ステムリム(4599)が8月9日、マザーズに新規上場する。
同社は再生誘導医薬品を開発する、大阪大学発のバイオベンチャー。再生誘導医薬品とは、人が本来持つ組織修復機能を最大限に引き出すことで組織や臓器の再生誘導を狙った医薬品のこと。
同社では、①患者に注射などで薬剤を血液中に投与②薬剤の刺激で組織再生能力の高い幹細胞が血中に放出される③幹細胞が血流に乗り損傷部位に集まり、損傷部位の修復を図る――というメカニズムにより組織再生を実現する薬剤を開発している。
従来の再生医療・細胞治療は、生きた細胞を生体外で大量培養する工程で細胞が変質・ガン化するリスクや免疫拒絶などの問題を抱えている。一方、再生誘導医薬品は生きた細胞の投与ではなく、医薬品の投与となるため、品質安定かつ迅速な再生医療が実現可能とみられ、広く普及が期待されている。
現在、開発パイプラインは5本。中で塩野義製薬(4507)に導出したHMGB1ペプチド医薬品「PJ1」が最も進んでおり、表皮水疱症(第2相臨床試験中で今秋終了予定)、脳梗塞(第2相臨床試験中)、心筋症(第2相臨床試験準備中)の3領域で開発を進めている。
ほかの4本は、潰瘍性大腸炎やアトピー性皮膚炎などを対象にした「PJ2」などで、いずれも非臨床試験段階にある。
推計患者数は「PJ1」で95万人、「PJ2」などを含めれば1,650万人に広がる。ちなみに、幹細胞再生医薬を手掛ける上場ベンチャーにヘリオス(4593・東マ)、サンバイオ(4592・東マ)があり、推計患者数は前者は14万人(脳梗塞、急性呼吸逼迫症候群)、後者は180万人(外傷性脳損傷、パーキンソン病など)。
ビジネスモデルとしては、大学や研究機関と共同研究し、非臨床試験や初期臨床まで担当。薬剤の候補物質の成功可能性を高めた上で、大手製薬会社に開発権や製造権、販売権などをライセンスアウトし、一時金や開発進展に伴うマイルストーン、販売後に売り上げの一定割合を得るという、創薬ベンチャーでは一般的な手法を採用する。
特許戦略にぬかりはなく、現在、日米独中豪など世界29カ国で計78件が成立済み。このほか出願中が43件。上場に伴う公募増資で調達した資金は、再生誘導医学研究所および動物実験施設の設立資金、研究開発費、人件費に充てる予定。
概要
●事業内容=生体内に存在する幹細胞を活性化し、損傷組織の再生を誘導する医薬品・医療機器および遺伝子治療薬など製品の研究、開発、製造、販売
●本社=大阪府茨木市彩都あさぎ7-7-15
●代表者=冨田憲介代表取締役会長CEO
●設立=2006年10月
●上場前資本金=8億1,247万5,000円
●発行済み株式数=5,028万2,700株(上場時)
●筆頭株主=玉井克人(上場前19.78%)
●公募株式数=600万株
●売出株式数=240万株(このほかオーバーアロットメントで126万株)
●仮条件=7月24日に決定
●ブックビル期間=7月25日から31日まで
●引受証券=SMBC日興(主幹事)、大和、野村、みずほ、SBI、いちよし、岡三、楽天、西村
業績推移(単体)
売上高 | 経常利益 | 1株利益 | 配当 | |
2017.7 | 300 | ▼157 | ▼3.50 | ― |
2018.7 | 200 | ▼327 | ▼8.47 | ― |
2019.7(予) | 100 | ▼701 | ▼16.52 | ― |
※単位100万円、1株利益は円。▼は赤字 |