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トップ記事2025年4月28日

SBIレオスひふみ 藤野英人社長に独占インタビュー 日本のメディア株は割安

フジ・メディア再生の処方箋

フジ・メディア・HD(4676・P)の大量保有を2月初旬に報告し、脚光を浴びたSBIレオスひふみ(165A・G)傘下のレオス・キャピタルワークス。取得の狙い、背景を聞いた。

――もともと今年はアクティビストの年と言っていた。その流れをご自身で体現されているように見える。

「ひふみは残高が大きくなり運用しにくいだろうとよく言われる。売買回転率を上げ、的確な売買をすることが運用というのであれば多額の残高は不利になるが、社会的影響力を行使できるという面では残高が多いことは非常に価値がある。フジも運用上の純投資だが、残高を生かして存在感を示し、会社と対話することで会社が良い方向に変わるという象徴的な事例になるのではないか。残高が多いと運用に不利という見方に対する一つの解ともいえる」

「フジの前にテレビ東京HD(9413・P)を5%取得するなど、もともとメディア株に投資していた。ポートフォリオの上位にあるソニーG(6758・P)も保有するコンテンツの価値に注目して投資している。これから日本のアニメやドラマなどコンテンツの価値が高まろう。その点で日本のメディア業界は割安。特にフジは今回いろいろあったことによって変わるかもしれない。ある種の覚悟があるのだが、これだけのことがあって、大きな会社が変わらなかったら、日本はダメだなと思っている面もある。なぜなら、スポンサーがほとんどいなくなる状態。これは大変なこと。これで変わらない会社があるわけなく、必ず変わるとみている。フジ問題をきっかけに、日本のテレビ業界はこれから一番劇的に変化する可能性のある業界に躍り出た」

――フジ再生の処方箋。

「業界の有力な人に『勝ち筋は見えますか?』と尋ねると、10人中10人、勝ち筋の7、8割が同じだった。これはいけると。なぜかというと、『あなたならフジをどうしますか?』と質問したときに、『ちょっと見当もつかない』という回答ではなく、『これとこれとこれをすればうまくいきます』という回答が次々に出てくる。これまでは雇用環境や商慣習など様々な要素があってできなかったが、処方箋ははっきりしており、あとはやるだけだと。これはいける案件。保有不動産の価値を鑑みれば倒産する可能性はほぼない。分かりやすく変化すれば伸びる可能性があるため、非常に投資価値があると判断した。かつ、ひふみの価値をデモンストレーションする一つの良いきっかけでもあると考えた」

「業界の中堅の方にもインタビューする。“正面玄関”からフジを通じて申し込み、フジが立ち会い録音いただいても結構ですと言っている。こそこそ会ってもいいが、こそこそ会ったときに力強い話をする人は魅力的でない。社長がいようがお目付けがいようが、その人たちにおじけづかずものを言える人が出てこないと変わらないと思う。その点でこそこそ会ってほえるような人はだめ」

フジ・メディア いまこそ生まれ変わるチャンス

――コンテンツ企業の重要性は以前から説いていた。

「ソニーは世界的なコンテンツ企業として劇的に変化した。フジもドラマなどのIP(知的財産)をうまく押さえることができれば、過去コンテンツをサブスクで流して儲けることができる。どの方に聞いても出てくるのが、配信とコンテンツ制作の分離。制作部隊が自由に作り自由に流すようにすべきと誰もが言う。良いコンテンツを作り、ヒットしたらその人が2割、3割プロフィットシェアリングするようになれば、フジに人が急行する可能性がある。また、みなが口を揃えて『お台場を出ないと未来はない』という。ドラマの放送作家の多くは赤坂や六本木、西麻布に住まい、遊びと仕事が混然一体の世界が形成されているが、お台場はそこから距離がある。アニメならば中野、阿佐ヶ谷など中央線沿いに制作会社がたくさんある。いっそのことフジが中野サンプラザに入ったら面白いコミュニティができるかもしれない。築地跡地もありだろう。お台場は遊園地などにし、フジは一大エンターテインメント会社として不動産を持ちつつ、コンテンツを作り、サブスク配信する世界をわくわくさせる会社にするビッグチャンスと思う」

「性接待などをコンプラ違反と暴いていくのはあまり意味がなく、反省すべきところは反省した上で、面白いコンテンツを世界に向けて発信し収益を稼ぐ。それで激変したら、テレビ局の中で一番遅れていたフジが先頭に立つ。その可能性が非常にある」

「結構お叱りを受けるのですよ。『こんなセクハラ、パワハラの会社になぜ投資するのだ。いい会社に投資するのではなかったのか』と。僕らは『セクハラ、パワハラの会社が良い会社に生まれ変わるチャンス。株式投資は原価が大事だから、ボロボロの会社がピカピカの会社に変化する局面がリターンが一番高くなるためそこに賭けている』と説明している」

――今後のフジの展開は注目ですね。大株主としての手腕を楽しみにしたい。

「ホリエモンが出てきてフジテレビと争ったような時代と今は人の意識が違い、AIを含めた新しい世界とどう融合するかというところが課題になってきている。テレビ局はコンテンツ産業であり、ソニーのようになればいい。日本のメディアが劇的に変われば、日本は変わると思う。テレビはダメになったといわれながらも影響力は非常にある。フジが変わることで、テレビ業界の古い体制がドミノ倒しのように変わっていくと、一番レバレッジが効いて日本を変えることができる」(インタビューの続きは5月7日付紙面に掲載予定)(Q)

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