大化け期待30銘柄に厳選投資
会社を知るため四季報熟読
著名投資家の井村俊哉氏が、日本株の凄腕ファンドマネージャーにα(アルファ、市場平均を上回る利益)発掘の秘訣を聞くシリーズ。ファンドの組み入れ銘柄数わずか30あまりながら、井村氏に「アルファさえ取れれば何でもアリの気概を感じる」と言わしめるSBI岡三アセットマネジメント「中小型成長株オープン 愛称 スモール・モンスターズ・ジャパン(以下、スモモン)」を運用する高梨裕ポートフォリオマネージャーと語っていただいた。
――きょう初対面の高梨さんは誠実そうな印象だが、アグレッシブな運用をしている「スモモン」のイメージとは全然違った。月報を見ると銘柄の入れ替えも頻繁に行っているようだが、まずはどのようなファンドかお話いただきたい。
スモモンは中小型成長株に特化したファンドで、単純な成長ではなく飛躍的な成長が期待できる会社に投資するスタンス。株価が3年で2倍以上というのが理想で、長くても5年というタームでみており、ファンド名のモンスターズには“化ける”というメッセージを込めている。この方針に当てはまるならグロースでもバリューでも、直近IPO(新規上場)銘柄でも積極的に組み入れてリターンを取るやり方だ。
――公募投信の中でも組入銘柄数をギュッと絞り込んでいる。
基本的には30銘柄に厳選投資をして、個別銘柄からのリターンを享受しながら分散効果も効かせている。分散効果については、ひとつの業種に極端に偏らせないように注意している。また、銘柄選別については、企業の四半期決算から読み取れる会社の変化に着目しており、幅広い業種から投資対象銘柄をピックアップすることで、結果として銘柄と業種が分散されたポートフォリオを構築するように意識している。
――グロース、バリューなど混在しているがバリュエーションはどうしているか?
いろいろな指標の中で最も見ているのはPERだ。グロース株だとPERが割高に見えてしまうけれど、私は利益成長率の高い企業を選別する上で、PEGレシオ(PER÷利益成長率)を使っている。PEGの目安としては1倍台といったところで、2倍以上だと割高感があるなといった判断だ。
――PEGの場合だと最終利益でぶれることもあるが。
成長率の判断では営業利益を重視している。一過性の材料は個々の企業によって判断していく必要があるという考え。本当にノーマライズな営業利益の成長率を見ないといけないと思っているため、漠然とPERとかPEGレシオで見てしまうとここを見誤ってしまうので、そこはしっかり企業に取材をして、営業利益がノーマライズなのか一過性なのかというところを判断している。
――組み入れ上位銘柄の入れ替えが激しい。平均の保有期間は6カ月程度と短いのでは?
「平均だともう少し長くなる。ファンドで2、3年保有している銘柄もあり、組み入れトップ10に出ているところだとタムロン。新たに買いたい銘柄を発掘する時には、企業のマネジメントの方への取材を通じて、今後3年間の利益成長率をイメージする。この会社に投資したいとなったら、保有している銘柄との比較感でどちらのアップサイドが大きいかといったところを判断する。
――運用者として腕を磨くためのルーティンがあれば教えてほしい。
ファンドマネージャーは企業に投資をするということなので、1社でも多く企業のことを知らないといけないなと。1日に何件もの企業に取材をしたり、あとは工場見学会に行ったり。可能な限り昨日よりよく企業を知る状況でいるためいろいろ調査をしている。
――運用のために土日も使うことはあるか?
四季報発売後の土曜、日曜の2日間に、十数時間かけて一通り読んでいる。以前に保有していた銘柄で株価が結構上がっているなとか、逆もしかりですけど。そういったところで立ち止まりながら、コメント欄で何か変わっているところがないか確認している。
7月28日付の後編では、保有銘柄についてさらに鋭く深堀りしていきます。