TalentX(330A)が3月18日、グロースに上場した。テクノロジーを活用して低コストかつ高精度で人材獲得できる採用DX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォーム「マイシリーズ」をSaaSで提供している。初値は公開価格を36.8%上回る1,026円。上場当日の記者会見で鈴木貴史代表取締役社長CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
HRテックカンパニー……AI・テクノロジーで市場をゲームチェンジするHRテックカンパニー。企業の採用マーケティングを支援する採用DXプラットフォーム「マイシリーズ」を展開している。外部の人材紹介会社やメディアを利用すると、高コスト・他社とバッティングするといった課題があり、新たな採用手法を模索している企業は非常に多い。中で当社の「マイシリーズ」は人と人とのつながりを生かしたリファラル(社員紹介)採用を支援する「マイリファー」、スカウトサービスを内製化する「マイタレント」、求人メディアを内製化する「マイブランド」で構成され、データを起点に採用マーケティング全般を支援するプラットフォームとして進化してきた。高コストかつ非効率な人材採用を内製化し、採用力を高めるもので、一人当たりの採用単価は30万円と既存採用手法の4分の1以下で獲得が可能。従来手法と比較しコストを抑えながら新たな潜在層にアプローチできるということで企業から購入いただいている。
ビジネスモデル……BtoBのSaaSで、売上高の95%がサブスクリプション。従来の人材サービスは求職者を紹介し決定するとフィーを得るビジネスモデルのため売り上げにボラティリティが発生し、景気変動の影響を受けやすい。一方、当社は企業のデータを活用するSaaSモデルのためボラティリティが小さく景気変動の影響を受けづらい。実際、コロナ禍を通じてCAGR(年平均成長率)40%。また、従業員1,000人以上のエンタープライズがメーンで多額の広告宣伝費が必要ないためSaaSながら前3月期から営業黒字。今期は3Qで営業利益2.1億円、営業利益率20%出ている。
事業の主な特徴……解約率が0.2%と低い。利用すれば利用するほど経年利用で価値が上がるモデル。「マイタレント」であれば1年目よりも2年目、2年目より3年目の方が応募者のデータが増え、それが資産になりマーケティングできる。2つ目は利用企業の65%がエンタープライズであること。大手企業と一緒にプロダクトを作り込み、営業組織を構築してきた。3つ目はアップセルの余地。複数のプロダクトを採用いただくことでアップセルのキャッシュポイントが存在する。4つ目はネットワーク効果。採用マーケティングのプラットフォームを一つのIDで利用できることが大きな参入障壁になる。当社は既存の人材紹介や求人広告など仲介採用市場の1.5兆円をリプレイスしていくことに加え、新たな転職の潜在層にアプローチする採用マーケティングという領域にも踏み込んでいる。日本はまだ新卒一括採用や年功序列型の雇用慣習がメーンだが、雇用の流動性が高いグローバルでは採用マーケティング市場が伸びている。日本もまだまだ伸びていこう。
成長戦略……エンタープライズにフォーカスして顧客を獲得し、クロスセルを増やし、シナジーにより解約率を下げる。日本はエンタープライズが4,000社にあるのに対し、われわれはまだ200社超であり、95%のホワイトスペースが存在する。営業人員を増やすことで一気に面を獲得していきたい。また、2つのプロダクトを使っている比率が14%、3つのプロダクトを使っている比率は3%で、クロスセルの伸びシロもある。また、AIによって転職意欲を特定するといった機能をリリースした。今後もAIを活用し採用マーケティングをオートメーション化して生産性を高めていく。採用マーケティングにおいて日本ではプラットフォーム展開している競合はまだなく、比較的ユニークなポジショニングをとれている。今回上場したことで例えばパートナーさまやプロダクトとAPI連携するプレーヤーさま、われわれのグループにジョインいただくといったところを一気に進めていきたい。
SaaSの成長指標「40%ルール」を重視……KPI(重要業績評価指標)として重視しているのは、SaaSの成長指標である「40%ルール(ルール・オブ・フォーティー)」。売上高の成長率と営業利益率を足して40%以上をクリアし続けるもの。直近2期では49%、今期も同様のペースで進捗している。売上高成長だけでなく、営業利益を追求したサステイナブルグロースを実現し続けたい。最後になるが、われわれは「採用領域のセールスフォース」を目指している。営業はCRM(顧客関係管理)の到来により広告依存、エクセル管理、デスクに名刺が眠っているという構造が、自社の見込み顧客に対してウェブで一元管理してマーケティングする世界に変わった。残念ながら採用領域ではまだまだ外部紹介に依存、応募データを破棄といった構造がある。ここにマーケティングの力を投入することで、営業領域で起こったイノベーションを採用領域で起こしていきたい。(Q)