「2022年度より配当性向75%」
適合計画書の“実現性”を確認
凄腕投資家で“億り人”の井村俊哉氏が上場企業トップに斬り込む本企画。今回のお相手はサンコール(5985・東証プライム)の大谷忠雄代表取締役。昨年末、東証再編に伴う「適合計画書」をリリースして大注目された企業だ。(取材日2022年3月10日)
井村:サンコールさんに興味を抱いた理由が「計画書」です。東証再編でプライム基準に達していないけれども、こういう計画でもってプライム残留しますという計画を出されました。これが、自分はかなりの件数の計画書に目を通しましたけど、その中でもトップクラスで「がんばります!!」という印象を受けました
大谷:そうですか。うれしいですね。
井村:正直「言ってるだけでしょう?」って思ったんですけれども、自分のまわりには過去サンコールさんに取材経験のある元機関投資家の方がいまして、「技術的にはちゃんとしてる会社ですし、そんな目で見なくてもいいんじゃない?」と。
いちばん目につくのが「配当性向75%」ですよね。配当額は明示されていませんがパーツを集めていくと、23年3月期は営業利益が20億円くらい、純利益がだいたい15億円くらいだとして、そこに75%を掛けると、まあ大体10億円強は配当に使われるというふうに見えます。そうすると1株で37円くらい(※)というところ。今日(22年3月10日)時点で株価474円ですで、ものすごい利回りになっちゃいますけど、大丈夫ですか? ――というところをまず確認したいです。
大谷:その認識の通りです。
井村:え!? その認識でいいんですか?
大谷:そういうことです。まあ、今、われわれが持っている予想では、今おっしゃっていただいている認識で大丈夫です。
井村:今のマーケットは金利が戻ってきているので将来の売上成長よりも今の利益を見るし、今の利益よりも配当を見るという、かなり短視眼的な市場になっています。そうなると、配当利回りで何%くらいいけばみんなが買うんだろう? みたいなことが結構、議論されるんですけど、おそらく5%とか6%なら買ってくるんですよ。そんな中で御社の新中期経営計画の予想EPS(1株利益)に対して配当性向75%って結構な大盤振る舞いだなと思うんですが、この数字はどのようにお決めになりましたか?
大谷:当社は新中期経営計画GGP24においてROE(自己資本利益率)9%を掲げております。これを達成するために利益を拡大していくと同時に、一方で、自己資本の増加を抑制することも必要だと考えております。そのような理由からROE9%の方策を策定しました。
井村:中期経営計画に載っていたキャッシュアロケーションの図を見ると、営業キャッシュフローの多くが設備投資にまわると読み取れます。配当との両立、できますか?
大谷:自己資本比率もまだまだ高いですから十分に可能だと考えています。
井村:稼いできたキャッシュは設備投資にガンガン回していくし、今まで蓄積してきた自己資本は株主に還元する。かなり大胆な策ですが、ここは踏ん張って自分たちのやる気を見せよう、ということでよろしいでしょうか。
大谷:プライム市場に上場するにあたり、より高い定量目標を示し、その達成にコミットメントする経営にしていくことが必要だと考えています。
後編(5月20日付掲載)では「HDD関連事業が成長をけん引!?」など主力事業の現状と今後を聞きます。
※5月13日に22年3月期決算と23年3月期の業績予想を発表、当期純利益予想は前年比65.8%増の15億円。配当については22年3月期実績の年間20円から、23年3月期予想を38円へと一気に引き上げている。