MIC(300A)が12月25日、東証スタンダードに新規上場した。マーケティングに関するあらゆる業務を自社一貫体制で提供する「360°フルサービス」事業を展開。主にリテール企業やメーカー企業が行う販促活動の全体最適化や業務改善を行う。初値は公開価格と同値の960円だった。上場当日の記者会見で河合克也代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
ベンチャー気質の老舗企業……社名のMICは、“未来イノベーションCOMPANY”から取った。デジタル×フィジカルの力で未来にイノベーションを起こしていきたいという思いがある。主にリテール販促支援ということで、小売業など店舗を持っている業態に対し、上流のコンサルティングやシステム開発、アウトソーシング、クリエイティブ、製造、フルフィルメント、フィールドサポートと一貫してお手伝いしている。祖業は商業印刷。印刷業は装置産業に近いところがあるが、現会長(水上光啓氏)がずっと人に投資してきたことから社員の平均年齢は32.3歳と非常に若く、社歴70年を超える会社にもかかわらずベンチャーに近い人員構成となっている。
分散・分断する販促業務を集約……リアル店舗における販促やマーケティング活動の周りにおける課題として、消費者側はデジタルの活用によって非常に便利になったが、一方でそれを供給する企業やオペレーションを担う人はデジタルとフィジカル両方やらなければならず、業務そのものが複雑になって負荷も増えてきた。多い会社では販促・マーケティング絡みで30~50社の関係先があり、それだけ多くの会社を広く進行管理するというのはものすごく大変なこと。これらをわれわれMICが360°全てお引き受けして、その業務改善から最後の物流設置まで全て行うことでお客さまのコスト削減と業務負荷の削減に貢献している。
ドラッグストアに“ムダ”を発見……特に大きな成長の可能性を秘めているものの一つがドラッグストアだ。1チェーンにつき化粧品、日用品、薬品、最近では飲料や食料など300~500社の商品メーカーがぶら下がっており、それぞれが自分たちの商品を売ってほしいので(語弊があるかもしれないが)プロモーションツールを半ば押し付け的に送ってくる。しかし実際はあまり使われていないので、バックヤードに大量に積み上げられている。さらに、各社がバラバラに送ってくるので空気を運んでいるような状況になっている。われわれの調査結果では梱包容積率40%、つまり6割が空気を運んでいる。また、販促物の使用率は3、4割程度で残りは捨てられている。それが1カ月に1店舗当たりで100~130箱も届く。
必要なものを必要なだけ……その課題を解決すべく、従来メーカーが直送していたものを一度全て私たちのセンターに送っていただき、そこで必要なものを必要なだけ各店舗に合わせてアソートメント、各社のものを1つの箱に詰めて共同配送することで空気のムダを無くした。1つの箱をシェアしてその店舗で使う分だけが届けられる。メーカーにとってもコストシェアをするので3~4割ぐらい物流費が削減できる。これはあくまで商品ではなく、われわれの得意としている販促物・プロモーションツールに関しての共同配送のスキームであり、ビジネスの特許も取得した。これがユニークなのは、例えば店舗の窓の数が分かれば本来必要なポスターの数が分かる。棚の数が把握できていれば、扱っている商品が理解できていれば、地域性など、こうした店舗プロファイルに基づいて必要なものを必要なだけお届けすることができる。この仕組みでマツキヨなど20チェーン・1万572店舗の主要ドラッグストア、シェアにして54%をカバーしており、302社のメーカーがこの共同配送を利用いただいている。
次の成長に向けて……まさにこの302社がわれわれの目の前にいる中で、新しいお客さまとどうやって太い強い関係性をつくっていくか。360°フルサービスは主要なお客さまで年間12億円の取引額がある。なので仮に12億円×300社だと3600億円。わたしたちとしては大きな可能性を感じている。ドラッグストア、コンビニ、外食チェーン、通信(携帯キャリア)については既に取引があるが、さらにその外側にはホームセンターやGMS・スーパーなど多店舗展開している業態、病院や塾・教育サービス、アパレル、美容室などが広がっており可能性は広大。360°フルサービスによる平均年間売上高の最大化と、業界横展開による共同配送サービスにおける新規アクティブアカウント数の最大化で成長を図っていく。(SS)