新大垣証券(岐阜県大垣市、石村憲威代表取締役社長)は7月5日に飛騨高山でIR(投資家向け広報)会社説明会&株式講演会を開催した。岐阜県内に5つの拠点を持つ同社は大垣本店、高山営業所の2拠点でそれぞれ1年に1度ずつ、個人投資家を集めて同様のセミナーを開催していたものの、コロナ禍で中段。約3年ぶりの開催となる今回は、あらた(2733・東証プライム)、霞ヶ関キャピタル(3498・東証グロース)の2社が自社の紹介を行った。
あらた 取締役副会長 鈴木 洋一氏
当社は日用品・雑貨・化粧品などを扱う商社。いわゆる卸売業者で北海道から沖縄までの小売業者さんに毎日商品をお届けしている。何かしらの震災が発生した場合には被災地に生活必需品をいち早くお届けする、つまり、当社は、社会になくてはならないインフラでもある。
「特化型」ゆえの信頼感
卸売業については「中抜き商売」「直接取引のほうが良いのでは?」などと言われたりするが、それは違う。例えばメーカー4社、小売業6社の取引だと4×6=24回トラックを動かさなければならないところ、当社が間に入ることで4+6=10回で済む。
メーカーが自前で対応するのは、不可能ではないが合理性に欠ける。さらに言うと販売側にとってはメリットが大きくない。コロナ禍の初期にマスクが不足したが、当社は「安ければ何でもいい」ではなく品質管理をしながら対応を続けた。メーカーとの直接取引だと自社製品しか販売業者は知ることができない。当社は1200社のメーカーと取引があり、取り扱いアイテムは10万、その販売先は3,500社・4万5,000店舗程度ある。
業績「過去最高」更新中
売上高は2015年3月期から7期連続、経常利益は直近3期連続で過去最高を達成している。業績は“気持ちいい”くらいの右肩上がりで推移している。――が、注目してほしいのは「伸び率」だ。直近10年で売上高が約1.4倍になったのに対し、経常利益は約3.5倍に成長している。
地道な努力があってこそ。当社は経費の約半分が物流費、運送時のガソリン代などで、トラックは自前では保有せずに外注しているものの、足元のコスト高の影響は避けては通れない。
そこで化粧品など単価が高くて小さいものを販売業者に提案、これを、できるだけ多くトラックに積み込むといった努力を続けている。その流れで昨今は、化粧品をしみ込ませたフェースパックを開発・販売するといったことにも取り組んでおり、ここに、先述したように約10万アイテムを扱う当社ならではのノウハウを注ぎ込むことで、ヒット商品が誕生している。
霞ヶ関キャピタル 代表取締役社長 河本 幸士郎氏
本日は3つのキーワードを使って当社を紹介したい。
キーワード1 社会課題解決企業
設立は2011年、東日本大震災でダメージを被ったショッピングセンターを取得して再生する、それが当社の祖業。食品購入など地域の方が日常的に使う場所、いわば「生活インフラ」を再生したことで、非常に喜んでいただけた。
そんな社会課題の解決を積み重ねて現在にいたるわけだが、具体的には次の5事業を展開している。
①物流施設の開発……20年6月から着手、既に資産規模1,200億~1,300億円と物流Jリート(不動産投信)の中堅クラスに並ぶまでに成長
②冷凍冷蔵物流施設開発……2030年までに全廃が求められている特定・代替フロンに代わる自然冷媒を使った倉庫を手掛ける
③アパートメントホテル開発……18物件を開発中、稼働率15%未満でも採算に乗るコロナ禍にも負けないモデルを実現
④ヘルスケア関連施設開発……ホスピス(終末期医療)施設を全国に展開予定、第一号が札幌で間もなく稼働
⑤再生可能エネルギー発電施設開発
キーワード2 不動産を保有しないデベロッパー
土地や建物を扱うデベロッパーは通常、自らの資産として対応するが、当社は「土地を買う」だけ。開発プランを練った後は運用するファンドに売却してしまう。理由は2つ。期間リスク排除と利益向上だ。
一般的なデベロッパーは住居だろうがオフィスだろうが開発期間は少なくとも3年、長いと5年、6年かかる。一方で当社が土地を保有するのは6カ月程度。かつて不動産業界が経験したリーマン・ショックのような売却額が想定を大きく下回るといったリスクを避けることができる。
間にファンドが入るので1案件当たりの利益は1から0.3あるいは0.4に減るものの、半年程度しか資産を投じない当社は「回数を増やす」、一般的なデベロッパーが1案件にかける3年の間に6回、7回と資産を回すことで、1の利益を2に増やすことを実現した。
キーワード3 5年で利益10倍を目指す
当期純利益は前21年8月期が8億円、今期予想は10億円で、これを、26年には10倍の100億円にする計画だ。昨年、1物件が生み出す利益総額の66%にまで当社の取り分が高まるしくみ「霞ヶ関キャピタル2.0」を実現。業績成長はここから加速する。
売上高についても20年8月期が80億円、前期は142億円、そして今期は225億円予想と順調に伸ばしているが、例えば、この裏付けでもある販売用資産を今年2月から5月までのわずか3カ月間で約100億円増やした。スピードもさることながら、先述した通り、当社は土地は半年しか保有しないので、これら資産については間もなく売却益が発生する上に、この先は各種フィーの発生も見込んでいる。