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特報2015年3月17日

☆特報 6年ぶりの決着なるか セゾン情報 vs エフィッシモ

残るのは流動性の欠如

あと1週間ほどで、エフィッシモキャピタルが仕掛けたセゾン情報システムズ(9640・JQ)のTOB(株式公開買い付け)が終了するが、同社の株価はTOB価格の1,700円に届かないまま、1,400円台で推移している。

エフィッシモとセゾン情報の「縁」はかれこれ6年以上。エフィッシモは2008年ごろからセゾン情報株の取得を開始、初めて大量保有報告書が出たのは09年4月7日。この時点で発行済みの12.95%だった。

だが、セゾン情報がアクションを起こしたのはそれから1年半後の10年12月。期中、それも第3四半期末近くなって買収防衛策の導入を決めた。

エフィッシモが、やはり大量保有報告書で、持ち株比率が27.22%に上昇していることを明らかにしたのは、翌11年の3月16日。買収防衛策は決算期ごとの更新になるので、セゾン情報側は11年3月期の定時株主総会で買収防衛策の延長を決めている。

実際にエフィッシモとのバトルが始まるのはその半年後の同年9月。同年9月6日、エフィッシモは33%まで買い増しをする可能性があるということを表明する、「大規模買付意向表明」を行った。

これを受け、セゾン情報はエフィッシモに対する質問情報の提供を求め、エフィッシモ側がそれに答え、これを受けて会社側が追加質問を行い、エフィッシモ側が回答しというやりとりが行われ、翌年12年2月、会社側が特別委員会に諮問し、結論が出たのが同年5月。

半年がかりのやりとりの末に会社側が出した結論は当然のことながら「大規模買い付けはやめてくれ」というもの。

この約1カ月後の6月12日に開催されたセゾン情報の株主総会でも、エフィッシモに対し大規模買い付けの中止要請を行うことが可決された。

エフィッシモは同年11月になって、この総会決議の無効確認訴訟を起こし、1審判決が出たのが昨年11月。ここまでで「大規模買付意向表明」から丸3年以上かかっている。

結果は「決議は有効」というものだったのだが、この判決は、会社側はもちろんエフィッシモ側も控訴せず確定している。

なぜエフィッシモ側が控訴しなかったのか。その理由が判明したのが今年2月。9日付でエフィッシモは突如TOBを開始、3年5カ月前に表明した、発行済みの33%までの買い付けを行う内容で、買付単価は1,700円。

12年6月の総会決議が有効であるという地裁判断があったのに、なぜアクションを起こしたのかというと、エフィッシモ側の公開買付届出書によれば、この総会で決議された追加買収中止要請行為は、買い増しを禁止する法的拘束力はないということを認定した判決だったから、ということらしい。

これに対し、会社側はいったん意見表明を留保した後、あらためて特別委員会の意見を求め、それに基づいて3月5日に反対表明を行っている。その反対理由の1つに上げられているのが、さらなる流動性の低下だ。

セゾン情報の株式は、筆頭株主のクレディセゾンが46.8%を保有しており、エフィッシモは27%強を既に保有しているので、この2者だけで74%弱。エフィッシモがさらに5%強を追加取得すると8割弱がこの2者に押さえられてしまう。

セゾン情報の株価が1,700円に向かってまっしぐらに上昇しない理由は、一つは今回のTOBの買い付け上限がわずか5%強なので比例配分がかかるリスクを嫌気されているということはあるかもしれないが、何よりも流動性の低さも原因になっているはずだ。

セゾン情報は1993年11月の上場で、そのころはセゾングループが健在で、クレディセゾン以外にも西武百貨店や西友、セゾン声明、西洋フードシステムなど、セゾングループが37%を保有、発行済みの6割以上をセゾングループが保有していた。

しかし2001年以降、セゾングループの解体とともに保有株が放出され、流動性が飛躍的に高まった。エフィッシモによる大量取得は元をたどればセゾングループ解体による流動性の向上ということになるのだろう。

そのセゾン情報、今期は第3四半期に大規模な開発案件で深刻なバグが発生したらしく、突然巨額の赤字へと業績予想を下方修正している。営業赤字、最終赤字ともに上場来初。だが、第3四半期決算公表からわずか4日後にエフィッシモがTOB開始を公表したため、株価は一気に上昇。本稿執筆前日終値は1,451円と、第3四半期決算公表前日終値の1,068円から大きく上昇している。買い付け単価の1,700円には及ばないとはいえ、1カ月で35%の上昇である。

敵対的買収の場面では会社側は株主のウケを狙い、配当予想を引き上げるが、セブン情報はさすがにこの決算で引き上げはできないらしく、前期から据え置きの35円としている。

セゾン情報の投資家情報サイトは、長年エフィッシモから有形無形のプレッシャーがかかったせいもあるのか、驚異的な充実ぶりだ。短信は13年分、リリースは15年分、有価証券報告書に至っては20年分が掲載されている。読者諸氏もひとつのぞいてみてはいかがだろうか。

セゾン情報システムズの業績推移1
売上高営業利益当期純利益総資産純資産自己資本比率
94/314,5836312846,6954,11761.5%
95/313,4184902726,7374,29363.7%
96/314,0466603438,3604,55754.5%
97/316,3417534218,5004,88057.4%
98/318,5058924539,0835,23657.6%
99/318,5091,18756410,0565,86358.3%
00/319,29166235510,9156,09655.8%
01/319,3931,26353214,7876,59344.6%
02/320,8201,84994714,8167,37949.8%
03/321,2732,2982913,5077,13552.8%
04/320,8332,20224815,0717,44549.4%
05/326,3512,7521,51117,2598,75650.7%
06/323,2022,4191,18417,2159,82257.1%
07/322,9972,6741,53519,20210,88056.7%
08/323,5592,4991,37418,16411,79364.9%
09/324,9962,5711,39219,73012,65864.2%
10/326,1272,48999719,96513,19466.1%
11/327,9842,9571,47623,13214,02060.6%
12/332,6043,4101,74326,50614,96156.4%
13/329,2902,7241,67425,06616,16064.3%
14/332,5413,3751,90126,41116,91664.0%
15/3期初予想31,7003,3002,050---
15/3修正予想30,100△4,650△4,000---

セゾン情報システムズの業績推移2
配当配当性向株価PERPBRROE
94/310.028.3%1,55043.863.056.9%
95/38.023.8%90526.911.716.3%
96/310.023.6%1,60037.782.847.5%
97/310.019.2%1,45027.882.418.6%
98/310.017.8%80014.271.248.7%
99/312.017.2%2,20031.543.049.6%
00/312.027.4%90020.521.205.8%
01/315.022.8%80012.160.988.1%
02/315.012.8%1,20010.251.3212.8%
03/315.011538.5%9217,084.621.050.4%
04/315.052.7%1,21042.531.323.3%
05/330.016.7%1,7859.971.6617.3%
06/318.024.6%1,65822.672.7312.1%
07/325.026.4%1,02610.821.5314.1%
08/330.035.3%5926.980.8211.7%
09/330.034.9%5706.630.7311.0%
10/340.065.0%64010.390.797.6%
11/340.043.9%1,23013.491.4210.5%
12/335.032.5%1,19311.081.2911.7%
13/335.033.9%1,11510.781.1210.4%
14/335.029.8%1,1519.811.1011.2%
15/3期初予想35.027.7%----
15/3修正予想35.0-----
※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは実績ベース

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)

[本紙3月18日付12面]

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