アイズ(5242)が2022年12月21日、グロースに新規上場した。広告業界に特化したWEBサイトを通じて広告の売り手と買い手を直接つなぐBtoBのマッチングプラットフォーム「メディアレーダー」と、消費者によるクチコミマーケティングのプラットフォーム「トラミー」を手掛ける。初値は公開価格の2.3倍となる5,160円。上場当日の記者会見で福島範幸代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
売り手、買い手が効率よく……当社の売上高は22年12月期の予想でメディアレーダーが49%、トラミーが45%と、ほぼ半々ずつを占める。メディアレーダーは、広告を買いたい人と売りたい人をマッチングするサービス。営業のために見込み客(リード)を獲得したい売り手の掲載社が資料や動画、セミナー情報などをサイトに公開し、広告を出す先を探すために資料やセミナーで情報収集したい買い手(会員)の広告主や広告代理店と直接つなぐ。サイトには広告・マーケティングに関する情報のみを集約しており、広告代理店などが情報を探しやすく利便性の高いサービスになっている。
売上総利益率は100%……メディアレーダーで見つけた資料をダウンロードすると、掲載社に「誰々さんがダウンロードしましたよ」というリード情報(会員情報)が届き、掲載社はそれをもとに営業をかけられる仕組みになっている。当社の主な収益構造は「課金ダウンロード数」と「リード単価」の掛け算で、売上原価が発生しない売上総利益率100%のビジネスモデルになっている。広告業界では二次代理店が間に入る中抜き構造がよくあるが、私たちは売り手と買い手を直接マッチングするのが特長で、これまでこういうサービスはなかった。
大手広告代理店の営業マンも活用……当社のメディアレーダーは大手広告代理店も、われわれの競合相手というより、むしろ喜んで使ってくれている。具体的な数字は言えないが、電通だけでも相当な人数が会員登録しており、博報堂やサイバーエージェントも多くの社員が登録している。例えば広告主から広告代理店に「明日までに、今までにない新しい提案をしてほしい」などと難しい要望をされることはよくあることだが、代理店は頑張っても新しい情報をすぐに探し出す方法はなかった。それがメディアレーダーを使えば顧客に合ったものを検索して資料をダウンロードし、その資料をもとに翌日に提案することができるので、代理店側からしても便利に使ってもらっている。広告主にとっても、代理店任せだったのが自分たちで探せるようになったという利点がある。
クチコミマーケティングのトラミー……トラミーは広告主の商品やサービスのクチコミを各種SNS(交流サイト)に投稿してもらうプラットフォーム。20歳代から40歳代にかけての女性を中心に約12万人の会員がいて、クライアントの商品やサービスを体験し、その評価や感想を自身が利用しているSNSに投稿してもらっている。スキンケアや健康食品、食品、日用品など女性向けの商材が多い。
ステマ防止に出典元を明記……トラミーの会員への謝礼は商品や特典ポイント。会員は一般の人たちなので、自分が思ったことを書いてもらっている。「良いと書いてください」というようなことは一切言っていない。SNSには「ここは悪いけれど、ここは良い」といった内容をいろいろ書いてもらう。投稿したものはクライアントのホームページや広告に二次利用でき、当社はこれらを対価としている。投稿は弁護士監修のもとチェックをかけ、安全なプロモーションを行い、ステルスマーケティングを防止するために広告物には出典元を明記している。特定のインフルエンサーに依存するのではなく、一般の情報発信者が中心であるため、広告主が安価に大量にクチコミを依頼でき、自社のサイトやパンフレットで二次利用できるという強みがある。
直近3年は30%増収で推移……当社の売上高は19年12月期が3億6,000万円、20年12月期が4億5,500万円、21年12月期は6億500万円、22年12月期は7億9,600万円の計画と、ここ3年は年間平均30%くらい成長している。22年12月期の経常利益は過去最高益の予定で、今後も伸ばしていきたい。
ベンチャーキャピタルは出資せず……株主にベンチャーキャピタルはいない。話はかなり寄せられたが全て断った。ベンチャーキャピタルだと投資期間も限られるだろう。われわれとしては自社のサービスを作り込んでいきたかったので、いったん内部だけでやっていく判断をした。いろいろとチャレンジして、失敗して、というのを繰り返しながら、サービスを作り込んでいく時間をかけた。当社は16期目となり、スタートアップという感じではなくなってしまっているが、これによって今までなかった市場をしっかり作ってこられたのだと思う。
まずは業績のトップラインを……もちろん、上場したからには株主にも評価してもらえる会社になっていきたい。まずは業績のトップラインをしっかり伸ばすことによって株主の期待に応え、将来はしっかり配当も出していきたい。(YY)