HDD関連事業が成長をけん引!?
自動車部品のEV化にも「対応済み」
凄腕投資家で“億り人”の井村俊哉氏が上場企業トップに斬り込む本企画。今回のお相手はサンコール(5985・東証プライム)の大谷忠雄代表取締役。意欲的な中期経営計画で注目される同社、配当性向の実現性を確かめた前編に続く後編では、主力事業の現状と今後を聞いた。(取材日2022年3月10日)
井村:HDD(ハードディスクドライブ)向けサスペンションがすごく伸びる計画になっていますが、そもそもHDDはSSDに切り替わっていくイメージしかありません。
大谷:HDDがSSDにとって代わられる、これは事実ですし、HDDの生産台数は確実に減っていきます。ただしこれはノートパソコンなど小型の電子機器のはなし。われわれが手掛けているのは100%データセンター向けです。皆さんがスマホで撮った写真などのデータはすべてどこかのクラウドに保管されていると思いますが、そのクラウドが要はデータセンター、そこには必ずHDDが置かれています。
井村:投資家はクラウドやSaaSなんかが大好きですけど、HDDが密かに支えていたという。サンコールさんがクラウド関連だなんて誰も知らない。
大谷:それはもう大きく関連しています。
井村:HDD自体の数ではなく、中のディスクの枚数を増やすことで記憶する容量を増やすことができる、そしてディスクを増やす際にはサンコールのばねの数も増える。
大谷:この領域は引き続き伸びる計画です。
井村:電力不足が懸念される中、消費量がものすごいデータセンターへの投資は鈍化するのではないかという見方もあります。
大谷:どこで電気を我慢するか、それをデータでというのは皆さん、もうできないのではないでしょうか。
井村:電気、水、ガス、データみたいなレベルですよね。
大谷:そうですね。データはもう生活の一部になっています。
井村:コア事業の自動車についてもお聞きしたいです。御社が取り扱っている自動車部品のうち電動化で無くなってしまうと思われている部品はどの程度ありますか?
大谷:100%電動化になった場合にはエンジンとミッション関連部品、当社の自動車部品ビジネスのおおよそ7割ぐらいがなくなります。
井村:けっこう大きいですね。2030年までになくなるとは思わないですが… 逆に3割が残る?
大谷:ブレーキ用の部品などは残りますし、あるいはシートベルトの巻き上げに使われるぜんまい、ここにもばねが使われています。こういった安全部品や電装部品など幅広く手掛けていますので。
井村:中期経営計画を見ると、これら既存領域は売上高を横ばいで計画していますから、EV(電気自動車)の完全到来は「2~3年はまだ」という見立てですよね。
大谷:その先のEV対応も準備しています。今回の中計ではまだそれほど寄与しないイメージですが、例えば「バスバー」と呼ばれる、銅とかアルミの板材を配線の代わりにしてバッテリーと電装化部品をつなぐものを量産していますし、新機種の立ち上げも順調に進んでいるところです。
井村:熱を持ち過ぎてしまうから特殊な配線部品を作られている、と?
大谷:10年くらい前からハイブリッドカー向けなどにバスバーを作り続けています。ただ今は単に電気を流すだけでなく間にシャント(抵抗器)やセンサーなどを入れて電気量を計りバッテリーをコントロールするなど性能も精度を上げて、まずは欧米のメーカーに使っていただき、その実績をもって日本のメーカーにも使っていただく、そんな戦略で進めていきます。