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特報2015年6月2日

☆特報 上場廃止の京王ズホールディングス 3回目の改善報告書も“NO”の判断

少数株主はどう動くか

5月28日、京王ズホールディングス(3731)が上場廃止になった。創業者で元社長の佐々木英輔氏への不正な資金流出や、販売奨励金による売上高の過大計上が発覚し、過去5年分の決算修正を発表したのが2011年の暮れ。これを受けて、12年1月、同社株式は特設市場注意銘柄に指定された。

特設市場注意銘柄に指定されると、1年後に改善報告書を出し、指定解除をしてもらえるかどうか取引所の審判を仰ぐ。ダメならまた1年後に挑戦となるが、それも許されるのは3回まで。3回目でダメなら上場廃止になる。京王ズの場合、この3回目の改善報告書を今年1月に提出しているのだが、その結果、やはり内部管理体制は改善されていないとして、4月28日付で東証が上場廃止を決めた。

決定的だったのは今年1月に行った2度目の決算修正だ。佐々木氏は前回の決算修正の責任をとって経営から退いたが、依然として3割弱の株式を保有する筆頭株主であり続けた。13年暮れまで出社を続け、14年夏まで会社から多額の報酬を受け取り続けている。その手引きをしたのが、佐々木氏のかつての部下たちと佐々木氏の後任社長。 

それが昨年暮れに、外部機関の指摘で発覚したというもので、そのあきれるばかりの巧妙な手口は、今年1月13日開示の社内調査委員会の調査報告書に詳しく記載されている。同社のHPに掲載されているので、関心のある方は是非読んでみていただきたい。

佐々木氏への不正流出分の修正処理で2度目の決算修正となっただけでなく、京王ズの親会社になるべくTOBを実施した光通信が、佐々木氏にTOBへ応募させる見返りとして、佐々木氏の責任を追及しないという密約を結んでいたことも明らかになってしまった。

この状態で特設市場銘柄の指定解除など土台無理な話だったとしか言いようがないのだが、上場廃止決定が出る1週間前に、またもや第三者調査委員会の報告書を提出、この中でテレマーケティング事業を手掛ける子会社間の会計処理で、不正があったことも明らかになった。

実際のところは、子会社同士の売上高や経費の付け替えなので、連結決算への影響はあまり多くはない。不正な会計処理があった子会社は京王ズの100%子会社ではなく、これまた光通信の子会社ニュートンフィナンシャルと京王ズが合弁で設立したノーブルコミュニケーション(京王ズ6割、ニュートン4割)。京王ズの連結概念からすると、この会社にはニュートン(実質的には光通信)という少数株主がいるので、少数株主損益に影響が出た。

少数株主損益は、黒字なら当期純利益の減額要因に、逆に赤字なら当期純利益の増額要因になる。結論としては過去5年分で1億1,400万円、少数株主損益の計上が過少だったということになり、その分がそのまま連結純益の過大計上分だったというわけだ(下の業績表は当該修正前の状態で作成)。

この子会社間の会計処理については、全く悪意はなかったというのが第三者委の結論で、実際、この処理は監査法人に堂々と相談して決めていたらしい。それではその監査法人は一体どこだったのかというと、時期からすると清和、ハイビスカス、アリアの3つの監査法人だ。

京王ズの監査法人は04年の上場から06年10月期までがあずさ、その次がみすず(旧中央青山)だが、みすずはカネボウの粉飾事件の影響で07年7月に解散。その後任が清和だったが、11年の1回目の不正発覚の際、ハイビスカスに交替。そのハイビスカスは13年6月に金融庁から行政処分を受けて監査業務が出来なくなり、その後任に就いたのが現在のアリア。

子会社間の不正処理は09年から昨年に至るまで、全く悪気無く長期間行われていたので、相談を受けて問題なしとしていたのは、あずさ、みすず以外の3つの監査法人ということになる。

さてその京王ズ、上場廃止を約10日後に控えた5月19日、上場会社としては最後の決算発表を行っている。親会社になった光通信と決算期をそろえるため、今回の決算対象期間は13年11月から15年3月までの17カ月間。

売上高、営業利益、経常利益までは修正計画を上回ったが、最終赤字は10億円近く膨らんで12億2,400万円。主な原因は、ソフトバンクの携帯販売代理店業務を手掛ける京王ズコミュニケーションののれん減損である。赤字幅が拡大したので、5円予想だった配当は結局無配に。

昨年5月に光通信が子会社化し、78%の保有になっているが、現在の株主総数は有価証券報告書が出てみないとわからない。証券代行から株主名簿をもらうのは半期に一度。株主の属性開示(個人何%、外国人何%など)は有価証券報告書での開示事項だからだ。

現段階で判明している最新の株主数は、15年3月期の中間期にあたる14年4月末時点の6,571人。この1カ月後に光通信が子会社化しているので、人数はかなり減っているはずだ。

最終売買日の終値は296円。倒産して上場廃止になるわけではないし、スクイーズアウトではないので少数株主がこれから全員追い出されるわけでもない。かつて西武が上場廃止になった時と同様に、株主は上場廃止後も株主で居続けることができる。

佐々木氏への責任追及も、光通信がしないと約束しただけで、他の株主がやるのは自由だ。上場廃止後に何らかのアクションを起こす株主が出てきてもおかしくない。

京王ズの業績推移
決算期売上高営業
利益
経常
利益
当期
純利益
総資産純資産自己資本
比率
配当期末
株価
PERPBR配当
性向
03/104,733177177833,6472,77176.0%5,000---16.73%
04/105,002-160-190-2074,2142,79966.4%2,00093,100-0.56-
05/106,408-684281405,4373,07656.6%1,000229,00029.671.4012.96%
06/105,315-790-988-2,3454,33491121.0%-87,100-2.16-
07/1015,525-69-191-1,0976,0144687.7%-46,150-2.99-
08/1012,704250-20115,58982414.1%-10,10033.880.54-
09/1011,9083953755775,2881,45127.3%-33,4002.761.24-
10/1011,5174333154165,6851,92833.9%50026,8003.520.776.58%
11/1013,7744612732136,2842,11333.6%50020,3005.220.5312.85%
12/1013,9504583871995,7482,28439.7%500287007.910.6913.78%
13/1015,112374348425,0412,30945.8%534244.650.8165.27%
15/3期初予16,000350300200---5---13.74%
修正予19,000240230-285---5----
着地20,656266253-1,2243,6651,04125.5%0475-2.79-
※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは実績ベース

[本紙6月3日付12面]

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