技術承継機構(319A)が2月5日、東証グロースに新規上場した。製造業・製造関連企業の譲受および譲受企業の経営支援を手掛ける。初値は公開価格(2,000円)を35%上回る2,700円だった。上場当日の記者会見で新居英一代表取締役社長が語った内容のポイントは次の通り。
製造業の技術を次世代につなぐ……M&Aを適切なバリュエーションで連続的に行うことで成長する連続買収企業(Serial Acquirer)。譲り受けた会社をバリューアップしてキャッシュフローを出す、そのキャッシュフローを使ってまたM&Aをするというサイクルをぐるぐる回している。製造業に特化しているところが特徴であり、現在、アドバイザー(仲介会社、地方銀行や都市銀行などの金融機関)から年間400件以上案件を頂いて、そこから良い会社だけを選んでいる。良い会社とは、1つはしっかり技術を持っている会社、もう1つは利益を出している会社。そのため、われわれは再生案件はやらない。
売主から選ばれる理由……ファンドでも事業会社でもない独自のポジショニングを確立している。ポイントは①再譲渡しない②個社の独立性を重視している③バリューアップの枠組みを持っている――の3つ。特に①はファンドとの決定的な違いであり、やはりどこに転売されるか分からない、短期間で結果を出さなければならないなどの理由から、ファンドに売りたくないというオーナーの方は多い。われわれはあくまで継続的な企業の成長を支援しており、譲り受けた会社は基本的には未来を一緒にする。そういったところがオーナーの方々の評価を頂いて譲受が進んでいる。②については、事業会社が事業会社をM&Aすると、親に合わせて子の名前を変えたり、子の商流を親に寄せたり、どうしても親が子をどう変えるかという話になってしまう。われわれはそういった考えは取っておらず、主役は譲り受けた1社1社だと考えている。
マニュアルで効率的かつ効果的な成長支援……また、われわれはNGP(NGTG Growth Program)という仕組み化されたバリューアップマニュアルを持っている。これはもともと、われわれが理想にしている米国Danaher社が会社をバリューアップするためのマニュアルを持っていて、それを勉強させていただきアレンジして作ったもの。営業から開発・製造、人事、経営管理、ITまで、ありとあらゆるメニューで譲り受けた会社を継続的に成長させるための仕組みとなっている。また、グループ会社間の上手くいった事例をどんどん横展開している。
資金調達における強み……金融機関と良好な関係を築けている理由として、①良い会社をピックアップしている②チーム力がある③積み上げてきた実績④社会的意義――が挙げられる。特に④は大事で、やはり地方銀行にとって地域のコミュニティを守る、地域の技術を次世代に承継するといったところは非常に重くとらえている。われわれも同じような考えを持っているので、そういったところに共鳴頂いて融資を頂いているのかなと考えている。結果として、固定で低金利、長い期間と好条件での資金調達を実現している。
成長戦略……上場による調達資金に加え、バランスシート上もキャッシュを持っている。こちらも活用しながら連続的にM&Aを実行していく。本年においては4、5件はやっていきたいと考えている。また、中小のオーナー企業に限らず、せっかく上場したのでもう少し大きな案件にも取り組んでいきたい。具体的には上場企業のTOBや大きな会社のカーブアウトなど。既にこういった話も来ている。後継者不足で廃業危機に瀕している黒字の会社はかなり多い。非常にもったいないと思っており、それを少しでも減らしていきたいというのがわれわれの想い。高齢化を背景に、日本では今後も製造業のM&Aが増加していく。良い会社をそれほど高くないバリュエーションで譲り受けるチャンスがまだまだある。(SS)