市場:米国(NASDAQ:ナスダック) 銘柄コード:ARM 業種:半導体
◇企業概要
半導体IP(知的財産)ベンダー大手。コンピューター、電子機器を動かすことに欠かせない半導体の回路など内部構造(「Armアーキテクチャー」)の設計・開発を手掛け、半導体メーカーなどに技術ライセンスを供与。ライセンス収入と「Armベース」のチップ出荷に応じたロイヤルティ収入を得るビジネスモデル。2016年にソフトバンクグループ傘下に入り、23年9月の株式公開・再上場後も90%程度の出資比率が維持される見込み。
「Armv9」構成比は伸び悩みも、IoTが回復の兆し
2025年3月期3Q(10~12月)は、売上高が前年同期比+19%の9.83億ドル、調整後EPSが同+26%の0.39ドル。Armベースチップの出荷にリンクするロイヤルティ収入は同+23%と、エンドマーケット別で最大のスマートフォンは市場全体を上回る好調を持続した。また、データセンター、ネットワーク機器および自動車といった注力分野も堅調で、これまで数四半期低迷が続いたIoT(一般産業分野)も回復の兆しを見せた。新世代アーキテクチャー「Armv9」のロイヤルティ収入に占める構成比は25%(前年同期15%、前四半期25%)にとどまったが、これは従来型アーキテクチャー(「Armv8」など)を採用するミッドレンジのスマートフォン向けが力強い成長となったためである。
大規模ライセンスの契約見込みを背景に上方修正
25年3月期ガイダンスは、4Q(1~3月)がレンジ中間値で売上高が3Q対比+25%(前年同期比+32%)の12.25億ドル。一方、通期はレンジ中間値で売上高が前期比+23%の39.90億ドル、調整後EPSが同+26%の1.60ドルに上方修正された。通期ガイダンスの引き上げは、ライセンス収入が前期比+30%へ見直されたことが背景である。同社は、確度の高い大規模なライセンス契約が進行中であるが、契約締結タイミングは翌期(26年3月期)にずれ込む可能性があるとしている。一方、ロイヤルティ収入は、25年3月期通期ガイダンスで前期比「+10%台後半」と従来見通しを据え置き、26年3月期通期イメージを「おそらく+20%台前半ば」と示した。
25年1月高値からほぼ半値の厳しい株価調整
同社株は、OpenAI、オラクルとソフトバンクグループが主導するStargateプロジェクトへの同社参画の発表で1月に直近高値(182.88ドル)を付けたが、その直後に中国のDeepSeekが低コストのAI新モデルを発表したことで最先端半導体の需要に対する懸念が台頭し急反落した。その後、トランプ政権の通商政策に対する不透明感が株式市場全体を覆う中で、AI関連を中心にテクノロジー株全般に調整色を強めた。同社株も2月以降はほぼ一本調子で下落し、実際に関税が発動された4月には100ドルを割り込んだ。半導体セクターの動向はもとより米国市場全般にしばらくは注意する必要があろう。
2025年4月4日