くすりの窓口(5592・G)が10月4日、東証グロースに新規上場した。処方箋予約サービスを中心に、近年は医療機関や介護施設向けのシステム・サービスも展開している。初値は公開価格を7%下回る1,580円だった。上場当日の記者会見で堤幸治代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

ストックの積み上げで安定成長……メディア事業では「EPARKくすりの窓口」、「EPARKお薬手帳」を展開。ストック売上の9割はこの2サービスからの処方箋ネット予約に係る手数料が入ってくる。もっとリピートを増やしたい場合にはファーマシーサポート、新規の患者さんにアピールしたいということであればリッチプランを契約いただき、その際の初期費用をショット売り上げに計上している。全国の処方箋枚数は8億枚あり、その中で当社が取り扱う処方箋枚数は年間約400万枚、シェアでいうと相当低い。全国には約6万の調剤薬局があり、当社の加盟店は現在2万店舗。処方箋の予約を増やしていくため、ここから5年ぐらいで3万店舗を突破したい。

4つの施策……契約店舗でくすりの窓口を通したインターネット予約率は1店舗当たりで平均1.9%。予約率が高い店舗では20%以上を超えることもある。予約数を増やすための施策は4つ。1つ目は我々の株主であるEPARK、こちらは会員が5,000万近くおり、そこに対してお薬手帳のプロモーションを行っている。2つ目は店舗に来られた患者さんに薬局からチラシを出してもらう。3つ目は、例えば「風邪薬 オススメ」で検索すると当社のコラムが出てくるのだが、そこで飲み合わせチェックができるといった仕組みを提供している。あとは通常のリスティング。

高齢者の拡大余地……スマートフォンの普及によって年々ネットが使える高齢者の方が増えているので、今後そういった方たちにも簡単に使えるような施策をやりながら予約数を増やしていきたい。取り組みの一例として、病院にわれわれのiPadを置き、そこから簡単に処方箋が送れるという仕組みを約100病院に無料で提供している。

医薬品売買のマッチング……国内で年間廃棄されている医療用医薬品は280億円にのぼり、多くが使用期限切れによって捨てられている。この問題を解決するため、「みんなのお薬箱サービス」では余った薬を持っている薬局と安く買いたい薬局をネット上でマッチングさせて売買を仲介している。顧客数は全体で1万2,330施設・医薬品の出品数は約5万品目と非常に多いが、これはお薬手帳でレセプトコンピューターの情報をクラウドに持ってきているので、どの薬局でどの薬がどのぐらい出たかがリアルタイムで分かる仕組みを持っているため。

共同仕入れサービス……ここでは合弁会社(グローバル・エイチ)が各卸と価格交渉をし、新品の薬を安く買える。卸側は1店舗ごと交渉する手間を省けるほか、加盟薬局にはわれわれのeオーダーシステム(AIを活用した在庫管理システム)を必須で入れてもらっているので、きちんと在庫管理ができることによって無駄な配送や返品がなくなり、流通の改善に役立っている。また、われわれの仕組みは患者ごとの来局予測を立て、それに基づいて自動発注ができるようにしているため、薬局側も必要最小限の在庫で回転できる。通常1～1.5カ月分の在庫を保有するところ、われわれの仕組みなら0.5～0.7カ月分で回せるのでキャッシュフローの改善になり、発注の手間も省ける。

基幹システム事業……調剤薬局向けのレセプトコンピューターは、お薬手帳と在庫管理システムの連携ができる点が強み。利便性が評価され、アップセルとして導入が進んでいる。介護向けの電子記録はグループホームへの導入が増えている。グループホームは認知症の方の入居が多いが、こちらも連携機能によりiPad1台で薬の管理がスムーズにできる。また、病院向け、診療所向けのカルテについては、PHRデータとの連携を強化し始めている。同事業の対象施設は約25万施設あり、当社シェアはまだ1.8%程度。様々なアイデアを形にして広げていくことで加盟店舗数を増やしていきたい。

中長期戦略……どの事業もまだスタートラインに立ったぐらいのシェアであり、1つ1つを伸ばしていく。われわれの強みが生かせる分野があれば、新規事業も積極的に立ち上げてトップラインを伸ばしていきたい。また、足元では調剤薬局向けの比率が高いが、今後、介護施設、医療施設も広げていきながら10万施設を目指していきたい。なお、メディア事業はストック粗利の赤字がずっと続いていたが、前期にやっと黒字化できた。ストック粗利率はこれからどんどん改善していく。(SS)