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インタビュー2020年11月5日

トップインタビュー ストライク 荒井邦彦代表取締役社長 2021年9月期は先行投資を加速

3年後の年間成約組数300組へ

社会変化でM&A活用の裾野広がる

ストライク(6196)は中堅・中小企業を中心としたM&A仲介を行っている。M&A市場は企業のM&A活動の減速などコロナ禍による短期的な影響が見られた一方で、中長期的にはM&A機会が広がるきっかけとなった。また、新政権が促す中小企業の再編や生産性向上の手段の1つとして、M&Aの注目度が高まる可能性がある。こうした中、9月末発表の2020年8月期決算は売上高69億1,600万円(前期比36.2%増)、営業利益29億8,100万円(同58%増)と、コロナ禍で過去最高の業績を達成した。決算期変更により、21年9月期は13カ月決算となる。通期では売上高83億6,800万円、営業利益30億8,100万円を見通す。荒井邦彦代表取締役社長=写真=に話を聞いた。

――前期の振り返りと今期の計画を聞かせてください。

「前期は対面型セミナーの開催中止、出張など営業活動の制限、採用の遅れが生じたことで経費が削減され、利益率が向上した。今期は人員採用や新規受託獲得のための活動など前向きな投資を積極的に行い、前期の遅れを取り戻す。特に人材採用は2~3年後に響いてくる。一段と採用を強化し、優秀な人材を増やしていく方針。足元の採用状況は順調で、既に15名以上のコンサルタントの入社が決まっている。また、人員増強に伴って本社移転を実施する予定であり、今期の利益率は一時的に低下する見通し」

――コロナ禍での営業活動の変化について。

「従来の対面型セミナーをオンライン開催に移行した。開催地の制約がなくなり、より気軽にセミナーに出席できるようになったことで参加者(見込客)の層が広がった。1回当たりの開催コストが削減できる分、テーマを細分化したり開催数を増やしたりするなどの工夫を行っている。このほか、M&Aプロセスの一部デジタル化やテレビ会議の活用による営業活動の効率化を進めている」

――事業環境はいかがでしょうか。

「おしなべて見ると足元の大きな変化はない。しかし、今回のコロナ禍を契機にいろいろと考え直す人は増えたのではないか。例えば後継者不在に悩んでいた経営者が事業承継を早めるきっかけになったり、親族内承継の考えを改めたりなどだ。また、経済危機が起きると様々な業種で寡占化が進む。経営者は数年後を見据えた次の戦略の一手を考えなければならない」

「日本の従来の産業政策は転換しつつある。新たに“中小企業の生産性向上”が強く意識されるようになったことが20年版中小企業白書からもうかがわれる。かねて日本は企業数が必要以上にあり、生産性が低い産業が多いと指摘されてきた。もともと業界再編の加速が避けられない状態ではあったが、国が旗を立てたことでよりM&Aが浸透しやすい環境になったとみられる」

――23年9月期の目標を打ち出しました。

「年間成約組数300組、新規受託件数665件(20年8月期実績は年間成約組数134組、新規受託件数340件)を目標とする。現在の人員体制や今後の増員計画を踏まえた目標値だが、コンサルタントの生産性を高め、目標を上回る成長を目指したい」

「上場時から、事業承継M&A市場でのシェア拡大とともに、スタートアップ企業の出口戦略としてのM&Aの開拓にも注力していくと目標を掲げてきた。今後、このコロナ禍で社会制度の変化や価値観の変化により生じた歪みやひずみを埋めるビジネスが出てくるだろう。一方、既存の大企業などではDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのイノベーションの材料を求めるニーズが高まっていく。この橋渡しを担い、日本経済の生産性向上に貢献していくことが当社の役割と考えている。こうした事例を既にいくつか手掛けており、事業承継以外のM&Aニーズが広がりつつあると実感している」