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インタビュー2025年3月3日

アシードHD 雌伏期を経て成長路線に復帰 河本大輔社長に聞く

2000年最高益が射程に

飲料周辺事業一筋で半世紀余。自動販売機運営管理と飲料製造を両輪とするアシードHD(9959・S)が近年、長らくの雌伏期を脱して“新たな成長路線”を歩み始めた。その号砲とも言えるのが、前3月期の「23年ぶり経常利益10億円超え」だ。今期は第3四半期累計期間(4~12月期)では減益ながら、残り3カ月の巻き返しで、連続2ケタ増益での着地を目指す。来期以降に向けても、伸び盛りの飲料製造は好採算の自社ブランド戦略を強化、再編の時代に入った自販機運営も独立系の強みを生かしたアライアンスなどで勝ち組としての地盤を固め、他にも海外投資など様々な布石が打たれている。苦難の時期を乗り越えてきた同社の河本大輔社長(写真)に、これまでの事業の流れや今後の展望などについて話を聞いた。

――そもそもの会社設立は1972年とか。

「父である先代社長の時代の話だが、その前にココア粉末を扱う会社が『チクロショック』(当時主流の甘味料使用禁止)で倒産を余儀なくされてからの再起だ。オフィスなどに置くコーヒーマシンのレンタル事業で始まったが、富士電機製の紙コップになって爆発的に伸びた。紙コップからビン・缶、ペットボトルへと飲料市場が拡大するなか、その後の主力事業となる自販機運営などに進出することで業容を広げ、93年には株式の店頭公開も実現した」

――99年には飲料製造事業に参入している。

「北関東ペプシコーラボトリングの買収だ。この頃には私も入社していて積極的に取り組んだ思い出深い案件だが、真の狙いは自販機事業にあった。西日本で約1万台の自販機を運営していたが、東日本でほぼ同数を展開する同社を加えて一気に倍増となる点が魅力だった。ただ、ペプシコーラ製品を手掛けるボトリング工場も数年は順調だったが、ある時から注文がガクッと減って大赤字に陥り、立て直しに大変な苦労を強いられた」

――打開策は?

「大手メーカーの受託製造は変動が大きく、まずは量の確保を最優先してスーパーやコンビニ向け拡大に奔走した。同じ相手先ブランド供給でも、当方で一定の主導権を持って開発を行うODM(オリジナル・デザイン・マニファクチャリング)へと次第に軸足を移し、チューハイなどヒット商品も生まれた」

――流れに乗ったかに見えるが、業績は2000年の経常最高益(14億8,300万円)を境に停滞局面に入っていく。

「会計的要因も含んだ最高益には少し“でき過ぎ”の面もあるが、00年以降、今度は右肩上がりだった自販機運営に陰りが出てきた。各メーカーの激しい設置場所獲得競争を経て飽和状態となってしまったためだ。ただ、ここ数年で本格的な立て直しに取り組んできた。コロナによる落ち込みを挟んだが、値上げ効果も含めて、収益性は着実に改善してきている」

「ここにきて飲料メーカー同士でも自販機を共同運営する動きが出てきた。独立系オペレーターである当社はかねてよりM&Aに意欲的。こうした集約化の流れは、青森から沖縄まで42カ所の営業所で全国カバーする我々には追い風となる」

――様々な取り組みの表れが前期の経常利益10億円超えか。ただ、今期は10.8%増益見通しに対し4~12月期実績では11.8%減益だが…。

「飲料製造は上期の苦戦が尾を引いた。値上げを受け全般に需要低迷したほか、効率改善に向けて酒類・飲料製造2社を製造と販売の機能別に分割する組織再編を実施したことも、一時的な製造停止などに伴う採算悪化を招いた。とはいえ第3四半期自体はおおむね想定通りだ。4~12月期のセグメント利益で見ると、飲料製造事業が減益となる一方、中間期段階で減益だった自販機運営リテイル事業は増益に転じてきた。飲料製造も、例年仕事量の激減する冬場にゼリー飲料を中心に健闘しており、通期見通し達成には手応えを感じている」

――となると、いよいよ最高益も視界に入る。

「中期計画上は、あと2年ということになる」

自社ブランドでテレビCMも

――成長戦略の目玉に「ブランド創造企業への挑戦」を掲げているが。

「実は、自社ブランド飲料自体は自販機をメインに00年以前から製造してきたが、ブランド力に劣り、『安かろう悪かろう』的に見られがちだった。現在は、国産果実などを使った少し高くても本当においしいものに絞って、スーパー、コンビニなどで販売しており、評判も上々だ。テレビCM実施なども考えている」

「他にも、22年8月の河村農園の子会社化で始めた茶葉加工事業が順調に拡大している。既存の出資先では、ベトナムの大手であるハロンビールの持ち分法投資利益が2億円を超えてきている。創業以来一貫してきた『飲料』の周辺事業には、今後もなお開拓余地がある」(K)

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