
東急建設(1720)は2015年の年初から夏にかけて株価倍化を達成した。親会社である東急電鉄が拠点である渋谷の大規模再開発(中核施設とある渋谷駅街区東棟が19年完成、全体は27年完成)を推進中という大材料を抱え、一般の建設株とは一線を画す銘柄。その建設工事が14年夏から本格着工となったことから、年明け後、ひと相場形成した。
14年11月以降のローソク足・週足を見ていこう。
まず、明らかに変化が現れたのが、正月のお屠蘇(とそ)気分も抜けた1月第3週(13-16日)。前週の小幅陰線を包み込む「抱き線」が出現した。酒田憲法には「下位の抱き線は底と知れ」とある。長い間の底もみ圏。株価位置が低い水準での「抱き線」は陽転のシグナルとして重要な意味を持つ。
しかも、この抱き線。寄り付きが安値でザラバ安値がない形。俗に言う「寄り付き坊主」となっている。この「寄り付き坊主」は酒田憲法では「寄り切り線」と呼ばれ、上値を強く暗示する線として重要視される。ここでは「買いの決定線」が出現したことになる。
3週間ほどジワッと落ち着いた買い物が進行し、2月第2週(9-14日)、第3週(16-20日)に大陽線2本が出現した。
次のポイントは第3週(23-27日)からの陰線2本。これが3本連なれば「三羽烏」という崩落示唆の売り決定線だが、陰線2本で踏みとどまったため「ツタイ線」と呼ばれる小天井示唆の線が出現した。いずれにしても、相場はしばらく調整局面入り。その後、5月第2週(11-15日)の「寄り切り線」に準じる線形(始値706円・安値704円)出現を得て上昇第2波に突入した。
さて、天井圏のシグナルも見ていこう。
相場の明らかな変調は日々の値動きに、まず現れる。日々、あるいは数日間の動きを監察し、そこに異様な値動きが現れるようなら、リズム変化の兆候と判断すべきである。
「波高き線は天底の兆し」とは、重要な酒田憲法の極意。8月第4週(24-28日)の長い下ヒゲ陰線。その翌週の長い上ヒゲ陰線。ここに典型的な「波高き線」が出現した。
そもそも8月第3週に現れた「差し込み線」に注目すると、これだけ見ると買い方不利の印象を与えるものの「上げ足の差し込み線」といって買い線である。実際、翌週(第4週)は突っ込みに買い物が入って「たくり線」が出現。売り方がエネルギーを使い果たし、買い方優位の状況に逆転…とみえたものの、買い方も決して余力を残していたわけではなかったことを示しているのが、第5週の上ヒゲ陰線。わずかに高値を更新したところで、力が尽きてしまった。その後、3週連続陰線で「三羽烏」。売りの決定線が出現した。
要するに、売り方、買い方ともに疲弊状態にあるということだろう。その、お互いの死闘が「波高き線」となって現れた、ということだろう。ここら当たりは、相場から一歩身を引いて眺めていると、良く分かる。
なお、この8月第3週と第5週に仲良く並んだ高値を市場では“毛抜き天井”と俗称するが、酒田戦法にはその言葉はない。

[本紙11月5日付12面]