ユカリア(286A)が12月12日、グロースに上場した。病院の経営支援を主力とする。初値は公開価格を8%下回る975円。上場当日の記者会見で三沢英生代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
三方良し……医療経営総合支援事業や介護施設の展開に加え、医療・介護DX(デジタルトランスフォーメーション)推進、医療ビッグデータ利活用など未病予防から終末期まで極めて幅広いバリューチェーンを有していることが特徴。超高齢社会を迎え社会保障費の増大という社会課題の解決を実現するため、①病院・介護施設の経営安定化②医療・介護従事者の働きがい・所得の向上③患者・要介護者のウェルビーイング――この全てが実現し、人々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が持続的に改善する“三方良し”の世界観を目指している。
事業環境は良好……日本に約8,000の病院があり、その7割超が赤字。当社の支援先は赤字や資金繰り難の病院が中心で、提携候補病院は数多い。加えて福祉医療機構(通称WAM)がコロナ禍で実施した緊急融資の返済が来年以降、本格的に始まることもあり、当社の支援を必要とする病院は今後一層増えていこう。また、7割近くの病院が後継者不在。事業承継の観点からも事業機会が拡大するとみている。
あらゆる分野のプロフェッショナルがサポート……最大の特徴は病院経営のあらゆる課題に自社単独で対応できること。典型的な例は次の通り。赤字の病院も多くは地域の重要なインフラであり、地銀などが資金貸し付けなどを通じ必死にサポートしているが、どうしても厳しくなってくると当社にサポートやアドバイスの依頼が来る。こうした依頼に対し、様々な形でサービスを展開。例えばコンサルティングで入る場合もある。運転資金が足りない場合は貸し付けを行い、特に財務内容が悪い病院に対しては土地建物を買い取ることでバランスシートの改善をサポートすることもある。その上で事業計画を作成し、人事労務体制などを整備、必要であれば採用のお手伝いもする。財務体質の悪い病院は医材・薬剤・医療機器などの調達が難しい、調達できても取引条件が悪いケースがあり、当社が卸として調達や購買をサポートすることもある。病院施設の保守・修繕・建て替えニーズにも対応。そのほかDX、データ活用など病院経営に関わるありとあらゆるサービスを展開している。このように幅広く支援できるのは私どもが誇る人材に尽きる。取締役の西村(祥一)を筆頭に社内ではマットチームと呼んでいるが、経営マインドを持った医師・看護師が社員として在籍していることが最大の特徴。加えてファイナンス、人事労務、データサイエンス、薬剤師、卸、一級建築士など、ありとあらゆる分野のプロフェッショナルがいる。
一気通貫で徹底的に伴走支援……コンサルティング企業、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業、バイアウト企業に似ていると感じる方もいらっしゃるだろうが、コンサルティング企業は基本的にアドバイスで終わり、バイアウトファンドはイグジットを前提としている。BPOは病院経営に必要な一部の機能を引き受けるのにとどまる。一方で当社は一気通貫で徹底的な伴走支援を継続できる。これにより病院の課題を本質的に解決し、経営を立て直し、安定させることで業績改善、持続的成長につなげていく。いったん病院経営が安定するとその後10年、20年、30年、時にはそれ以上の極めて超長期にわたって安定したキャッシュフローを生み出す。この高いキャッシュフロー創出力が当社の特徴であり強み。
今後もM&A……これまで病院経営サポートを軸に事業開発とM&Aを通じてバランスよく事業領域を広げてきた。提携医療法人に深く入り込み、幅広いサポートを提供することが特徴だが、これは提携医療法人以外の医療機関への外部コンサルティングやソリューションを展開する上でも強みになる。今後もM&A、アライアンスを通じ病院に提供するサービスラインアップを一層拡充し、各事業施策のシナジー効果で成長を加速したい。
上場を決断した理由……新型コロナ禍で、われわれのビジネスは極めて公的な存在であると確信。病院は公器、われわれの会社も公器になるべきなのではとオーナー企業からも言われた。また、ビジョン、ミッションの“三方良し”を達成していくには今の規模ではかなり力不足。事業拡大と同時に、多くの仲間、これは医療従事者、介護従事者だけでなく、そのほかの業界、政府、自治体、メディアなど多くの共感を得て仲間を増やす必要があると考え上場を決断した。それが2021年ごろ。それから最速のタイミングを証券会社のアドバイスをいただいて決めた。われわれがやるべきことは事業拡大と仲間づくり。これに徹底的にフォーカスすることによって株主様にしっかり還元できるようにしていきたい。決算発表は来年2月14日を予定。『非連続な成長を連続的にする』ということを社内でよく言っているが、今回の上場が非連続な成長をしていくための一つの大きな武器になる。中長期に今までのオーガニックなグロースではない、大きな成長をしていこうと考えている。
月を追うごとに増加……福祉医療機構がコロナ禍で行った緊急融資の返済が来年から本格化する。これがトリガーになり、地銀を含めいろいろなところから相談が過去見たことがないくらいの量が来ている。もちろん営業や実績で当社の立ち位置が上がってきていることもあろうが、それでは説明できないぐらいの圧倒的な外部環境が大きいと思っている。月を追うごとに増えている。
東大アメフト部監督……(三沢社長は東京大学アメフト部の監督も務めている。事業にプラスになっていることやメリットがあればお願いしますという記者質問に対して)私は教育者でございますので卒業後、真に活躍するような優秀な人材を育成・輩出しているつもりでして本当に優秀なのです。そうした人間が有名どころの大企業に勤めているのだが次々と入社してきている。びっくりするほどアメフトだらけになっている。優秀な頭脳を持った元アメフト選手が入ってきている。これが最大のメリットと思っている。また、東大アメフト部のネットワークもメリット。ただメリットのためにやっているわけではない。結果として良い関係ができていると思っている。(Q)