必要ですね。
建材、設備に関して詳しい人というのは同業他社からの転職、研修で育成していますが、建材に詳しい人とECに詳しい人という2軸ができてしまいます。それをしっかりと融和させていくのが新卒だと考え、2017年から新卒採用を始めました。新卒は研修でほとんど全ての部署を回り、3年ごとのジョブローテーションで管理、営業、企画などを経験します。僕も含めて、やっぱり中途採用は前職の文化、前例を踏襲してしまうというところがあります。そこに対してフラットな目線で、新卒が複数の部署を回ったうえで、これっておかしいよね、ミラタップとしてはこうすべきだというような意見を出し、役職が上がってそれが少しずつ浸透するようになり、当社独自の文化やマーケティング手法ができてきました。ひとつ例を挙げると、この業界で初めてインスタライブで接客、新商品の発表会を始めました。それはデジタルネイティブの新卒が育ってきて、彼ら独自の新しいアプローチの提案などによって始まったものです。AIも導入済みです。例えば、お客さまの過去の検索履歴から自動でページを生成して表示するシステムなどですが、これも業界で一番に始めました。
――社名変更の経緯、背景など。
TOTOさんの100周年社史のなかで見つけた、東洋陶器から社名変更したときのエピソードが参考になりました。2代目の社長がこれからは高速移動の時代が来る、新幹線も電車も速くなったら、「東洋陶器株式会社」のロゴでは新幹線からは見えない。だから短くTOTOの青文字に変更すると決めたそうです。本質が詰まっているなと思いました。ロゴというのは世に出す以上、認知してもらわなければ意味がない。
我々もなるべく少ない文字数でいきたかったのですが、商標権が取れそうだったのが7文字で、この制限のなかで当社のビジネスに即した名前にしなければということで「未来を自分たちでタップして創っていく」という意味を込めて「miratap」にしました。
――山根社長は2014年に会社を継ぐために入社されたのですね。それから10年、会社も大きく変わりました。
当社に入社するまでは伊藤忠商事で繊維・アパレルの営業を担当していました。当時、社員は56人いましたが、僕に代わってからは10人も残っていないと思います。事業承継者にとって組織の求心力がどこにあるかはっきりしていないことがいちばん苦しい。創業者が一般的にワンマンな場合、大体のケースでは求心力は創業者にある。
例えば、先代の「デザインさえよければ、品質は後回しでいい」という発言が残っていたのですが、その発言だけを捉えて商品開発がなされ、お客さまからのクレームが多く、リピートにつながらないという負のサイクルに陥っていた。おそらく、この局面、業況に直面して、創業者の父親は「品質はどうでもええねん」とは絶対に言わない。「デザインだけでなく、品質も妥協してはいけない」と言っていたはずだ。だけど、君たちは自分に都合のいいところだけ切り取って、やるべきことをやらないなら創業者の言葉を逆に冒涜(ぼうとく)していると思うと当時の社員に伝えました。
現在は契約社員も入れると300人を超え、ほぼ全員自分が採用したメンバーです。持続的に発展できる組織をつくっていくには会社の経営理念に求心力を持たせるべきだと思いました。誰が次の経営者になろうが、この会社でなすべきことに共感して働く社員を増やしていかなければと思い、2017年に経営理念を「くらしを楽しく、美しく。」に変えたのです。
――中期的経営目標を教えてください。投資家に向けたメッセージもお願いします。
中長期計画では3年ごとに「構造変革期」「成長加速期」「飛躍期」と分けており、今は飛躍期の1年目ということで「ミラタップ」に社名を変え、広告宣伝費を積極的に投入しています。計画数値は開示していませんが、例えば営業利益100億円を目指す場合、我々の限界利益は35%くらいあるので、売上高が400億円くらいあれば達成できる計算です。10年前、就任した時に50億円程度だった売上高が24年9月期は161億円と3倍くらいの規模になりました。そこから3倍となると480億円になります。特に規模が大きくなればなるほどM&Aなど強者の理論・戦略が取れるようになるので、規模を拡大することも営業利益100億円もそれほど難しいことではないと思っています。
社名変更に伴う費用増加などへの懸念から株価は低迷していますが、次の飛躍に向けて必要な投資だからやっているというところをご理解いただきたい。個人的にも報酬の大部分を株式で受け取っています。ぜひ応援していただければと思います。(M)