経済アナリストの馬渕磨理子氏が3月18日、日本証券新聞が東京・茅場町で開催した「個人投資家向け会社IR説明会&株式講演会」に登場。同会で個人投資家に自社をアピールした上場企業2社、ビーグリー(3981)、日総工産(6569)について言及しており、本稿ではその一部抜粋して紹介する。
ビーグリー 飛躍のポイントは「単価向上」
会員数600万人超、電子書籍という領域では既に「面」をとった会社です。新規をガツガツ取りに行った、その「次」はどうするのか?という戦略転換の真っただ中にある会社でもあります。
2020年からLTV(ライフ・タイム・バリュー)、ユーザーが何度もリピートしてくれるためのマーケティングにかじを切っています。例えば毎月300円だった課金額が「もっと読みたいな」と1,000円、1,500円と上がっていく、そのための施策を練っているのです。
ポイントは、会員の購入単価の向上が業績にも反映されていくのか?になります。売上高で見ると20年12月期の123億円から、前期は186億円に伸びたものの、今22年12月期は187億円とほぼ横ばいを会社側は想定しています。ただし24年度を最終とする中期経営計画では「必達ライン200億円、ストレッチ目標240億円」を掲げていますので、それまでのどこかで単価向上が業績に反映されるタイミング、これを楽しみに待つといった銘柄になるかと思います。
株価的には昨年11月、日本テレビによるTOB(株式公開買い付け)発表で急騰したものの、その後に調整。この売りはいったん落ち着いたように見えます。
【ビーグリー会社概要】
コミックサイト「まんが王国」運営。17年3月IPO(新規上場)。一昨年には老舗出版社・ぶんか社グループを買収、昨年は日本テレビがTOBを行い同社株式25・43%取得、資本業務提携を結んだことなどで注目された。今後は「電子書籍×まんが」にとどまらない「グローバルで通用するコンテンツプロデュースカンパニー」を目指す。社名は「進化論」を唱えたチャールズ・ダーウィンが世界航海に使用した船の名「Beagle」に由来。
日総工産 「挽回(ばんかい)生産」開始時期を注視
なにより気になるのはクライアントであるトヨタ自動車(7203)の「挽回生産」のタイミングです。本来は昨年末と想定していたものが遅れている、しかし、会社側の説明によれば「いずれ必ず出てくる」ということですので、その時期が非常に楽しみな銘柄だと言えます。
先ごろトヨタが減産、4月に20%減、5月に10%減との報道がありましたが、「そもそもが相当に高い水準を想定していた、平時としては十分に増産といえる水準」とのこと。しかも、現在はあらゆる新車が納品まで時間がかかっている状況ですから、これに対応するための挽回生産は必ず発生することが想定されています。
ちなみに日総工産は自動車「以外」にもクライアントがあり、電子部品メーカーであれば村田製作所(6981)、半導体では東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)などと、非常に力強いことも特徴です。売上高は前21年3月期実績の682億円から、今期は780億円、そして2年後の24年3月期は1,150億円とアグレッシブに見える計画を立てていますが、会社側は「達成可能」とのことですので、例えば在籍者数などの重要指標を確認しながら進捗を見守っていくのがいいかと思います。
【日総工産 会社概要】
製造業向け人材派遣・製造請負を手掛ける。トヨタなど自動車向けがメーンではあるが、電子部品や精密機械など世界的メーカーも多数クライアントに持つ。近年は自社研修施設で技術力を高める「エンジニア」育成を強化、単価向上による収益力向上と、HRテック領域など既存事業とのシナジーの高い新規事業の立ち上げに注力している。