逆風吹きすさぶグロース株。東証マザーズ指数は11月戻り高値からの下落率が4割近くに達した。とはいえ、こんな時こそ「本物の成長株」を底値圏で拾うチャンスでもある。マーケティング関連のテクノロジー企業ならジーニー(6562・東マ)。実際に、前3月期黒字転換を機に収益拡大が鮮明となり、今やPERでも評価できる水準となってきている。急成長の背景や先行きの展開などについて、同社の工藤智昭代表取締役社長CEO(最高経営責任者=写真)に話を聞いた。
――今期営業利益は3.2~4.3倍の激増を見込んでいるが、要因は何か。
「コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)機運が高まり、ネット広告の重要性が再認識されてきたことが背景にある。祖業である広告プラットフォーム事業のシェアがどんどん高まるとともに、先行投資を続けてきたマーケティングSaaS(サービスとしてのソフトウェア)事業の採算が急改善している。海外事業も伸びてきた」
――第2四半期決算は好調だが。
「営業利益は1.7億円と前通期1.9億円並みとなり、経常利益及び四半期純利益は前通期を超えて着地している。通期業績予想の達成確度が高まった」
――そもそも広告プラットフォーム事業とはどういうものなのか。
「ニュースサイトやブログなど広告収入を得る側のネットメディア(サプライサイド)と、効果的な広告を出したい広告主(ディマンドサイト)をマッチングして、広告枠を自動で取引する仕組みを提供している。株式市場に例えれば、売買を仲介する東証のような立ち位置だ」
――両サイドを手掛け、ともに成長を続けているのはジーニーぐらいだ。特にネットメディア向けでは、上位3社の寡占が進むなかでも頭一つ抜け出してきたのだとか。
「目先的な利益を犠牲にしても大規模な開発投資を進め、いい製品を生み出し続けてきたことが背景だ。他社は投資余力が乏しくなりつつある」
――「いい製品」とは従来品とどこが違うのか。
「たとえば、たくさんの広告主の目に触れて、より多くの広告を出してもらえるような様々な仕掛けを加えている。アマゾンなどのネット通販に例えれば、品揃えと配達の速度を強化し続けているようなものだ」
――市場シェアはどうか。
「30%を超えてきている」
――もういいところでは。
「まだまだ伸びていく。取り込めていない分野もあって伸びしろは大きい」
――どのような分野か。
「大手企業とかアプリ広告の市場などだ」
――もう一方のディマンドサイドビジネスはどうか。
「メディアと広告主では求めるもののロジックに違いがあるが、こちらも多額の資金をかけて延々と開発を進めている」
――どのような事業展開をしているのか。
「あちらこちらに手を伸ばすより、今はカテゴリーごとのナンバーワン獲得に向けて取り組んでいる」
――どのカテゴリー?
「内容は明かせないが、ある分野ではほぼ1位を手中にし、次の候補も2つほどある。いずれは全てのカテゴリーでナンバーワンを目指したい」
――新たな柱に育ってきた期待のマーケティングSaaS事業とは、どのようなものか。
「マーケティング分野で集客から販売、優良顧客化までのプロセスをワンプラットフォームで一元管理できる国産プラットフォームを展開し、年率120%の急成長を遂げている。さらなる成長加速へM&A(企業合併・買収)による事業拡充を進めており、直近ではチャット接客ツールを扱う会社を買収している。
――黒字化が近いとか。
「今3月期下期(10~3月)内の四半期での黒字化を目標に掲げてきた」
――実現できそうか。
「全力を注いでいる。ただし、これから爆発的な成長が見込める分野だけに、期限内に計画を達成するために開発投資を削るようなことはしたくない」
――現在開発担当者はどのくらいいるのか。
「委託も含めれば130~140人程度。さらに今年の新卒で48人程度が加わる。マーケティングテクノロジー業界内では質、量ともに圧倒的と言えるのではないか」
――人件費負担のかさむなかで利益を伸ばしてきたが、ここで多額の資金を投じて自社株買いを進めているのはなぜか。
「株価が安い時に実施しておけば、企業買収の際の原資にもなる。M&A戦略も順調に進んでいる」
――中期計画などは。
「2024年3月期の売上高250億~300億円(前期は140億円)、営業利益20億~25億円(同1億9,500万円)を計画している」
――決算説明会資料の中には「当社のサービスが提供可能なターゲット市場」は1兆2,000億円との記載もあったが。
「先行きの成長余力は極めて高く、長期目標『日本発の世界的なテクノロジー企業となり、日本とアジアに貢献する』の達成に向け邁進していきたい」
――最後に何か読者に伝えたいことがあれば。
「業績だけではなく株価も常に気に掛けている。今できる手を1つ1つ打っていきたい」