TOP  NSJアップデート  特報  ☆特報 アミューズに福山雅治さんショック 無借金で財務体質は抜群
特報2015年10月13日

☆特報 アミューズに福山雅治さんショック 無借金で財務体質は抜群

歌手・俳優の福山雅治さんの結婚報道で株価が下落した、福山さんの所属事務所はアミューズ(4301)。結婚報道があったのが9月28日で、翌9月29日終値は前日終値の5,310円から440円安の4,870円。約8.2%の下落だから、業績予想の修正もしていないのに結構なインパクトだ。

その後は10月1日に5,260円まで戻したが、10月7日に再び5,000円を割り込み、連休前の10月9日終値は4,770円。結婚報道翌日終値よりもさらに低い。たかが芸能人の結婚報道と侮るなかれ。アミューズにとって福山さんはまさに業績を左右する屋台骨である。

福山さんはもとよりジャニーズ系のアイドルではなく、ファン層は幅広い。先般は男性ファン限定のコンサートを開き、会場に詰めかけた男性ファンの中には、中高年のおじさんたちもたくさんいた。46歳にもなった男性が結婚したからと言ってファンが離れるわけもないのだが、市場はそう見たということか。

すぐに反転したのは、結婚報道で福山さんが東日本大震災から5カ月後の2011年8月に発表した『家族になろうよ』のダウンロード数が急増したとの報道があったためかもしれない。ただ、再び下落に転じた理由はよく分からない。

その福山さんが所属するアミューズという会社、上場は01年の9月。上場歴はかれこれ15年になる。例によって下の業績表は、上場前年から現在に至るまでの業績推移を集計したものだ。10年3月期以降は無借金で財務体質は抜群。11年3月期以降、年によって多少のでこぼこはあるが、着実に純益を積み上げ、積み上がった純益に比例して現預金残高も積み上がっている。

アーティストマネージメントが柱

事業セグメントは上場当時からあるアーティストマネージメント、メディアビジュアル、コンテンツに、前期から独立セグメントになったプレイスマネージメント。アーティストマネージメントは文字通り所属芸能人のコンサート収入や、コンサート会場で売れたグッズの収入、テレビ、ドラマの出演料、それに新譜のCDやDVDの印税など。メディアビジュアルは仕入れた映像作品の販売収入と制作に関与した映像作品の配給分配収入。コンテンツは旧譜の販売や二次使用料収入である。

前期から新たに加わったプレイスマネージメントは、テーマパークなどの運営収入やグッズ、飲食などの収入。自社所属アーティストに依存しない収益の確保を目的に始めた事業だが、前期は当然のことながら赤字だった。

上場当時と直近を比較すると、年商は倍近くになっているが、増えたのはもっぱら本業中の本業であるアーティストマネージメントである。直近の15年3月期は、アーティストマネージメントの売上高が304億円と、連結全体の77%を占め、メディアビジュアルは58億円。メディアビジュアルは、以前はテレビ番組の制作もやっていたため、03年3月期は152億円の売上高があった。この年、アーティストマネージメントの売上高は103億円である。

成長エンジンは2大看板

そのアーティストマネージメント事業の成長エンジンになっているのは、ほかでもない福山さんとサザンオールスターズである。

この会社、時価総額がわずか440億円しかない会社にしてはホームページ上のIR(投資家向け広報)サイトが非常に充実していて、適時開示も有価証券報告書も上場当時からすべてそろっているし、決算短信は上場3期目から、決算説明会資料は06年3月期以降9年分が掲載されている。

それらを見る限り、この会社の決算は福山さんとサザンの新譜発売や大規模なコンサートツアーの有無に左右されてきたことが分かる。

ほかの事業にも進出を試みた形跡はあるが、もうからないと分かるといち早く撤収してきたことも分かる。03年3月期は出版事業子会社の清算などで10億円の損失を出している。海外の映画を購入して上映する、映画配給事業子会社を東芝に売却して得た利益で補っているため目立たないだけだ。10年3月期の赤字はDVDパッケージの在庫処分損15億円の影響である。

今年3月末時点では株価は3,365円だったので、この時点ではPBR(株価純資産倍率)は1.5倍。5月の決算発表後もさほど株価に変動はなかったが、6月上旬から上昇し始め、7月末にピークアウト。8月13日に第1四半期の短信が公表されたことを受け、4,000円台後半に切り上がった。

実際、今期の第1四半期は、売上高が前期比27%増で営業利益は実に87%増なのに、上期、通期ともに業績予想の上方修正はなし。通期予想は売上高が前期比6.3%増で営業利益は9.5%増でしかない。この予想ゆえに5月の決算発表後も株価は反応しなかったのだろう。

現在PBRはぎりぎり2倍を切っており、PERも14倍強。在庫水準は今年第1四半期末時点で28億円弱と、09年3月末時点の半分。期末に純益を下押しする材料も限定的だ。

結婚報道は9月28日だったから、結婚効果が折り込まれるのは第3四半期になる。第2四半期の数字が良ければ通期の上方修正の可能性も出てくるし、配当の上乗せ期待も高まるかもしれない。

アミューズの業績推移と株価指標
売上高営業利益対売上高当期純利益総資産現預金有利子負債
01/319,7552,23611.3%54314,1334,5474,460
02/323,3601,6226.9%1,01921,9504,8214,405
03/328,1452,90510.3%1,08618,1095,7042,439
04/326,2431,8136.9%97215,1564,115692
05/324,3771,3785.7%76117,8772,613656
06/329,4401,8016.1%89716,3481,830600
07/324,9145662.3%18518,6622,544600
08/323,6841,2005.1%58217,4841,8551,100
09/332,1853,28210.2%1,55222,3624,165300
10/328,7401,2684.4%-88016,6943,660-
11/326,1222,1618.3%1,13618,2575,802-
12/331,7763,56411.2%1,93021,5888,544-
13/330,8714,09213.3%2,48023,04310,646-
14/333,7703,64410.8%2,30524,79110,049-
15/339,2083,92410.0%2,67129,75212,356-
16/3予41,7004,30010.3%2,820---

純資産利益剰余金自己資本比率配当期末株価PERPBRROE
1株性向
01/33,0472,77921.6%53.0%---19.4%
02/37,1193,78232.4%52.8%1,93010.901.7520.1%
03/38,1064,83744.8%106.1%1,2677.751.0114.3%
04/38,9515,71459.1%108.2%2,10017.161.8211.4%
05/39,7126,37554.3%1010.4%2,42525.151.948.2%
06/310,6577,10465.2%2017.8%3,13027.792.288.8%
07/310,4827,11055.5%2083.7%1,34756.361.011.8%
08/310,9337,53761.8%2026.6%2,15028.601.545.5%
09/312,4668,94354.3%3517.5%1,0205.090.6513.5%
10/311,1797,77565.5%20-21.1%968-0.82-7.6%
11/312,0848,72764.5%2016.3%9217.490.7210.0%
12/313,43510,47260.7%3516.6%1,1205.320.7615.5%
13/315,68012,59866.2%3010.7%1,9046.801.1117.5%
14/317,21514,47267.6%4518.0%1,8817.520.9713.8%
15/321,17416,82065.0%4012.9%3,36510.871.5114.8%
16/3予---4012.2%----
※金額の単位は1株当たり配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRの単位は倍、実績ベース

[本紙10月14日付12面]

関連記事