パチンコ事業をもっと面白く 震災乗り越え福島に恩返しも

――香港証券取引所への上場に至った経緯を聞きたい。
谷口 パチンコ産業は日本で育った遊戯文化で、現在でも2,000万人弱のファンが存在する。すべての業種を超え、社会貢献を含めて株式の上場は、イメージアップを図るための登竜門だと以前から考えていた。日本での証券市場の門戸が開かない中で、海外での上場を模索していた。中で香港マーケットはゲーミングを理解している関係者が多く、パチンコ業について先入観を持って見ないことから、上場を決意した。
日本企業は、少子高齢化で業態を変化させていく必要が今後あるだろう。そうした中、新しい日本のエンターテインメント、レジャー産業をつくる上で、上場は足掛かりになる。アジアを含めてエンターテインメント事業のノウハウを蓄積していく上でも香港を選んだ。また、従業員にとっても自分たちで会社をつくっていくという意識を持つためにも上場の意義は大きい。企業成長に社員が自信をもって取り組むためにも必要だと考えた。
――東日本大震災を乗り越えての上場ですね。
谷口 福島で60年間育った企業として、地元に恩返しができる大きな事業をしたい。企業がどんなに大きくなっても福島を離れることなく地域に密着していきたい。震災の当初は約半分の店舗が閉鎖に追い込まれて危機的な状況と感じた時期があった。しかし、取引先の銀行が金融面で全面的に支援すると表明してくれ、社員の雇用を守ることもできた。また、店舗の再開に対しても過度に急ぐことなく、店舗地域の住民の「衣食住」といった生活環境が整ってから営業を再開することを心掛けた。この姿勢が地域の方々に理解されて、今日があると感謝している。
――パチンコホール事業以外にレストランとビジネスホテル事業を持っている。
谷口 マスター・フランチャイズ契約を締結しているスペインのカジュアルレストラン「リザラン」日本第1号店を東京・赤坂見附にオープンさせている。「リザラン」は本国を中心に世界で300店舗超を多店舗展開するバースタイルのレストランだ。オペレーションにエンターテインメント性があり、実はパチンコ従業員をリザランに出向、交流させることでオペレーションの勉強になる。社員教育の一環として始めている。ただ、ビジネスでもあり、早いうちに20店舗程度に拡大させたい。
福島県郡山駅前にビジネスホテルを所有しているが、日本での拡大は考えていない。むしろ、ビジネスホテル運営ノウハウを活かし、タイやインドネシアのアジア企業と合弁での事業構想を持っている。ただし、現在はホールディングスを離れた別会社の形態をとっている。
――カジノビジネスに対する考えは。
谷口 ホールディングス会社自体では具体的な動きをしていないが、私の個人会社では米ラスベガスでカジノホテルを運営するプラザと人材交流を行い、米国でカジノのライセンスを取得する構想を持っている。カジノホテルの中に、ラーメン店や日本食料理店を誘致するなど、事業の交流も進めたい。
――パチンコ事業の特徴と株主還元の基本姿勢を聞きたい。
谷口 業界の中では比較的静かな営業姿勢で無理をせず、地域に溶け込むことを重視しているという特徴がある。現在は55店舗体制だが、今後3年間をかけて7店舗を新規に出店していきたい。また、株主還元については配当性向30%を中心に、成長原資となる内部留保の蓄積も並行して進めていきたい。
――最後に、投資家に向けて一言。
谷口 福島県に恩返しし、東北を中心にパチンコ事業をもっと面白くしていきたい。来年の早いうちまでに、東北で当社としては最大規模の店舗を出店する計画もある。福島県発、東北発のアジア企業として成長していきたい。
上場市場 | 香港証券取引所メインボード |
証券コード | 1245 |
売買単位 | 2,000株 |
公募価格 | 1.18香港ドル |
株式取扱証券 | 藍澤証券、リーディング証券 香港株取り扱う一部のネット証券 |
本社所在地 | 福島県郡山市方八町1-1-39 |
創業 | 1950年7月 (設立は1969年8月) |
売上高 | 2,353億8,776万円 |
経常利益 | 66億6,927万円 |
従業員数 | 1,356名(2014年3月期) |
※売上高と経常利益は2014年3月期、日本会計基準 |
[本紙4月8日付1面]