JX金属(5016)が3月19日、東証プライム市場に上場する。
半導体・情報通信分野に欠かせない銅やレアメタルを原料とする先端素材の開発・製造・販売を主な事業とし、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔(はく)を主力製品としている。これらに加え、銅やレアメタルの資源開発や、製錬・リサイクル事業を手掛け、上流から下流までをつなぐサプライチェーンを持ち、安定的に先端素材をマーケットに供給している。
2025年3月期の売上高は前期比53.7%減の7,000億円の見込みだが、チリのカセロネス銅鉱山の運営会社であるMLCC社とパンパシフィック・カッパー(PPC)が連結子会社から持分法適用会社へ変更となることが主な要因。同社では長期ビジョンに基づき、半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントをフォーカス事業と位置付け、先端素材事業の収益規模および収益性の成長に取り組んでおり、事業再編はこの方針に沿ったもの。
半導体関連の柱であるスパッタリングターゲットはシリコンウエハー上の半導体回路を形成するための薄膜材料で、ロジック、メモリ向けなどで6割強の世界シェアを持つ。このほかのスパッタリングターゲットやコンデンサ用のタンタル粉・ニオブ粉、SAWデバイス用のタンタル酸化物・ニオブ酸化物なども手掛ける。
機能材料事業の主力製品は圧延銅箔でスマートフォン向けなどハイエンドなFPC(フレキシブル回路基板)に用いられている。AIサーバ向けなどの高機能コネクタなどに使われるチタン銅、コネクタやリードフレームに使われるコルソン合金などの銅合金も扱っている。連結子会社の東邦チタニウム(5727・P)で金属チタン事業・触媒事業・化学品事業を、TOB(株式公開買い付け)で子会社化したタツタ電線では電子材料事業、電線・ケーブル事業などを行っている。
資源事業ではチリのカセロネス銅鉱山、ロス・ペランブレス銅鉱山などに権益を保有、銅製錬事業の原料となる銅精鉱の安定確保を図るとともに、投資リターンを得ている。
今期は大幅減収ながら営業利益は前期比11.1%増の957億円の見込み。上場後の配当方針は、連結配当性向20%程度を基本とした上で、ベース事業の利益が上振れた分についてはその一部も株主に還元する。当面はフォーカス事業を中心とする成長投資を最優先とし、そのうえで財務体質の改善とのバランスを取りながら、株主に対して適切に利益を還元する方針だ。
概要
●事業内容=半導体材料、情報通信材料の製造および販売、資源開発、金属の製錬、リサイクル
●本社=東京都港区虎ノ門二丁目10番4号
●代表者=林 陽一代表取締役社長
●設立=2002年9月
●上場前資本金=750億円
●発行済み株式数=9億2,846万3,102株(上場時)
●筆頭株主=ENEOSホールディングス(上場前100%)
●売出株式数=4億6,516万100株(ほかにオーバーアロットメントによる売出6,977万4,000株)
●仮条件=3月2日に決定
●ブックビル期間=3月3日から7日まで
●引受証券=大和、みずほ、三菱UFJモルガン・スタンレー、モルガン・スタンレーMUFG、JPモルガン証券、野村、SMBC日興(共同主幹事)、水戸、めぶき、SBI、楽天、マネックス
業績推移(連結)
売上高 | 税引前利益 | 1株利益 | 配当 | |
2023.3 | 1,638,484 | 63,327 | 39.78 | ― |
2024.3 | 1,512,345 | 78,714 | 110.53 | ― |
2025.3(予) | 700,000 | 914 | 58.48 | 103.55 |
※単位100万円、1株利益・配当は円 |