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特報2015年8月11日

☆特報 アップルインターナショナル急騰 増額修正と金利負担軽減

減資をすれば復配可能!?

8月7日金曜日、3月決算企業の第1四半期と12月決算企業の中間で、前週末7月31日の約470社を上回る約520社が短信を公表した。

この短信公表の影響を最も受ける、週明け8月10日、全銘柄中値上がり率トップに躍り出たのが、中古車販売のアップルインターナショナル(2788)。上場は2003年12月で、最近マザーズから東証2部に昇格した。いわゆるマザーズの卒業ルールに従ってのことだ。

12月決算の会社なので、今回は中間期の発表だが、実際の短信発表予定日は14日。7日は中間の業績予想を大幅に上方修正するリリースを出したので、それに市場が反応した。

10日は前営業日の7日終値272円から取引開始早々いきなり352円に上昇してストップ高。終値も352円で、この価格帯は制限値幅が80円だから本日は432円が上限だが、本稿を執筆している11日午前9時10分時点の株価は333円だ。

さて、それではどのくらいの上方修正だったかというと、売上高80億円、営業利益2.7億円、純益9,900万円としていた上期予想を、売上高110億円、営業利益5.8億円、純益2.9億円としたので、営業利益は倍以上、純益は3倍に修正したことになる。前年同期比で言えば売上高では55%、営業利益では137%。

■中国子会社を持分法適用に

売上高が半減しているのは、連結売上高の6割以上を稼ぎ出していた中国の新車販売子会社が連結子会社ではなくなり、持ち分法適用会社になったから。

ただし、48%強の保有株を売却したのではなく、本体からの役員派遣をやめ、子会社側の経営陣に事業展開を任せることにしたので支配力基準の要件を満たさなくなった、というものだ。

この中国子会社、上場翌年の04年に設立、12年ごろまでは売上高、営業利益ともにこの会社の連結決算の柱だった。10年12月期は本体が不振で、中国子会社が上げた10億円の営業利益があったからこそ、5億円弱の連結営業利益になったほどだ。

直近の14年12月期は売上高こそ連結全体の63%を占めていたが、営業利益では17%程度。それでも赤字だったわけではない。

連結外しの理由について、会社側は仕入れ資金の調達金利負担が重く、売上高に見合う利益を確保できなかったとしている。過去の実績を見る限り、赤字でもないのになぜ、という疑問はわくものの、中国子会社が連結から外れた15年12月期第1四半期の実績を見ると、持ち分法投資損益は2期連続で赤字。一方前第1四半期は1億8,000万円弱だった金利負担は1,600万円強に減っている。

■営業利益率は飛躍的改善

前半はタイ向けの中古車輸出が想定以上に好調だったらしく、6割減る想定だった売上高の減少幅は5割以下に抑えることができたらしい。何より営業利益率が前上期の2.1%から、今期は5.3%へと飛躍的に改善している。

下期に関してはまだ先行きが不透明であることを理由に通期予想は修正していない。理屈の上では上期の上ブレ分を下期で食ってしまうシナリオになるので、下期は50億円の売上高で、4,600万円の営業赤字でも現状の通期予想は達成できてしまう。

再度の増額修正への期待も織り込んだ株価上昇だったのかもしれないが、この会社、14年12月期末時点で15億円の利益剰余金赤字を抱えている。

そもそも、09年12月期に多額の貸倒引当金を計上したほか、固定資産、買収した子会社ののれんの減損を実施、そのあおりで繰延税金資産の取り崩しがもれなく付いてきたため、37億円もの最終赤字を計上。25億円の利益剰余金赤字を抱えた。翌10年12月期も貸倒引当金やのれんの減損で16億円の最終赤字を計上したが、資本剰余金を利益剰余金に振り替えて利益剰余金赤字を14億円にとどめ、13年12月期には5億円弱まで減っていたのだが、前期にまたもや15億円に拡大した。

その原因はマレーシアの貸倒引当金計上や香港の孫会社や中国子会社に関連する損失処理。営業外と特損で合計15億円を処理したために、最終損益が10億円の赤字になった。

減損や貸倒引当金の処理は期末に集中するため、通期予想を変えなかったことに一応の合理性はある。そもそも利益剰余金が赤字のうちは、配当を実施しないのが普通だ。会社法上は資本剰余金からも配当は可能だが、普通は利益剰余金が黒字化しないと配当はしない。

アップル社も引き続き無配予想なので、利益剰余金の赤字が解消するほどの純益でなければ復配は見込めない。

もっとも、資本剰余金は1億6,500万円しかないが、資本金は48億円あるので、減資を実施すれば利益剰余金の赤字はすぐにでも消せる。減資は当然株主総会マター。創業社長が拒否権ぎりぎりの32%を保有しているので総会決議が実現する可能性はほぼないが、浮動株が3割近くあるので、アクティビスト(モノ言う株主)が乗り込んでくる余地がないわけではない。

その意味で、今後株価が動く可能性は十分ある銘柄であり、それだけに素人の個人投資家が安心して買える銘柄とは言い難いだろう。

アップルインターナショナルの業績推移と株価指標
決算期売上高営業利益営業利益率当期純利益総資産純資産利益剰余金自己資本
比率
2001/125,1832735.3%12980638332347.5%
02/1212,0336015.0%3421,5461,07865869.8%
03/1218,2781,1196.1%6383,7832,7091,28571.6%
04/1228,1327202.6%14515,22211,2681,33674.0%
05/1234,8842690.8%53021,47111,5691,76853.9%
06/1250,7542490.5%-30228,43811,3801,32739.1%
07/1255,8811,2172.2%33429,93812,6671,80738.9%
08/1243,3564070.9%-28824,55711,7211,30644.9%
09/1243,112-52-0.1%-3,71520,6158,692-2,57735.0%
10/1234,3764981.4%-1,60414,8666,190-1,42537.1%
11/1227,300-110-0.4%-70814,0515,826-22734.8%
12/1224,099-169-0.7%-29519,4914,829-52223.3%
13/1231,0247472.4%5024,1105,444-47221.8%
14/1240,7075891.4%-1,03020,6623,824-1,50321.8%
15/12上計①8,0092713.4%99----
15/12下計①8,0092713.4%98----
15/12通計①16,0185423.4%197----
15/12上計②11,0815885.3%289----
15/12下計②4,937-46-0.9%-92----
15/12通計②16,0185423.4%197----

決算期配当期末株価PERPBRROE
2001/122,000---33.7%
02/12513---31.7%
03/123,000488,00019.164.8923.6%
04/121,000182,000114.502.001.3%
05/121,000173,00040.491.864.6%
06/121,00049,450-0.55-2.7%
07/121,70047,35017.660.512.6%
08/121,35016,970-0.19-2.5%
09/12-15,900-0.27-42.7%
10/12-8,800-0.20-25.9%
11/12-6,970-0.18-12.2%
12/12-7,080-0.19-6.1%
13/12-14,95036.930.350.9%
14/12-203-0.56-26.9%
15/12上計①-244---
15/12下計①-----
15/12通計①--15.43--
15/12上計②-244---
15/12下計②-----
15/12通計②--15.43--
※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは14年12月期までは実績ベース。15年12月期は予想ベース

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)

[本紙8月12日付12面]

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