経理に関するコンサルティング業務を手掛ける会計事務所、令和アカウンティングHD(296A)が12月23日、東証グロース市場に上場した。初値は公開価格360円を44.7%上回る521円と好調なスタートを切った。繁野径子代表取締役=写真=は当日の会見で同社の概況や今後の戦略などについて以下のように話した。
主なサービスライン……社会インフラとして経理に関わるプロフェッショナルによる高付加価値サービスを提供している。なかでコア事業となるのは「Long」と呼ぶ契約期間の長いストック型のサービスで、上場企業をはじめとする大企業、REIT(不動産投資信託)やSPC(不動産証券化事業)などにサービスを提供している。それ以外にもコンサルティング「Short」と呼ぶ契約継続期間が比較的短いフロー型のサービス、2023年度から本格的に稼働した教育研修、覇権紹介などの業務も行っている。
人材不足を補う……コア事業は会計支援、決算・連結・開示、REIT・SPC・FUNDの会計受託などは、毎年必ず繰り返して行う業務で、たとえ会社がどのような状況のあろうとも必ず会計書類を作成する。一度契約をすれば繰り返し発生するため、長期戦略的に経理実務として「Long」と呼んでいる。一方、「Short」とは意見書を作成したりデューディリジェンスを行ったりという、単発的な業務を指している。経理業務というのは本来であれば企業として外に出したくない業務だが、少子高齢化や労働人口の減少、会計制度の高度化など様々な要因から大企業であっても人材を安定的に確保することが難しくなってきたなどの理由から、私たちのような専門家に外部委託せざるを得ない状況になっている。外部の人材が入ることによる不正防止の効果などもある。コストの削減にもつながる。
経常利益率20%程度を維持……24年3月期(単体)のKPIは売上高が前期比14.2%増の40億2,000万円、経常利益が同19.1%増の7億6,000万円。コンサルティングのKPIは「Long」の契約継続率が99.8%と非常に高い。従業員数は357名、クライアントグループは183、グループ単位の平均年間報酬は2,183万円となっている。21年度から23年度にかけて売上高は10~15%の伸びで推移してきたが、今後も安定的な推移を目指す。売上総利益率は50%前後で推移しており、今後も維持したい。経常利益率は20%程度の維持を目指している。今年度も順調だ。
専門性の高い頭脳労働集約産業……私たちの特徴は専門性の高い頭脳労働集約産業ということだ。中心的な業務を端的に言えば損益計算書、貸借対照表の作成ということになり、同じことをやっている会社はほかにもたくさんある。何が違うのかというとクライアントに言われたままに仕事をするのではなく、会社に入りこんで経理部門のスタッフと一緒に数字を作り上げているということだ。2つ目の特徴は大企業中心のマーケットということだが、グループ企業1社と取引を開始した後、その後は他のグループ会社や他業務にどんどん取引が広がって行くという強みがある。3つ目は契約継続期間が長期・安定収益であるということだ。月次のチャーンレート(解約率)0.119%と非常に低くなっているが、これができるのは付加価値の高い情報をしっかりと提供しているという品質の高さ、言われたことをただやるのではなくこちらから提案できるという強み、こうした業務を支えるマンパワーを備えていることにある。
循環型収益モデル……人の循環とともに収益の循環を考えている。経理プロ教育の強みを生かし育成した人材が当社のコンサルティング事業、派遣などで全国にネットワークができることにより、人が循環し、そこで新たなコンサル事業につながるなど収益の循環が生まれる。将来目指すAI・ソフトウエアの事業に関しても少しずつ着手しているが、これらをミックスすることによってさらなるサービスの高度化、収益性の向上を目指して行きたいと考えている。(M)